#17-15 手を伸ばせ
「その姿になった時、普段の優也と比べて身体能力が飛躍的に向上していた。けど、熱はフレイムだった時と同じままだし、お前はそれを自覚していない。これが何を意味するか」
ガッチリと拘束して動かないようにする。的戸特製のシリンジはちゃんと刺さって、中に薬液が入ったのがわかった。高熱で揺らぐ視界の中、見開かれた赤い瞳に映る俺は、狂気に落ちた笑みを浮かべている。
どこか冷静な頭が、確かにこんなことをできるのは狂っているかもしれないなぁ、なんて笑っていた。
「お前の中にいるカビが高温になるのを避けているんだ。その高温にやられちまうから」
「なら、優也の体温をできる限り挙げて、その熱でカビを殺しちゃおうってわけ!!」
「何……なにいって、」
「優也くん」
少し離れたところからザセルが声をかける。その声こそ落ち着いているけど、優也に近づけないこと、きっと内心大焦りだろうな。すました顔してるけど、熱に充てられていることを隠しきれていないな。
「優也くん、熱を抑えなさい。これは命令です」
「がっぅ、グゥ……!できたら……もう、やってんだよ!!」
「ならばその引っ付いている二体の化け物を殺してしまいなさい!あなたのその高温であれば簡単なことでしょう!!」
「出来たらもうやってる、でもなんかこいつら死なねぇんだよ!!」
暴れるフレイムの体に縋りつく。
離さない。もう離さない!絶対!
「当たり前じゃん優也と約束したんだもん。ずっと傍にいるって。きっと大丈夫にするって!」
「忘れたなら何度でも思いださせてやる。お前の隣に、俺がいること!!」
「ぐ、……う、ぅぅうう、なんだ、頭がァァ……!?」
ゴウゴウゴウと音を立ててさらに炎は燃え上っていく。真っ黒な炎の中に、白い熱を見た。フレイムの様子もおかしい。もう少し、もう少しで!
体が悲鳴を上げている。もうこっちもあと少ししかもたないみたいだ。それでも絶対に、
この腕を、離しはしない。
「あ、ぁぁあああああっ!!?」
「優也くん!クッ、まずい……ネイチ!優也くんを回収しなさい!」
「ですがこの熱では」
「お前などいくらでも再生できます!!捨て身で行けと言っているのです!!」
「……」
ドン、と重い音。ネイチが地面を踏みしめた音。それと同時に体に重い衝撃が走る。
気が付けば宙を舞っていた。ゴロンゴロンと地面を転がって橋の端まで転がって止まった。体中やけどで刺すような痛みが走る。片目が焼かれたのか、あるいはゆであがったのか、俺の視界は完全に半分になっていた。口の中で転がした薬をかみ砕いて飲み込み、さらに注射を打つ。隣の海美ちゃんも同じように回復を入れていた。片耳がなくなっているあたり、多分まぁ、お互い色々間に合っちゃないけど。
数秒だけ息を整えて、優也のもとに走る。万一のことを考えて、最後のシリンジを構える。
数m先に優也がうずくまって頭を抑えている。ネイチが炎の中優也を連れて行こうとしているのか、腕を伸ばしていた。
渡すもんか。
風を腕にまとって、空気を裂くように振るう。飛んだ風の斬撃と、隣から飛んでくる電気をまとった巨大モニターがネイチをふっとばした。その衝撃で最後のシリンジが吹っ飛ばされてしまう。この際構ったもんか。
目を見開く。そこには見慣れた茶髪がいる。
走る。君のところまで。
あと数m。
あと数歩。
腕を伸ばす。
あと、




