#17-16 手をつかめ
暗闇の中瞼を開けても、目を覚ましたかどうかもわからない。
ふわふわと浮かんでいる感覚がする。冷たい、海の中のような。波にさらわれているような。体の自由はどうにも効かない。
何をしているんだっけ。何をしていたんだっけ。
何も思いだせない。自分が誰かも曖昧だ。
こんな暗くて、寒い空間の中に独り。
独り。
すぅっと体が冷え切る。独り。どこかもわからない所で、誰にも知られないまま、独り。
独りなんだ。
しまっていた心の奥から化け物が出てきて、心をめちゃくちゃにしていく。
やめて、やめてくれ。もう俺は、もう。
俺は大切な人に手をかけたんだ。
俺が隣にいるって、傍にいるって言ったのに。俺が二人を殺した。俺が二人を殺したんだ。時間は戻らない。奇跡なんてない。もう痛いほどわかっているんだ。10年前のあの時から。
もうこんな世界で生きていたくなんかない。
死にたいのに、息も止められない。舌を噛もうとして、言葉は何一つも出てこなかった。
瞼を閉じても開けても、そこには闇があるだけ。夜は明けないまま、また瞼を閉じた。
「……!」
……?
「…………!……!」
眼を閉じるとおのずと感覚が集中するのは耳だった。
誰か何かを言っている。なんだろう。
瞼を開いた。
「……ぁ、?」
そこはいつも通りの闇が広がっているはずだった。でも、違う。
果てから光が射している。
強いわけじゃないけど、確かにそこにある。まるで星みたいだ。近くにあるのか遠くにあるのか、いまいち距離感はわからない。そうそう、前に龍斗さんと海美が前に言っていた────
───そうだ。この声は、
龍斗さん。
うみ、海美。海美の声だ。
二人の声。光の方向から、かすかに聞こえてくる。
今なら腕も動くような気がした。水の中で重石のついた腕を上げるみたいに、重いけど。
でもなんだか、動かせる。少しずつ強さが増す光の方向へ。
「何寝てんの」「ほら起きて」
声が聞こえる。
「一緒に生きよう」「一緒に笑おう」
光から二つの手が伸びてくる。大きな男っぽい手と、一回り小さいやわらかな手。
暖かい。
俺の手を二人は強く掴む。痛いぐらいに。
すると優しく、二人は強く俺の腕を引く。光の方へ。
「君のいない未来なんて、考えられないから」
暖かい、暖かい。光も、二人の手も。
眼を見開いた。光の先に、必死の顔をした二人がいた。
「来い、優也!」
「おいで、優也!」




