#17-7 世界の呼吸に抗って
「……優也は、化け物」
「……」
「化け物なんだって、そんなのわかってるよ。優也も、私も」
「俺も」
「わかってるよ。石を投げられる存在だって。でも、こんな形で……」
気道を真綿で詰められていくような感覚がした。広い世界で少しずつ、少しずつ、窒息していく。
うなだれてしまう海美ちゃんを柏木先生が支えた。
「なんで、なんで……私たち、みんなを守るために頑張ってきたのに」
「……」
「私たちがいなかったら、もっとひどいことになってたんだよ?なのにどうして、そんなひどいこと」
「海美ちゃん」
「わがってる。わかっでるよ。化け物だっでごどぐらい……!!そんな、そんなの!!私たちが化け物だって、そんなこと!!!」
「海美ちゃん」
「それでも私たちは!!!」
「海美ちゃん!」
喉が痛かった。
は、と顔が上がる。鼻水と涙でひどい顔。頬からは傷が開いたのか血が垂れている。
「海美ちゃん、落ち着いて」
「うぅ、うううぅっ」
「今更、でしょ。わかってると思うけど」
「うううぅ」
「俺たちはできることをするだけ。それだけだよ」
ひっく、ひっく、と停まっていたはずの嗚咽が響く。ごめんね。俺にはこんなことしかできなくて。本当ならもっと、ちゃんと。
ここに優也がいてくれたら、そう願わずにはいられなかった。まぁ、いないんだけど。
……優也がいたら、今の映像に何を言っていたんだろう。何も言わなさそうだな、きっと。
でもこんな世界、ふざけんなって思う気持ちはわかる。もとより世界の人々を救うなんて大げさな目的があるわけじゃないから、そっちがその気でも、あぁそうですかぐらいの気持ちでしかないけれど。
でも、
あんなに優しい優也に酷い言葉を浴びせるのも、
目の前の女の子にこんな辛い思いをさせたのも、
「……許せないな」
「え?」
「龍斗、あんた」
「俺もね、海美ちゃんと同じ気持ち。許せないよな、こんな世界」
「龍斗、落ち着きな」
「いや別に、何も世界が嫌いだから壊してやるとか、そういう事じゃないですよ」
こんなどうしようもない仕方ない世界、壊したってきっと憂さは張れないし。
でも世界が二人を殺すっていうのなら、俺が世界の呼吸にあらがってみせる。
ごめん優也。
俺、やっぱお前みたいに優しくなれねぇ。
「ただ一つ、やってやろうと思うんです」
「一つ?」
「龍斗、アンタ何をするつもりだい?」
「世界のいう通りただ死んでやるつもりもないってことですよ。柏木先生、ここに的戸を呼んでもいいですか?」
「別に構わないが……」
「司令部が、世界が優也を殺せって言うなら」
不安そうな海美ちゃんに、いつも通りの笑顔を。
「俺たちで心中してやる」




