#17-12 本当の狙い
「おっ、まだやんのか?あはは、助かるよ。今あったまってきたところなんだからさぁ!」
「なぁ、優也」
「あ?」
今のお前に言っても、何も伝わらないと思うけど。それでも。
いつもの調子で、いつもの笑顔で返すんだ。
「俺、お前と出会って夢のありかを見つけたんだ。何も目標とかないままふらふら歩いてさ、光莉を失って、何もなくなった。そんな俺と一緒に生きてくれて」
どんな暗闇の中でも、どれだけ冷たい世界でも、君が隣にいてくれたから。
「俺は怖くなかった。ありがとうな」
「はぁ?何言ってるのかわかんねぇよ!」
「優也!」
海美ちゃんは笑う。いつもの花が咲くような、朗らかな笑顔で優也に語り掛ける。
「私さ、優也に出会えて色んな世界を知ることができたんだよ!こんなに広くて、綺麗で、どうしようもないけど、それでも愛したいって思える世界。優也がいなかったら、何も知らないまま死んでたなぁ」
「何浸ってんだァ?あぁ、遺言ってやつか!」
「だからね、最期に優也にあげたいんだ。私が知って愛した世界を全部!」
懐から例のシリンジを取り出す。何をわけのわからないことを、と困惑するフレイムは俺と海美ちゃんを交互に見ては焦ったような様子だ。ははは、最期にかける人間の不気味さってやつ、かな?
「俺はお前の優しさを守りたい」
「私は優也のこと、信じたいよ」
「「だから」」
足に力を入れる。突風に身を包んで加速する。
同時にバチンと何かがはじけた。目にも止まらない光の矢が加速する。
「なっ……!?」
両方向から優也に飛びつく。海美ちゃんが抱きついた上から2人まとめて抱きしめた。
突然のことにフレイムはついていけていないようで、動揺して振り払いもされない。
よかった。これで最後まで一緒だ。
「なん……なんだお前ら、こんなのすぐに!」
「っ!!」「!!」
俺たちごと黒い炎に包まれる。
目が焼けたって、腕が溶けたって、絶対に離してやらないから。
「あぁぁ!?なんだ、クソ、気持ちわりぃんだよ離せ!!」
「離すもんか!!」
「離さなねぇよ、絶対!!」
「クソ、クソクソ……!!なんでこいつら振りほどけねぇ!!どうして、人間ごときに!!」
「優也、一度炎を消せ。私がそいつらを、」
「うっせぇ!!俺に指図すんな!」
「優也!奴らの目的は!!」
ここまで隠し通した目的をバラされる。
嫌な汗も炎で吹っ飛ぶ。
握りしめたシリンジを大きく振りかぶって、フレイムの体、硬い部分を避けて首に強く突き立てた。同時に海美ちゃんも首元に突き立てる。
「ヴッ!!?てめ、何を……!?」
「さぁーて、我慢比べだ、優也」
「私たちと勝負だよ!!」
「!?、!?!」
ゴオオッとより一層炎の勢いが増す。インカムは外れたのか、狛坂からの報告は聞こえなかった。さて、ここからは先の見えない我慢比べだ。
「何、体が……熱を上げ続けて……!?」
「さぁて、いつまでもつかな?」
「お前、まさか俺の体温を無理やり上げているのか!?何してんだ、自殺行為だぞ!?」
「おぉ、心配してくれんの?やっぱ優也、俺のこと大好きじゃん」
「なんっ!?」
さらに炎が周辺に広がっていく。いいぞ。的戸に作ってもらった特効薬、特別効いてくれてよかったよ。
体中の神経が擦り切れる。熱いなんて言う感覚はもうなくて、痛みすら飛び越えた。大丈夫。これで最後まで意識を保ちながら逝ける。
「何のつもりだ、俺の熱を上げたところで、お前らなんてこの炎で焼き尽くしてやるよォ!!」
「……いいのか?」
「あぁ!?」
意地悪く笑えばフレイムの顔に動揺が現れる。あれれ?こいつ、自分の弱点ってのがわかっていないのか?
なら好都合。
「なぁ優也。俺たちを殺したいのか」
「あぁ当然だ。お前らが誰だか知らないが、ザセル様に言われたなら殺すだけだァ!!」
「あはは!あぁ、そう?じゃあなんで」
ふっと笑いがこぼれた。
「最初からmortal evolutionを使わなかった?昨日の戦闘でどうしてburst upで俺たちを焼き殺さなかった!!」




