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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#15 Before the flame
230/231

#15-6 「ごめんなさい」は言えないまま

 

「許してくれ。優也」


「っ……」


 会いたい。

 会いたい、会いたい。


 扉に引っ掛けていた棒を外し、鍵を開く。

 ガラガラと引き戸をゆっくり開くと、そこには膝をついて綺麗なスーツをぐしゃぐしゃにして、目元は真っ赤、涙と鼻水で顔をぐずぐずにした父さんがいた。俺がズビっと鼻を啜ると、ふふっと軽く笑って、そのまま俺を強く抱きしめた。


「あぁ……あったかいなぁ……」


「んぐ……とうさん、つよい、」


「ふふ、ごめんごめん。でも今だけ。今だけ……」


 ぎゅうっと力はより強くなる。痛い。痛いけど、仕方ないなぁ。泣いてる父さんのためだもん。しばらくこのままで。


「ふは、ズッ……優也は優しいな」


「優しい?」


「優しい。優しい子だ。流石は優未の子だ。あぁ、そういえば優也にまだ話したことなかったか。優也は、どうして優也って名前なのか」


 名前の由来。聞いたことなかった。


「なんで、おれ、優也っていうの」


「それはね、とにかく優しい子でいて欲しいから。私と優未の────父さんと母さんの願いだ」


「優しい、子」


「優しい母さんの名前から文字をとって、優しい子に育ちますようにって。優也が産まれた時に2人でそう名前を送ったんだよ。そしてまっすぐ育ってくれて、こんな優しい子になった。優未もきっと、喜んでいる」


「……喜んでる?」


「あぁ。もちろん。生まれてきてくれてありがとう。生きていてくれてありがとう、優也」


 ポンポン、と背中を優しく叩かれた。じわり、とさっきまでとは違う涙が溢れる。


「父さん、俺、」


 優しくなんかないよ。


「俺、だって、」


 さっき大っ嫌いって言っちゃったんだ。

 思ってない。思ってないんだそんなこと。でも、


「ゆっくり息を吸って。大丈夫。父さんはずっと優也と一緒にいるから」


「ぅ、」


「大丈夫、大丈夫。落ち着いて」


 ポン、ポン、とあやすようなリズム。昔から変わらない。俺が泣いてたり、眠れなくて不安になったりしたときのリズム。


 謝らないと。さっき、大っ嫌いなんて言ってごめんなさいって、言わないと。だってだって大好きなんだから。


 顔を上げる。父さんは優しく俺を見つめていた。


「父さん、俺────!」




 ヴーーーーーッ!!

 ヴーーーーーッ!!

 ヴーーーーーッ!!!




「へっ!?」「っ!?」



 突然サイレンが鳴り響く。キンキンと耳をつんざいて、頭の奥まで響いてきた。咄嗟に耳をふさぐ。


「バイオハザード……!?何事だ!?」


 すぐそばの父さんの声だけはかろうじて聞こえる。バイオハザード?え、ゲームの話?


 なぜか廊下の証明が落ちて、天井に設置された赤いサイレンランプがぐるぐると回る。怖い。何、何が起こっているの。


 父さんの腕をぎゅっと強く掴む。ハッとしたように父さんは俺を抱え直し、立ち上がった。


「どうする……このままでは……!」


「父さん」


「……大丈夫だ優也。離れないからな」


 父さんは動かない。どうにかする策を考えているみたいだ。

 ……何か異常事態なのかな。それなら父さんが行かないとなにもできないのかもしれない。けど、俺がいるからいけないのかな。


 ぎゅっと拳を握る。


 怖いけど、父さんのこと邪魔したくない。


「父さん、行って」


「え、」


「行っていいよ。俺、ここにいるから」


「そんなことを言わないでくれ。もう私は、」


「行ってよ」


 恐怖は飲み込んだ。大丈夫。大丈夫。

 父さんが俺のこと、大事にしてくれてるって知ってる今なら。


「行って、解決して、戻ってきて」


「!」


「父さんにしかできないことかもしれないし。でも、俺のこと絶対迎えに来てね」


「優也」


「俺はここで待ってるから。この部屋の中で、鍵かけて、突っ張り棒もする」


「……」


 絶対に迎えに来てくれる。大丈夫。

 慣れないけど、笑って見せた。大丈夫だって伝わってくれ。


「……敵わないな。わかった。絶対にここにいるんだ。いいね」


「うん。わかってる」


「すぐに戻る。絶対に迎えに行くから。約束だ」


 父さんは俺を下して部屋に入れる。部屋を出る直前、俺のことをもう一度強く強く抱きしめた後、最後に髪にキスをして微笑んで出ていった。


 部屋の中は暗い。電気がつかなくなってしまったからだ。よく見れば、ホワイトボードとか脚立とか、簡単な資材置き場らしい。ドアの傍にいるのはなんだか怖くって、なるべく部屋の奥に逃げ込んだ。


 体を小さく縮こませて、時が経つのを待つ。大丈夫。父さんはすぐに戻ってくるって言ってた。大丈夫。大丈夫。外で何か物音がするけど、よくわからなかった。サイレンの音だけが鮮明に記憶にこびりついていく。


 いくら待ったのかわからない。体育座りでうつむいて、ただじっと待っていた。


 その時


「優也」


「……?」


「優也、聞こえるかい?」


 この、声。


「父さん!?」


 うずくまっていた部屋の奥から扉へ向かう。父さんだ。約束通り、父さんが迎えに来てくれた!


「父さん、父さんだよね!」


「あぁ、父さんだよ。さぁ優也、扉を開けてくれ」


「うん!…………?」


 なんか、なんだろう。


 扉の鍵に賭けた手が止まる。違和感。何か変だ。

 声は絶対父さんのもの。でも口調が変だ。こんな話し方だったっけ。


「優也?開けてくれないのかい?急いでいるんだ」


「あ、えぁ、うん。今、開けるから」


 きっと俺の勘違いだ。それになんかヤバイ状況だし、父さんも冷静じゃないのかも。

 扉の鍵を開けて、突っ張り棒を外して、扉を開く。


「とうさ────────」



 ガタガタガタガタッビタンッ!!



「────────っ!?!?」


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