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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#18 決戦前夜と共犯者
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#18-10 隠し通した親愛の情

 

「お前、案外ビビりなんだな」


「うるさい」



 同日同時刻────SCR本部内、研究部にて



 眼前のガキは机に突っ伏して縮こまる。ダルダルにあまり切った白衣の袖やら端やらが地面に広がって邪魔だった。いつもの元気はどこへやら。遠慮や倫理という言葉が辞書になさそうなこいつでも、こういうときは流石に応えるのか。鬼の目にも泪……はまた意味が少し違うが。


「何しに来たんだよクソ医者」


「あんたのみじめな姿を見に来たって言えば満足かい?」


「どうせ僕ちんの監視だろ。食堂でフレイム君を連れ去ったところ見てたくせに」


「大事な最終任務の前に何かされたらたまったもんじゃないからね。でもおかげでいいもんが見れたよ」


「……うぅ」


 言い返す元気もないとは、こりゃ相当重症だね。


 でもあんなこと言われたら、こいつと言えどかなりのダメージが入るらしい。いたずら心に、ちょっといじってみるか。


「何をそんなに気にしているんだい?的戸才花ともあろう研究者が」


「別に気にして……うぅ」


「この10年、ずっとあの子のことを研究と称していじくりまわしていたじゃないか。殺しかけていたものを、何をいまさら」


「僕ちんがあの子のこと殺すわけないだろ!?だって利人先生のご子息なんだから!」


 涙目ながらものすごい形相で答えが返ってくる。こんな必死な顔、初めて見るもんだから笑ってしまった。



 実はこのマッドサイエンティストには恩師がおり、それが優也の父親である孤虎利人だった。



 その事実を知ったのはごく最近のこと。しかも恩師の子供を研究対象にすることに、10年前の当時はかなり反発していたらしい。けれど戦いに身を投じる優也を見て、死なないための力を、方法を開発するために研究部へ手を挙げたそうだ。


 極悪非道の研究者と思っていたが、コイツはコイツで葛藤があったわけだ。


「面白い実験動物だから殺さない、じゃないのか?」


「……今までの実験だって全部、本当に本当にぎりぎりのところで止めてでもできる限りデータを集めて、あの子が戦いのなかで死なないよう力をつけさせるためMortal evolutionだって作りあげたんだい!!」


「ははぁ。あんた、気遣っていたわけかい」


「もちろん実験動物としての興味だって10割あるけどさぁ」


 10割て。

 ちょっと感動しかけた胸の熱さを返してほしい。


「でも利人先生のご子息なんて、僕が利人先生の研究を引きつぐなんて、10年前アメリカにいた頃には思ってなかったからさぁ……」


「……そうだねぇ」


「僕ちん、ちゃんとマッドサイエンティストぽかった?下手に温情をかけると、利人先生に似たあの笑顔が向けられちゃうから僕ちん必死だったんだよ」


「かなりうまくやれていると思ったよ。というか実際そうだろう」


「ちょっと!これでも僕ちんは配慮したつもりだからね?

 彼がこの地獄のような世界でも生き抜くためにはデータが必要だった。それが少しでも彼の生存率を上げればいいんだけど……」


 こいつが優也にしていた実験はどれも過酷なものだった。人の命をなんだと思っているんだ。そういって何度こいつと対立したことか。

 しかし、こいつにも目的や人の心があったのだ。……多分。


 ふっと笑うと、拗ねたようにそっぽを向いた。


「知らなかったよ。それじゃきっと、利人先生も、きっとあんたには感謝してるね」


「え?」


「息子を護るためにこの10年頑張ってきたんだろう?利人先生にとっちゃ、本当にうれしい話だろう」


「そ、そうかな!」


 突然ぴょん、とガキがその場で跳ねた。心底うれしそうな笑顔を浮かべて、ルンルンと音符が漏れ出てきそうなほどにその場で揺れている。さっきまでのどんよりとした雰囲気はどこに行ってしまったのか。


「利人先生は唯一僕に理解のある先生なんだ。その利人先生が、僕に感謝!?」


「過酷な実験の数々は目に余るけどね」


「やったー!えへへ。もう死んでもいいやぁ……」


「おっと、それは待ちな」


「へ」


 動きを止めた的戸に先ほど入った連絡をメモした紙を見せる。つらつらと文章を追うように目線が動いて、文末に追いついた後、視線を上げた。その表情はまさに意味が分からない、と言いたげだ。


 まあ、私も驚きが始めは勝った。けれど長官直々のお達しならば、誰も文句は言えまい。


「なんと白夜長官からのお達しだ。医療部の私と研究部のお前が協力しろ、と」


「は、はぁ!?あんたと!?」


「そりゃそうだろう。例えアンタといえど流石に医療の専門知識はないだろう」


「む、むうぅう」


 そう。長官からの命令は医療部と研究部が手を取り『あること』を実現すること。それには私とこのガキの力、両方が必要だ。どちらも欠けてはならない。


 さてさて、こんな大変なことを、誰が思いついたのやら。あてがないわけじゃないが、選択肢は残る。


 けれど、今やることは一つ。


「今こそ、ラボと臨床がお互い手をつなぐ時だ。覚悟しておけ、ガキ」


「あーもーわかったよ!いいけど。僕ちんの研究の足でまといにならないでよね、ババァ」


 意気揚々と下から高らかな雑言が飛び出てくる。見慣れた気味の悪いマッドサイエンティストの笑みだ。ようやく本調子に戻ったようだ。ったく、世話のかかるやつ。


 バチバチと火花がなりそうなほど睨み合った後、各自書類やチームへの呼びかけのために解散していった。



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