#17-25 甘えたっていいじゃんか
どさ、と膝をつく。限界だ。もう指先だって動かせない。
赤と青、合間の薄い紫。雲なんて一つない綺麗な空が霞んでいく。
だめ、だ。2人のところに戻らないと。本部に戻って報告しないと。
やらないといけないことはたくさんある。なのに体は言うことを聞いてくれない。瞼は鉛のように重くて、体が地面に強く引かれているようで、そのまま────
「っと、危ねぇ」
────倒れかけた背中を、誰かが受け止めた。
「ぅ……」
「大丈夫か、優也」
「大丈夫?」
「りゅうと、さん。うみ」
人間の姿に戻った2人。良かった、増えた大きな怪我はない。安堵でふっと笑う。それを見て2人は顔を合わせた後、笑われてしまった。
右腕にちくりと注射、セルヒールだ。助かる。もう動けない。マジで。
龍斗さんの腕に全体重を任せる。ていうか、2人は俺の近くに来て大丈夫なのか。忘れかけていたけど爆発の中心だぞ。熱くないわけがない。
「龍斗さん、ここ、来て大丈夫なんですか」
「ん?あぁ、技術部が用意した特殊な靴履いてるから足は大丈夫。ま、熱いけど」
「あ゛づい゛〜早く帰ろ!腹も空いたし」
「お、優也のお手製朝ごはん?」
「わぁっ!楽しみ!」
「……今日は手抜きですからね、さすがに」
やった〜!!と手を取り合って喜ぶ2人にまた、ふっと笑ってしまった。
眩い朝日が海に反射してキラキラと輝く。さて、帰ったら何を作ろうか。そういえば昨日の昼から何も食べていないことを思い出した。安心したからかなんなのか、ぐぅと腹が悲鳴をあげれば、気恥ずかしさに顔をふいっとそらしてしまって、また2人が笑った。
少しその場で息を整えて、迎えがくるところまで歩く。が、しかし。問題が一つ。
「さて、そろそろ迎えがくるとこいくか。優也、動けるか?」
「……」
「あーーー……さっきから龍斗さんの腕でぐでーんとしてるもんね。キツそう」
「……歩けません、けど」
絶対に拒否する。
「じゃあ俺が背負っt」「嫌です」
「ぷっ」
「じゃあ前に抱えt」「嫌です」
「ふふ」
龍斗さんは眉を寄せ目を細め、あからさまにめんどくさそうな顔。でもここは退けない。いや別に退く退かないとか抵抗もできないけど。けどさぁ!
「優也」
「……じ、自分で動きます。もう少し経ったら」
「時間ねぇぞ」
「……」
「よし。お姫様抱っこにしてやるよ司令部のみんなにも見てもらえ」
「な」
「うわ、にやにやしてる〜」
「はなせ、はなせ!!」
「まーまー、照れ屋を治す良い機会だろ痛っ!?噛むなよ!?」
抵抗しようにも体に力が入らない。唯一動く口で噛みついてグルグルと唸る。龍斗さんは噛まれた手を軽く振りながら頬をピクピクと痙攣させつつ、意地の悪い笑みのままだ。イタズラ心しかありませんと書いてある。
とにかく、そんな格好で持ち帰られてたまるか。俺の身勝手なわがままなのは分かってるけど!!
……置いていくって選択肢を出してこない優しさに全力で甘えられるのも今だけ、かもだし。
満たされる胸の内。絶対に言ってやらないけど、この暖かさが手放せなくて。
「へぇへぇ、じゃあ俵担ぎか?小脇に抱えてやろうか」
「やめてください」
「あ、上に持ち上げて運んでやるよ!飛行機みたいに!」
「いやだ!おい帰った後覚えてろよ……!」
「あ、じゃあ私は!?お姫様抱っこならできるかも!」
「や!め!ろ!!」
「では、私が運んで差し上げましょうか」




