#17-18 俺にできる贖罪は
しばらくして、お互いが落ち着いて海美のインカムで司令部と連絡を取って救援医療部隊を呼んだところ。
「そういえば龍斗さん、片目、どうしたんですか」
「え?」
海美からスーパーセルヒールという名前の安直にもほどがあるセルヒールの強化版をもらい飲み込んで、疑問を口に出した。
さっきから、俺が目覚めてから龍斗さんは片目を閉じている。常にウインクをしているような状態だ。怪我でもしたのか?
「さっきからずっと閉じてますよね。怪我ですか?」
「あー……ま、隠しても仕方ないし、言っとくけど」
チラ、と海美のことを見てから少し目を伏せ、決意したように右目を開く。
「!」「ひっ!?」
「焼けたか茹で上がったか火の粉でも入ったか。完全に潰れたみたいなんだよね。だからカバー頼むかも。ごめん」
そこに黒目はなかった。眼球だったものがそこに鎮座しているというべきなのか、白く濁った瞳が虚を映している。俺たちのリアクションを見て龍斗さんはすぐに右目を閉じる。
俺がやったのか。
「……」
「ま、もしかしたら柏木先生に何とかしてもらえるかもしれないし。後々は慣れていく。今は少しカバー入れてくれよな、相棒」
「あ、あの実は私も……」
「!、なんだ」
海美を見ると左耳を抑えている。なんだ、どうした。
黙って凝視しているとおずおずと気まずそうに垂れる髪の毛を掬い上げる。そこに、
「ーーーーーっ!!!」
耳はなかった。
「耳、溶けた?飛んでっちゃった?みたいで……あはは。あ、痛くはないよ。薬のおかげで」
罰の悪そうに海美は髪を下ろす。耳が溶けたって、それ、笑える話じゃないだろ。どれだけ痛かったか。想像すらつかない。
特異生物とはいえ流石に無くなったものが同じように生えてくるわけじゃない。もし仮に腕が吹っ飛んでたらそれを再生できるわけじゃない。今は耳や目で済んでいても、もしかしたらもっと酷いことになっていた可能性もある。
愕然とする俺に龍斗さんがポンと背中を叩いた。
「ま、お互いカバーしていこう。とはいえ、海美ちゃんの耳は優也よりもすごい聴力あるし、片耳だけでもかなり聞こえるんじゃないかな?」
「うん、もちろん!バッチリだよ」
「俺も変身態なら左目の視野も広くなるし。カバー欲しいときはお互いほうれんそうね」
「報告!連絡!相談!」
「素晴らしい!……から、優也もそんな顔しないの。大丈夫だから」
よほど酷い顔をしていたのか、龍斗さんが俺の頭を適当になでる。
けれど、吐きそうな気分に変わりはなかった。
龍斗さんの目を、海美の耳を奪った。どっちも多分、どうにもならない。きっと今後も付き合っていくことになる大きな傷。障害と言ってもいい。ただでさえ変身の代償があるのに、そこに俺が、
「……」
過去を恨んだところで2人の傷が癒えるわけじゃない。今、未来を変えるために俺ができること。考えろ。2人を守るために、何ができる?
「……2人は」
「ん?」
「え?」
俺にできる、贖罪は。
「2人はここにいてください」




