#17-13 昨夜の作戦会議
『多分、明日の戦闘はどれだけ準備しても勝ちはありません』
昨日深夜──SCR本部司令部にて
『何?』
『悔しいですけど、白夜長官の言う通り、今日の二の舞に終わるのが関の山でしょう。それほどフレイムは強い。本人の身体能力がザセルによって強化されていることを抜きにしても、生物相手に熱、或いは炎ってのは普通に相性が悪い』
『え、え、じゃあどうするの?』
もしかして勝つ方法ってもう何もないの?と海美ちゃんが不安げに俺を見つめる。
ううんここで言うべきか。まぁ、あるんだけどさ。勝率の高い方法が一つ。
『狛坂、今日の戦闘の映像は残ってる?』
『はい。残ってます。出しますか?』
『いいや、それを解析してほしいんだよ。サーモグラフィかなんかで。その温度を』
『温度……?』
『なるほど。そういうことか』
どういうこと?と頭に疑問符を遺したまま狛坂と海美ちゃんを置いて映像を確認する。こういう分析で強いのは狛華ちゃんだ。カタカタとパソコンに打ち込んでいくキーボードの音が数分続くと、戦闘中の映像がサーモグラフィのように画面に映し出される。
しばらく観察していて、やっぱり、と声に出た。
『優也、burst upどころか、burn upも使っていない』
映し出される特製のサーモグラフィに映る熱は、いつもより少し低いぐらいだ。
『え……あ!本当だ!確かに、戦闘の時は夢中で気が付かなかったけど。でも変だよね?だって殺そうと思うなら最初からそうすればよかったんだし!』
『いたぶることが目的でも、最終的に殺すなら必ずburn upぐらいは使うだろうね。普段の優也がそうだから。でもこいつはそうしなかった。それはなぜか』
『……そうか!』
狛坂がパチン、と指をはじく。
『あまりに高温になってしまうと、優也くんの脳に寄生しているモノ自体が焼かれてしまうから!』
『そう。多分それが理由だ。だから、優也の体温をできる限りあげて脳に寄生している……あー、カビとでも呼ぶか。それを焼かせるんだ。優也自身の熱で』
『うわっすごい!あったまいい!なんか鳥肌立っちゃったかも!?』
ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶ彼女に、ううん、と眉を寄せた。
『まぁ、うん。つまり優也に体温を上げさせればいいわけなんだけど……』
『問題はどう上げさせるか、というわけだ』
まぁ、その通り。
今日の戦闘ですらこんなにぼこぼこにやられて、本人もへらへらとしていた。そんな戦闘の実力差があって、どうやって熱を上げさせるかってところが最大の問題点。
これも一つ、答えはあるんだけど……
ちら、と海美ちゃんを覗き見る。その表情は大きなガーゼに覆われて表情を読み切れなかった。
『たくさん走らせる、とか?』
『身体能力が向上した優也から逃げ切れると思う?』
『無理!!』
『だよね』
『優也くんの体温を上げる方法か……外からの爆撃はどうですか?』
ば、爆撃!?
ぎょ、と狛坂を見た。え、こいつ、涼しい顔してすごいこと言わなかった??
『ロケットランチャーであれば用意可能ですよ』
『確かに。お前達2体がフレイムを誘導し、ある程度の隙を作る。そこにぶち込めば最善だろうな』
『ロケットランチャーの衝撃をブラフに爆撃し続けて本人の体温を上げ続ければburn upを起こした時並身の体温になるかもしれません!』
うわ、なんか勢いすご……怖……
流石です。そうかな、ありがとう。と場の空気にそぐわないいささかホンワカとした二人のメインオペレーターの会話の後、白夜長官が話を続ける。
『しかし、問題はそのロケットランチャーを撃つ隙を作れるかどうかだ。さすがに数に限りがある。その限られた残弾のなかで本当に奴の体温を上げきることができるのか』
『確かに、優也さんに高速で動き回られては充てることは難しそうですね。いくら体温を上げさせることが目的で直撃を狙う必要がないといえど、全く当たらない可能性はあります』
『確かに……カビを完全に焼却するには、一時的な高温じゃなくて、ある程度持続した高温が必要になるかもしれませんよね』
『そうですね』
ロケットランチャー自体はいい案だ。これで優也の体温を上げきれればこっちの勝ち。でもそんなにうまくいくとは思えない。二の矢、三の矢が必要になる。
けど、それは。
がしがしと頭を書いた。包帯がなんだかくすぐったくて。
『ストーム』
『へぁ?』
『お前、何を企んでいる』




