#19-12 異物排除
「このっ、異物がぁあぁぁああああ!!」
殴って蹴って切り付けて。廊下はさらにボロボロになっていく。割れた壁の隙間、崩壊する天井から俺をとらえようと薔薇が生えるが、痛みに悶えているのか動きはさっきよりも緩慢だ。簡単に避けられる!
「このっ、このっ!!出ていけ!」
「ははっ、さっきは閉じ込めようとしてたのに、今度は出ていけ?忙しないババァだなぁおい!」
「うるさいうるさいうるさい!!」
「そんな短気で計画性もないような奴が孤虎教授よりも格上?よく言えたもんだなぁ!」
「うるさいっ!!」
「っ!」
壁一面から棘が飛び出してくる、これは流石にまずい。
Blow away the mutation!
背中をぶち破って広げた翼で、窓から飛び出し空を飛ぶ。地上では西側で火事が起きていた。フレイムだな。研究所に接続する遺伝子プールでは窓からまばゆい光が漏れ出ている。二人とも元気に自分の役割果たしてるな!
そうだ、邪魔されて忘れかけてた、俺の任務。
周囲の空気肺いっぱいに吸い込む。目標はザセルでも研究所でもない。
「何をするつもりだ嵐巻龍斗ォォオオオオオ!」
「何って、自分のやることしっかりやるんだよ!」
持ってきた残りの爆弾を、大樹を周回するように空を舞いながらばらまいていく。
狙うは、この巨木だ!
「────ファイナルドラゴンブレス!!」
蓄えた空気を思いっきり咆哮する。中には風の刃を混ぜて、爆弾の起爆装置がピーと音を鳴らした瞬間、連続したドォォオオオオオオオオオオオオオンッと低い爆発音があたりに響き渡った。
目下に移るのは火の海だ。ごうごうと音を立てて巨木が燃えていく。葉っぱの一枚一枚が燃えて塵になっていく。
ふぅふぅ、と息が荒れた。やっぱアラサーにはしんどいって、この技。でも研究部お手製の爆弾込みのブレスだ。再生能力があるとはいえ結構ダメージ入っただろう。さっきからザセルの声も聞こえてこないし。
これで後が楽になれ────
ジャキンッ!!
「────っ!!」
「やってくれましたねぇ。よくも計画のシンボルを」
「あ゛……っ!!」
背中が熱い。激痛が背中に根を張ったように広がっていく。
衝撃に耐えようと翼を動かす。けれど片方しか空気の抵抗が感じられない
あれ、片翼が、ない?
「本当に本当にうざったい化け物が。お前のせいで体を移し替える羽目になった」
「ぅ、あ、」
「あぁ、せっかくだから一緒に地獄へ落ちていくといいさ。お前のだーーいすきな婚約者とな」
声の方向に視線だけ動かす。あれは、あの姿は光莉じゃない。葛花とかいう女の姿だろうか。
空に飛んでいられなくなり、片翼を揺らして少しずつ下降する。
その体の上に何かが落ちた衝撃でガクンと視界が一気に下がった。
背中の上に落ちてきたそれは、当然バランスを保っていられず背からずり落ちる。それはぼやけた目でも、はっきりとわかった。
長く艶のある黒髪。
大きな瞳は閉じられている。
四肢を宙に放りだし、力なく落ちていくその姿は。
「光莉」
「その体はもういらない。シンボルとは私が繋がりましたから。用済みです」
「光莉っ……!!」
「長い間お世話になりました。橘光莉さん」
「……りゅ、うと」




