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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#18 決戦前夜と共犯者
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#18-3 鍋パしよ!

 

 残された時間は短い。今日1日回復に専念したおかげで、特殊戦闘部隊の3体は充分回復した。


 ……だが、



 同日某時刻────SCR本部、食堂にて



「……」


 眼前にはグツグツグツ、と目の前で煮たたる鍋。


 キムチ特有のツン、と鼻につくにおいが司令部に充満し始めている。

 その隣には味噌煮込みうどんが良く煮込まれており、さらにその隣ではすき焼きとつける卵が準備されていた。


 狛坂に呼ばれてきてみれば、なんだ、この気の抜け方は。


 ありえない光景に唖然としていると、私に気がついたのか狛坂が近づいてきて礼をする。


「白夜長官。よかった、間に合って」


「狛坂、なんだこれは」


「ううん……あの三人の壮行会?みたいな会ですね」


「壮行会だと?ふざけるな。今どんな状況かわかっているのか?」


「あはは。ほんとですよねぇ。もうすぐ最終任務なのに、こんなことしてていいのかなって僕も思います。でもやるべき仕事は終わらせましたし、三人のやる気を養うって意味でもいいかなぁって」


「……」


「人間、最後は気力ですし。もしもの時の踏ん張る力になれればいいなって。あぁ、もちろん本部内の隊員をすべて呼んでるわけじゃないですから。来れる人限定です」


 そういう割には、この広い食堂が狭く感じるほど多くの人間が集まっているのだが。


 今夜2245に最終任務を課した。目的はザセル及び特異生物の殲滅。普通であれば緊張感の張りつめるはずだが、緩み切った雰囲気とあたたかな空気が流れていた。私は疲れて幻覚でも見ているのか?


 会の中心には特殊戦闘部の三体が鍋をよそっている。確かに仲良くするなとは言っていないが、距離が近すぎやしないか。そいつらは特異生物なんだぞ。また喝を入れなければいけないのか?


 特殊戦闘部の三体のもとへ向かう。直接聞いた方が手っ取り早いだろう。


「おい、お前達」


「白夜長官、お疲れ様です」


「お疲れ様です、ではない。なんだこれは」


「なんだ……って、鍋ですけど」


「それはわかっている。なんだこのパーティはと聞いているんだ」


「あぁ、勝手にすみません。食堂の人達には快諾してもらっているんですけど」


「最後にみんなでごはんが食べたいって海美ちゃんが言い出して。いいアイデアだと思って色々な人誘ってたらこうなった感じだね」


「うん!長官は何食べたいですか?やっぱ豚キムチですよね!」


「いーやすき焼きだろ。卵もちょっと高いやつがあったので、絡めて食べるとすごくおいしいですよ」


「味噌煮込みもおすすめだけどなぁ~」


「……」


 これがこれから命をかけた最後の戦いに出る者たちの発現なのか?今朝の件が響いているのか?


 フレイムがアスカロイに洗脳され敵になったときのこと。結果として戦闘を解除し特異生物を焼却して、生還した。ザセルのことを一度おいておけば最高の結果だと思えるが、こいつらにとってはその過程の方が大切らしい。


 手段が目的になるなど、ありえない話だが。


 フレイムとスパークが人に呼ばれ離れたところを見計らってストームに近づく。それに気づいたストームは少し目を見開いてから、柔和に微笑み、お椀に鍋をよそって差し出した。


「おすすめ味噌煮込み。どう?」


「……お前、婚約者のことはもうどうでもいいのか?」


「はぁ?んなわけないでしょ。……俺の居場所はここだ。それだけ。それが何か?」


「あんなに婚約者のことしか頭になかったお前が、今更そんな態度をとっていることに驚いているだけだ」


「ははは。まぁ、ね。過去に縋って今の悲しみに溺れるのは簡単だ。けど、」


 ふわり、と鍋から立った煙が一瞬視界を遮る。すぐ晴れたその向こうで、ストームは笑っていた。


「未来を信じたくなったんだよ。誰かさんのせいでね」


「……」


「で、食べんの?」


「……いただく」


「ふっ、ていうかその言葉、アンタにそのまま返してやるよ」


「?」


「あんなに特異生物のこと恨んでたあんたが、今や同じ鍋をつついていることに驚きだね」


 さわやかな笑みはニンマリと擬音が付きそうなほどにいやらしくゆがんだ。ひったくるようにお椀を受け取り、そのまま口に運ぶ。


 鼻を良く通る香り、舌にしびれるような味噌の味。うどんは少し硬めでコシがある。普段の食堂の食事ももちろんおいしいが、これはまた格別だ。


「どう?おいしいでしょ」


「……お前が作ったのか?」


「いいや、俺はそんなに。生活管理部の食堂担当の人と優也が一緒に作ったんだよ。ああ見えて、優也は結構料理得意だからさ」


「お前は何もしていないのか?」


「最後の煮込みと配膳はしてるから勘弁して。あー、あとで海美ちゃんの豚キムチも行ってあげてよ。おいしいからさ」


「そうか」


 ひらひらと手を振って見送られる。お椀によそわれた分を食べきって、ぐるりと食堂を見渡した。


 各部署の隊員たちが、部署の垣根を越えて話し笑っている。こんなに穏やかな風景はいつぶりだろうか。日の光が入らないこの地下の閉鎖空間という特性、そして特異生物を殲滅するための極秘防衛機関であるという立場。そのすべてがこの施設内の空気を暗くしていたはずだ。それがこんな明るく。


 ただ特異生物を殲滅するための組織。ただの手段であるはずのそれが、こんなにも。


「白夜長官」


「ちょうかーーん!」


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