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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#17 君のいない未来 - 後編
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#17-24 固く結んだ約束を守れるように

 

 風が吹き荒ぶ嵐の中を歩く。地面を踏むたびにひび割れ、そこからマグマが沸いた。


 ふぅ、と吐息を吐けば吐き出た炎から黒い煙が立つ。元の体がかなりやられている。この姿でいられるのは精々15分程度だろう。


 挑発するようにくいくい、と手招きするザセル。ここで確実に焼却する。絶対に。


 体勢を低くして飛び出す。炎纏った流星のように加速してザセルに向けて拳を放った。ザセルは大きく丈夫な葉を盾にするも一瞬で焼き尽くして貫通する。しかしそこにザセルはいない。


 飛んだ。上だ。


 体の半分が朝日の光を透過している。いつもの透明化だな。


「スパーク!」


「りょーかい!」


「援護に入るから思いっきり集中しちゃって!」


 狛華さんの解析もあるが、俺たちだって対策していないわけじゃない。


 スパークは胸の前で手を組み、片手をもう片手で包み込むようにするとそこに光がたまっていく。キン、と高いモスキート音が一瞬響くと、途端にバチンバチンと空気中に細かい電撃がはじけていく。細くか弱いそれは体にぶつかっても微塵もいたくない。静電気ほどの力もないが、これで


「これは……!」


「そこだ」


「ぐっ……!?」


 透明化したザセルの形をはっきりと浮かび上がらせる。距離は離れているが拳をふるえば焼き尽くす熱波が飛び、そして


「Penetrate!」


 地面を踏みしめるといくつもの鋭く長い棘が地面から生えて、空に浮かんだザセルをとらえる。でも肩を貫通しただけだ。あれだとすぐに再生される。まだ足りない。もっと、もっと!


「Alter!」


 伸ばした棘が材質の組成を血液に近いものに変えて、さらに肩に差し込んだ枝先を細かく細かく分岐させザセルの体の細かい組織に根を張り固定する。これで簡単には抜けない。このままさらに追い詰める!

 針山を足場に駆け抜け燃える拳を振りかざした。


 ガキンッ!


「っ!!」


 重い音に重力が体を引く。足が空気を踏む。


「ネイチ!」


「すまない優也。私はザセルに抵抗できないのだ」


 足場にしていた針山がネイチに砕かれた。続けて飛んでくる拳を空中で身を捻って避けきる。


 着地した衝撃で宙をまう瓦礫を掴み、発火させてぶん投げる。パワー型にこの攻撃は悪手かもしれないが、今は──!


「見つけた」


 ビュンビュンと吹き回る風の中、ストームの呟きが聞こえた。


「頼みます」


「任せろ。スパーク、ちょっと耐えててね!!」


 スパークの側で雑魚を払っていたストームが飛び出す。向かう先にはスパークの微細な電撃によって形取られた一つの影。


「ひゃっ、びぃぃいい!?」


 ぴょん、と飛び上がるようにストームの鉤爪蹴りを躱わす。だけどそれだけだ。流石はカタツムリ。特殊能力こそ厄介だが本体は脆い!


「見えない刃にご注意!!」


「ぎゃぁぁいっ!?」


 ストームの風の刃がカタツムリをズタズタに切り裂き、得たいの知れない青緑色の液体が吹き飛びストームに降りかかる。けれどこれも想定済み。見開かれた龍の双眼が全てを見切り、風で吹き飛ばしていく。


 止まらない。


 瓦礫を挟んで殴り固い殻を破り、出てきた気持ち悪い中身を風の刃でさらに切り刻む。もはや動くこともできないのか、アスカロイはその場に転がってピクピクと痙攣している。ストームが触れないように瓦礫越しに踏みつけ、見下ろす様は悪役のようだった。


「お前、随分とうちの相棒を可愛がってくれたじゃねぇか」


「ひ、ひ、マイはぁ……ザセル、様に言われただけでぇ……えへへ、ゆ、許してっ許してぇぇ!!」


「許して?あぁ、許してやるよ。お前が命を持って詫びたらな。フレイム!!」


 受け流していたネイチの乱撃から一度抜け出し空へ跳躍する。ちょうどそこに風に舞ってアスカロイの斬殺体が飛んできた。ストームもその後を追ってきている。ぴったりだ!


「同時に行きますよ、相棒!」


 拳に恨み辛みをこめてありったけの熱を溜める。


「あぁ!」



 Blow away the mutation!




「「ファイヤドラゴンブレス!!!」」



「ぎゃぁああああああああああっっっ!!!!!」


 炎を纏ったドラゴンがアスカロイを焼き尽くしていく。その中でも再生しようと足掻いたようだが、ドラゴンの体内の中で重なり乱れる破裂する見えない刃に切り裂かれて細切れになった後、炎に包まれ塵も残さず消えていった。


 攻撃の余波はネイチにもおよぶ。炎を纏ったドラゴンはアスカロイを飲み込んだあと、そのままネイチに噛み付こうとする。ネイチはこれはまずいと判断したのか、背中を向けて走り出した。


「逃がさない」


「!」「!」



 バチバチバチッ



 後ろから過剰な電気がこぼれ落ちて地面を走ってくる。この光と圧は。



 バチバチッ、バチン!!



「優也のこといたずらに傷つけて、優也の笑顔を奪いやがって、許さないんだから!!」



 ふりかえると、後ろに雷の弓を構えたスパークがネイチを狙い定めていた。同時に心の中で焦り始める。


 やばい、スパークの弓が狙う軌道上に俺はいる。ここだと邪魔になっちまう。ストームに引っ張り上げてもらうか?でも俺が触れたらストームがタダじゃすまない。


 少しの焦りの中、スパークと視線がぴたりと合う。言葉はいらなかった。



 ……仕方ねぇから合わせてやるよ!



「──ファイナルシャークスパーキングアロー!!」



 地面と水平に、充分に引ききった後に射られた弓が鮫の形を成す。相変わらずすごい光だ。本当に空を切り裂く雷をこの場に持ってきたんじゃないかと錯覚するほどの眩い光。


 凄まじいスピードで飛んでくるそれに合わせて跳躍する。眼下にはちょうど拘束から抜け出したザセルと逃げるネイチの姿。


 首にシリンジを突き刺す。



 Burst up the mutation!



 巨大な雷鮫がその口を開きネイチに噛み付く。そのまま針山を崩しザセルも飲み込んだ。


「ゆう、や……!私は、お前の……!!」


「悪いが、お前との親子ごっこはもう懲り懲りだ!!」



 仕留める。ここで!


 フレイムの────優也の体は炎に飲まれ、炎の塊がネイチに激突する!



「───ファイナルタイガーバースト!!!」



 猛火を宿した拳を振り下ろし、衝突した瞬間に一瞬の静寂。そして巨大な1度の爆発と連続した小規模の爆発!!



 拳を握りしめる。ここで、ここで全部!!



「うぉぉおおおお!!!」



 衝撃の中心で叫び声をあげた。


 今日までの酷い恐怖も、

 夜を越えられない憂いも、

 噛み締めるたび苦かった後悔も、


 

 全部全部ここに込めて!



『優也』『優也!』



 差し伸べてくれた手を離さないように。



『一緒に生きよう』



 大切な人の笑顔を、



『3人で一つだ』



 固く結んだ約束を、守れるように!!



「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!」



 ドガン、と大きな音と同時にブチンと耳の奥で鼓膜が破れ、ドォンと低い音だけが伝わってくる。体が散り散りになりそうだ。頭がおかしくなりそうだ。それでも拳は離さなかった。


 体が宙に浮かぶ。拳はいつの間にか人間の手に戻っていた。きっと体も人間の体に戻っているだろう。


 しばらくたって爆発が収まったのか、視界は白い光から黒煙に切り替わる。ぐらりぐらりと視界は揺れて、自分が立っているのか倒れているのかさえもわからない。


 やった、のか?


 次第に視界も開けてくる。すり鉢状の階段の下の広場だったそこは、とうにその原形を止めていなかった。


 近くからギイ、ギイ、と嫌な音が聞こえる。視線わ音の方向にずらすと、それはダイバー大橋だった。爆発の衝撃で根元がやられたのか軋む音が止まない。きっとすぐに壊れる。


「あ……」


 どさ、と膝をつく。限界だ。もう指先だって動かせない。


 赤と青、合間の薄い紫。雲なんて一つない綺麗な空が霞んでいく。

 だめ、だ。2人のところに戻らないと。本部に戻って報告しないと。


 やらないといけないことはたくさんある。なのに体は言うことを聞いてくれない。瞼は鉛のように重くて、体が地面に強く引かれているようで、そのまま────



「っと、危ねぇ」



 ────倒れかけた背中を、誰かが受け止めた。



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