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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#19 彼岸の未来
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319/342

#19-9 例外の敵意

 

 10年ぶりの景色。歳をとると懐かしいものが増えるけど、こればっかりは懐かしいなんて思えないな。



 同日同時刻──── 特殊遺伝子細胞総合研究所にて



 研究所の屋上。空を見上げれば巨木が視界の邪魔をする。コの字型のこの研究所の中心に太い根っこを張り巡らせて聳え立つのはこの巨大な木。太い右から左右上下に大きく枝葉を伸ばしており、時折風に乗って落ちる葉っぱで地面は見えにくくなっていた。


 地面といえば、地上には夥しい量のオルガーたちがゾンビのようにふらふらと歩いている。地上の扉から突入する2人がバレませんように。


『ストーム、準備は』


「ばっちしだよ」


『フレイムとスパークが突入した。爆破の準備にかかれ』


「了解」


 肩にかけた鞄の中を開く。中には色とりどりのコードやよくわからない赤いランプが点滅している小型の爆弾があった。 すぐにこんな大量のC4爆弾を用意できるなんて、流石は都市伝説組織。……いや軍事組織なら当然か。


 ジップを閉じて再度空を見上げる。よっしゃ、行きますか。



 シュルルルッ!


「!」


 背後から蔦の伸びる音。鞄を守りながら体を少し捻って避ける。

 ……やっぱそう簡単にはさせてもらえないよなぁ。特にこんな屋外じゃ、バレバレだ。


 振り向けば、黒のレースがあしらわれた清楚なトップスに緑のロングスカートの女性。長く艶のある美しい黒髪を風に柔く靡かせ、足元にはうねうねと気味の悪い植物を引き連れている。


「こんなところで、何をしているのですか?」


「あー……そうだな。観光?」


「あぁ、そうでしたか。ではお客様は丁重に扱わねば」


「そうそう。ていちょ~にね」


「では、次は丁寧に一瞬でその舐めた口を閉じさせてやりましょう」


「おーこわこわ。はは、光莉とは大違いだな。軽口に本気で返すなんて」


「……」


「アンタ、研究所にいた誰かだろ。誰だ?」


 ずっと気になってた。コイツの言動が。


 初めて違和感を感じたのは、優也が初めてMortal evolutionを使った時の話。優也が自分の力の意味をわかっておらず、それにザセルが苛立っていた時。


 あの時、研究者が研究対象に心酔しているような様子が見られた。的戸と少し似た、あの狂気。


 続けて鮫島家のいざこざの時。サメジマクルーズで対峙した時に感じた厄介なプライド。そう、立場の低い者から正しい指摘を受けて激昂するようならもはや意地と呼んだ方がいいそれを持っている。


 要は、コイツも元人間であって、あの研究所の研究者だった可能性があるってわけだ。

 事件から10年かけて研究者になった可能性も捨てきれないけど、妙な確信がある。


 ザセルは目を細め、呆れた様子で俺を見た。


「私が誰か……?今更なんの話ですか」


「とぼけんなよ。お前は事件の時、この研究所の研究者だったはずだ。細胞培養室に入れたのは指紋認証を突破できるやつだけ。外部の人間や特別研修生だった俺や光莉は入ることはできない。入れるのは研究者だけだ」


「あの日は確か、緊急装置以外の電気系統がダウンしたとお聞きしましたが?」


「動物と細胞関係は緊急時でも鍵がかかるんだよ。バイオハザード防止のために。というかそもそもで電気系統がダウンしたのは事件が起こった後の話だ」


「あぁ、そうでしたね。関係ありませんが」


「……何?」


「あの時は私の名を悪く広めないために孤虎利人には犠牲になってもらったのです。実際、事件を起こしたのは彼だと世間は信じ切って、世界の敵となった。ありがたいことですね」


「何が言いたい」


「まだわかりませんか。では、中で答え合わせと行きましょう」


 その瞬間、足元が崩れる。いや、ほどけた。


 屋上だと思っていたそこは、どうやら植物の蔦が絡みあい外見を屋上に似せただけの足場だったようだ。蔦が突然ほどかれて足場を失う。でも、多分これは攻撃じゃない。答え合わせの舞台へ導かれているだけだ。


 なら全部持って帰ってやろう。多少危険があるにしても、ここで主犯からすべてを聞き出せるのは願っても見ないチャンスだ。


 風を起こし緩やかに建物の中に着地する。すると天井は巻き戻しの映像みたいにシュルシュルと蔦が絡んでいき、どこからどう見ても天井としか思えないそれに姿を戻した。


「すげー、どうやってんの?」


「かなり老朽化が進んでいますから補修をしたまでです。ですから、この建物のなかにいるという事は私の体内にいるようなものだとお考え下さい」


「はいはい、答え合わせってやつが終わるまではおとなしくしてますよ」


「助かります。乱暴な真似はあまりしたくないんです」


 にこりと俺に微笑むその表情に感情は全く伴っていない。仲良くしたいと今朝は言っていたが、俺はおそらく例外だろうな、と苦笑が漏れた。


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