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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#18 決戦前夜と共犯者
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#18-7 共犯者

 


「私も殺そうとしたんだもん」



「……え」


「えへへ。実は私も同じシリンジ、構えてたんだ!」


「え、え!?」


「同じこと考えてる!?ってびっくりしちゃったよ。あはは」


 緊張が弾けたみたいだ。海美ちゃんはまるでイタズラがバレた後もうなんかどうでもよくなって開き直った人みたいに高らかに笑っている。なんか、なんかすごい怖い!


 何かの衝撃にやられたみたいにその場から一歩、また一歩後ろに下がる。それを見た海美ちゃんはなんでよ、と抗議の声をあげた。


 一回自分のことは棚に上げといて……何、なんでこの子がそんなこと思い浮かぶんだ。


「どうして、そんなこと」


「いや龍斗さんも人のこと言えないけどね」


「まぁ……そうだけど。でも、俺はそもそも宣言してたし」


「確かに?感化されちゃったかなぁ、あはは。でもさ、私も同じだったんだもん」


「え?」


 同じ?何が?

 疑問符が頭に浮かぶ俺に海美ちゃんは少し遠い目をしながら、近くの壁に背中を預けて語り始める。その大人びた様子に、すこし背筋が伸びた。


「優也にこれ以上誰も傷つけさせない。そのためには今ここで殺さないといけないんだって、そう思ったの」


「うん」


「でもさ、違うよね。私たちは優也じゃないんだから」


「優也じゃ、ない?」


「優也は優しいから、自分の気持ち押し殺してでも大切な人に手をかけるけど、私たちもそうである必要はない。優しくなれなくたっていいの」



 いつか話した、優也の優しさ。



 自分がどれだけ苦しくなっても、相手にこれ以上手を汚させないために、自分が手を汚す。罪悪感を感じないタイプでもないのに、それでも前へ進み続けるその強さ。


 でも、別に俺たちまで優しくならなくたっていい。ならなくていいってよりは、なれないし。


 みんながみんな、あの強さと傲慢さを持っているわけじゃないから。俺たちはこれでいい。優しくなれないままでいいんだ。


 海美ちゃんの言う『同じ』。あぁ確かに、『同じ』だね。

 一人納得していると、海美ちゃんは話を続ける。


「それにそれだけじゃなくて。……その、」


「……?」


 珍しくなんだかはっきりしない様子の海美ちゃん。すこし合間をあけて、ポツリと呟いた。


「龍斗さんと、もっとお話ししたかったんだ」


「……え、」


 俺と?


「龍斗さん、心中だって言ってたとき、私悲しかったんだ。何も言えなかったけど」


 照れたように頬を赤めながら微笑む。え、なにそれ。


「もっと龍斗さんのこと知りたいの。もっともっと!……なのに龍斗さん、優也と死ぬ気満々だからさ。悔しくなっちゃって、寂しくって」


「いやその、あの時俺は3人で心中するもんだとばかり……」


「生きて帰って、みんなでまたご飯たべる時間をすっかり諦めちゃってるのが寂しくなって悔しかったの!だから止めた。わがままでごめんね」


 手を合わせてごめんね、と首を可愛く傾げた。


 そっか。優也のことばっかりになっちゃったけど、ここにもいたんだね。寂しがりの子が。


「……ありがとうね、止めてくれて」


 三人の時間をあきらめた俺だけだったら、今ここに三人はそろっていない。君のおかげで、また最悪な未来を退けることができた。


 感謝を伝えれば、心底嬉しそうに笑う海美ちゃんがいた。あぁ、本当に感謝しないとね。お礼になんでもするぐらいには。


 ……でも、どうしても譲れないことがある。それも、海美ちゃんの協力が必要なこと。

 今の君になら、頼んでもいいかな。


「海美ちゃん」


「?」


「優也殺害未遂の仲ってことで、一つお願いがあるんだけどさぁ」


「ふふっ、えーなになに?」


「優也が自分のこと諦めようとしたら絶対に止めよう。例えその結果、どんな結末を辿ろうとも」


「!……」


「3人で1つでしょ?誰も欠けさせない。それが絶対」


 それくらいの自分勝手ぐらい、許してよね。

 そんな俺の身勝手さに笑ったのか、あるいは呆れたのか、眉尻を下げて海美ちゃんは朗らかに笑った。


「……あれれ〜?でもどんな結末とか言っちゃうと、世界が壊れちゃったりして?」


「その時は〜まぁ、共犯ってことで!」


「えー!……ふふ、いいよ。共犯ね!」


 未だ世界中の誰にも知られていない共犯者は、世界を脅かす爆弾を隠して静かに微笑む。

 君ならそうくると思ったよ。


 時計を見ればそこそこの時間。最後に鍋の〆をいただく頃合いだろう。


「……さ、食堂に戻ろうか。最後の〆はうどんかなぁ」


「お米入れたい!」


「チーズあわせたら最強かも」


「確かに!?センス良い!」


 明るく軽い見た目の重苦しい空気は晴れて、今は最終任務から帰ったら何を食べようかなんて呑気に考え始めてしまった。


 ここに帰って来て、何を食べて、何を話して笑おうか。何かを偲んで泣いちゃうかもな。



 でもまぁ、どんなことがあったって。



 廊下に踏み出す2人分の足音は軽やかだった。

 とても、世界を脅かす怖い話をしたとは思えないほど。



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