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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#19 彼岸の未来
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317/342

#19-7 火花が弾けた

 

 ドォォォオオオオオンッッ……



「…………は、ははは、あはははは!やった、やったぁ!!」


 黒煙が建物全体に立ち込める中でネピアの笑い声が響く。


「やったやった引っかかったわね!アンタがそれを使うのを待ってたのよ!この足元の水にはザセル様が作った、水で姿が透明になるトビウオがうじゃうじゃいる。アンタがその弓を放つ直前、アンタに飛びついてそのまま自爆させてやろうと思ったのよ!」


 暗闇の中でじゃぶじゃぶと走り近寄ってくる。

 声は高くはしゃいだようで、罠がはまってさぞ嬉しいんだろう。


「バーカバーカ!アンタなんかにこのアタシが負けるわけ、」


 黒煙の中で見えた、鋭く光る爪。


 そこだ。



 バチバチバチッッ!!



「わけ、な、」



「みーつけた」



 バチバチバチバチバチッッ!バチンッッ!!


「な────」


 ボロボロになった右の拳に力を込める。過剰な電気が体の中に溜まって発光して、筋肉が赤く見える。


 明るくなったおかげでよーく見えるよ。貴方の恐怖に引き攣った表情。

 身を退くネピアの胸あたりを左手で掴み逃さない。


 邪魔をする魚群よりも速く拳を振り抜いて。




 火花が、弾けた!




 ゴッッッッ!!


「───っあ゛あ゛あ゛あ゛!!」


「まだまだ」


 床を跳ねるネピアの体へ更に拳を振り落とす。拳は衝撃を与える瞬間だけ、鮫の頭部に変形しネピアの体を食いちぎっていく。


「い゛っ、あ゛っ!?」


「まだ、まだ!」


 回し蹴りで壁へ叩きつけ、上から拳の雨を降らせる。飛び散った血や肉が壁にへばりついて、ずるずると落ちていった。


 気がつけばネピアの体は見るも無惨なものになって、あまりのダメージに耐えられなくなったのか人間の姿へと戻っていく。


「ば、けも、の……」


「お互いさま、だね」


 掠れたその声はまだ意識があることを意味している。まだ足りなかったかな?そう拳を振り上げた。


「アンタ、」


「?」


「変わった、わね」


 その言葉に振り上げた拳はぴたりと止まる。……変わった?


 仰向けに転がるネピアは震える腕を顔の隣に置いて、降参の意を示している。


 どうせもうこの体じゃまともに動けないでしょ。なら情報を引き出すために待ってもいいかもしれない。


「変わった?何が?」


「アンタ、はじめのころは、フレイムの影に隠れて震えてるだけの存在だったはずじゃない」


「……」


「ガキの時は気に食わないことがあるとすぐに泣いて、都合いいことが起こるとヘラヘラ笑うだけ。何にも知らずに。なんなの、弱っちぃはずなのに、ムカつくムカつくムカつく……!!」


「言いたいことはそれだけ?」


「……」


「じゃあバイバイだね」


「……ひと、つ」


 一つ最後に言いたいこと?命乞いか、あるいは遺言か?


 上からじっと見下ろすと、気まずそうにネピアの視線が逸れた。しばらく経って、ネピアが口を開く。


「一つ、聞きたい」


「なに?命乞い?それとも回復までの時間稼ぎ?」


「違うわよ……アンタ、死んで勝手に楽になるなんてとかなんとか、言ったわね。なんでそんなこと、思ったの?」


「……」


「悔しいけど納得がいった。認めてないけど、確かにって一瞬思っちゃった。そんな考え、アンタから出てくるなんて思えない。誰かの入れ知恵?」


「……ううん、違う」


「……」


「私は別に、死ぬことが逃げることだとは思ってないよ。でもさ、死んでこれでお姉ちゃんが楽になるって、勝手に決めつけたくなかったの」


「……」


「だから、全部知ってお姉ちゃんが私に死んで欲しかったってことなら、考える。けどまたお姉ちゃんのこと知らないまま勝手なことしたくない。それに、もしかしたらそうじゃないかもしれない。頭お花畑だけどさ、まだ信じてたいんだ、お姉ちゃんのこと」


「愛海のことを?」


「うん。話したことなかったっけ。あぁ、ないかぁ」


「……あるわけないでしょ。敵なんだから」


「じゃあ今だけ、仲良くしてよ。ちょっとだけ話聞いてよ」


「……はぁ?そんなことしてていいの?」


「ちょっとだけ、ちょっとだけだから」


 気が変わった。ちょっとだけ、ちょっとだけね。

 私も話してみたかったの、貴女と。



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