#17-11 最期に一つだけ
「!?」
離れたところからスパークの悲鳴が聞こえる。なんだ、と視線を動かすと、そこにはネイチと戦闘するスパーク。あのパワー型にスパークは不利だ。応援に入らないと!
風にのって間に入り込み、スパークをさらってネイチの振り下ろされる剛腕から間一髪逃げ切る。スパークはみぞおちを抑えているが、まだ戦える。おろして横に並び立った。そろえるようにネイチの隣にフレイムが立った。
「お前……!ぶっ殺してやる!!」
「待て優也。落ち着きなさい」
「あぁん!?てめぇ誰だ、俺に指図するつもりか!?」
「相手は何か策を弄している。昨日のように突っ込むだけではいけない」
「指図すんな!!」
案外統率はとれていない。このまま気が付かれないように押し切る!
「11班!」
ボンッ!!
「っととと、あぶねぇな。ったく、どこから飛んで来てやがる」
「外した……けどまだまだぁ!」
「スパーク焦らなっ──!?」
「優也に何をするつもりだ?」
いつの間にか跳躍していたネイチ声が真横に。ぎち……とつかまれた腕がきしむ。掴んだだけで骨にひびが入ったような感覚。ヤバイ、このままじゃ、
「隙だらけだなァ?」
「やっ───」
ば、
ゴン゛ッッ!!!
「~~~~~~ぁああ゛!!?」
フレイムの拳をもろに胸に食らう。そのまま尻尾をつかみグルンと回され壁にたたきつけられ、息をする間もなくかかと落としが落ちた。ぶちぶちと肉の焼ける匂い、血が蒸発する音。やばい、昨日の傷がまだ、
「あ゛ははははははは!!あっはっはっはっは!!おりゃあっ!!」
蹴り飛ばされ地面を転がる。全身に激痛が駆け巡り、口から大量の血がごぼっとこぼれた。だめだ。一度この状態になったら、
ふっ、と視界が陰る。視線を上げればそこには愉悦状態のフレイムが拳を振り下ろしていた。熱が肉がえぐり、血が舞う。あまりの激痛で叫び声すらでなくなった。
「やめて!」
「あぁ?」
空中から二段蹴り。躱されても負けじと着地後三段蹴りを放つ。けれど腕で簡単にガードされてしまって、あぁ、ダメだ海美ちゃん。そいつは君より近接戦闘に慣れているんだ。そんなに近づいたら。
フレイムはスパークの腕を引っ張り体を引き寄せる。まるで乱暴な社交ダンスだ。そのまま連続でボディーブローが入り、口と鼻から血があふれる。だめだ、やめろ、そんな事したら。
よろけた体に大きくふりかぶって一発。おもちゃみたいに吹っ飛んで壁に激突し、クレーターを作って止まった。スパークの姿は人間に戻りかけている。
「おいおいおいもう終わりかぁ?さっきまであんな威勢がよかったのによォ!もっと喚いて苦しんで楽しませてくれよ昨日みたいにさァ!!」
「く……そ…!」
『温度低下しています。追加爆撃を……!』
この状況じゃ難しい。俺たちも巻き込まれるだけで、あいつにとっては十分な熱にはならないだろう。
近づかれないように離れて、動き回らせてとにかくフレイムの熱をとにかく上げる。それが一番だったけれどネイチも出てくるとどうにもそうはいかなった。
地面に手をつく。そこで気が付いた。俺の手も、体も人間に戻りつつある。これじゃ、
「あれあれ?あぁもうおわりかぁ。あはは、なんだ、なんか考えていそうで大したことないんじゃん!はぁ、焦って損したぜ」
「ぐ……」
「んーー……よし、決めた。あの女、拷問でもして何たくらんでんのか聞いてやろうかな。あはは。お前に聞いても答えてくれなさそうだし、耐えそうだし。あっちだったらぎゃんぎゃん泣き喚いてくれるだろ?」
「やめろ」
「そんな怖い顔すんなよ~~はは、ま、そこで見てろ」
肩を抑えて一周させる。海美ちゃんは意識のあるものの動けない。
『こちら狛坂、救援部隊を───』
『ダメだ。ネイチにフレイム、透明化したザセルもいる。突撃命令は下せない』
『そんな、それじゃ二人は!』
『……ストーム、スパーク』
『え?』
あーー……
正常に聞こえているはずのインカムの音声がどこか遠く感じる。
いよいよ迫ってきた現実って、現実味ないなぁ。
結局こうなるのか。短い時間で色々と準備したけど、結局。
激痛の走る体。腹部の出血と重度の熱傷。次に行動すれば肉体がバラバラになってしまいそうなほどボロボロだ。文字通り皮一枚でつながっている。次を外せば動けない。これが、
これが最期だ。
「ふーー……」
「あ?なんだ?」
海美ちゃんも立ち上がり、フレイムを挟むようにして視線がかみ合う。
そうだよね。もうここで終わったって後悔はないよね。
でもどうか最期に、一つだけ。




