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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#19 彼岸の未来
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321/342

#19-11 認めて認めて認めて認めて!!

 

「えぇ。『人類緑化計画』を実行すれば、誰しもが私を認めてくれる。偉大なる研究者だと!」



 は?



 何を言っているんだ、こいつ。

 誰しもが私を認めてくれる?偉大な研究者だと?


 呆然とする俺の前で、ネピアは早口になってまくしたてた。


「だってそうでしょう!?地球全土を救う素晴らしい計画です。それこそ、初めは悪とされてしまうでしょうが、それもいずれは神話となる。葛花輪禍くずはな りんかという研究者が地球を救うための計画を実行し、やがて地球に平和が訪れた、と!」


「お前」


「私は地球を救う偉大なる人間だと誰もが認める!そしてそれは誰にも覆すことはできない!最後の英雄となるのです!」


「まさか、それだけのために」


「それだけ?私という人間が正当に評価されない世界を直してやるというのに。あぁ孤虎利人とかいう不出来で不完全な人間の方が評価されるなんておかしいでしょう!!」


「お前は自分が認められたいがために、この事件を起こしたって言うのか」


「私が認められたい?違う違う違う!世界が私を認めるべきなのです!世界が私を称賛して称えて崇めて信仰するべきなのです!孤虎利人じゃないっっ!!私が!!私こそが評価されるべきなんだあああああああああああああ!!」


 廊下中に響く怒号で何かが頭の中で切れる。

 こいつはそんなことのために、たくさんの人の人生を踏みにじったっていうのか。 


 俺から光莉を奪って、優也から父親を奪って、海美ちゃんから姉を奪って。


 それどころかくだらない妬みで、ごちゃごちゃと細工を施して教授に濡れ衣まで着せて。


 溢れんばかりの怒りが腹の底から湧いてきた。だけど頭は冷静で、次に何をすべきか分かった。

 もういいだろう。真犯人の自白も犯行方法も動機も全部吐かせた。お粗末なミステリ小説なら充分だ。

 ここからはもうミステリじゃない。ただの殴り合いだ。



 Storm!Ready for injection!



「あはははははは!!すごいでしょう!?私が緻密に練った事件によってあの孤虎利人は人間としても研究者としても死んだ!そして私は神話となる!あはははははは!」


「もういい」


「まだまだこだわったところはたくさんありますよ!?答え合わせは────」



「change my feature」



 宣言すればあたりに風が吹き荒む。風の向こうには興奮した様子のザセルが目をかっぴらいて俺を見つめ、口からだらしなくよだれを垂らしながらあははと笑った。


「むーだ!龍斗、むだだよ」


「SCR、戦闘を開始します」


「きゃーーーーーっっこわいこわい!でもこの顔殴れるのかなぁ?」


 こいつに構っている暇はない。俺は俺のやることをやるだけだ。


 腕に風を絡めて突風を起こす。笑ったまま女は吹き飛ばれた。 


 その最中、風の中で狂いを身をひるがえし、周囲の壁から支えるように枝や茎、植物の蔦が伸びてザセルの体に絡まって、パチンとフィンガースナップが鳴り響く。



「変身」



 花びらが風に舞う。紫、赤、緑。毒々しいそれは廊下いっぱいに広がり、その隙間から女王の姿が現れる。植物を模した緑のミニドレスに、目元を覆い隠す紫の花。


「お痛は困りますねぇ。ここは私の体内だと言ったはず」


「っ!」


「あまり抵抗するならもっと深く刺してしまいますよ?」


 足に薔薇の茎が巻き付き幾本もの棘が足を貫通する。研究所の中じゃ部が悪すぎる。外に出ないと!


 足に絡みつく薔薇を引きちぎり、窓へ体当たりをするように飛び出した。けれど逃がさないといわんカリにさらに多くの薔薇が俺を追い、しつこく足に絡みついてくる。また引きちぎってやろうとしても数が多くて無理だ!


 建物の中に引きもどす力と重力によって、9階よりも下の階の廊下へと投げ込まれる。窓を勢いよく貫通し、そのまま偶然開いていた扉にも突っ込んで、部屋の中に転がり込んだ。


 寒い。ここは、


 バタンっ!!

「!」


「うふふふふ。貴方、確か蛇と鳥のキメラでしたねぇ」


「うっ、げほげほっ!これは……!」


「爬虫類は寒さに極端に弱いと聞いたことがあります。変温動物ですから、低体温は時に命をゆっくりと奪うと」


「フリーザー室か……!!」


 俺が部屋の中に転がりこんだ途端、部屋の扉は閉じ、同時に電気がついてフリーザーの冷却装置が動き始める音がした。途端、視界がぐらぐらと揺れ始める。


 おかしい。こんなこと今までなかったはずなのに。


 その場にしゃがんでも眩暈はやまない。いや、これは眩暈じゃない。眠気だ。急速に重くなった瞼が視界を黒にフェードアウトさせようとしている。やられた。この体はここまで温度変化に弱いのか!


 急いで部屋の扉を蹴り飛ばす。しかしろくに力が入らないせいか、あるいはザセルが仕組んでいるのか、扉は固く閉じたままだ。


「や……べ、」


『ストーム、急激に体温が落ちています。すぐに脱出を!』


「う……」


『冷所における行動不能か……なるほど、お前の代償がなかなか見つからないわけだ。ストーム!目をつむるな起きろ!!』


「は……い、はい、きこ、えて……」


 やばいやばい。こんなところで寝るな!寝たくない、起きたいのに、体が全然いう事聞いてくれねぇんだけど!?


 頭の中ばかりが騒がしくなって、体は徐々に動かなくなっていく。近くの壁にもたれかかり、ずるずると床に座り込んだ。自分の息が白くない。体温、そんなに下がっているのか。あぁこんな時にフレイムがいれば。


『どうする……ってっちょっと貴方!?』



『龍斗さん!!聞こえますか!!』



「んぇ……らい、ち……?」


『研究部の煌湊来知です!!龍斗さん、爆弾持ってますよね!?』


『ちょ、何勝手に僕のマイクで』


『狛坂構うな好きにさせろ!』


『爆弾!!遠隔でも起爆できるように改造したんです!だから扉の近くに爆弾おいて離れて!』


 ふっ、と笑いがこぼれた。来知がまたやってるよ。あぁ、乗ってやるよ!!


 今すぐにでも落ちそうな意識を何とかつなぎとめて、持ってきた爆弾を適当に扉近くにばらまく。これでいいんだな!?


 数歩後ろによろけたところで、インカムから来知の怒鳴り声が耳をつんざいた


『ザセルに邪魔される前に起爆します!3, 2, 1!』


「まっ!?はやっ!?」


『龍斗さんよけて!』


 来知の声に眠気が一瞬吹き飛んだ。え、もう爆破!?ちょ、ちょちょちょっと待てっての!


 扉から反対方向に向けて全速力で走る。足に力が入りにくいせいで泥の中を走っているような感覚だ。それでも一歩でも、1ミリでも離れて、



『爆破ぁ!!』



「うぉぉぉあああああああああっ!?」


 背中に感じる熱と轟音。同時にガラガラと天井が崩壊する音が聞こえてくる。


「ぎゃああああぁぁああああっ!?」


「!」


 これは……ザセルの声か?なんで苦しんでいる。扉の向こうで爆弾にやられたのか?……いや、違う。そうか!


 崩壊した天井の隙間から上の階に出る。過去に見慣れた物置。あぁそうか。ここに出るんだな!

 そのまま扉を蹴破り廊下へ出て、長い廊下を駆け抜けながら特殊な牙の生えた腕を振るう。その瞬間、見えない刃が研究所のいたるところを傷つけた。


「ぐぅうぁあっ、ぎゃあ!?」


「この建物はお前の体内つったよなぁ!?じゃあ好きにめちゃくちゃやらせてもらうぜ!!」



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