#13-10 嵐巻先生と優也くん
キーンコーンカーンコーン
授業が終わり、教室にもどって約1時間の昼休みになる。そういえば、みなほは部活行くっていってたな。1人で過ごすのもあれだし、案内もかねて優也のこと誘っちゃお。
隣の席の彼は少し止まって考え事をしている。その横顔。どこか見覚えのある横の髪の跳ねた髪。あの微笑み方。
理由はよくわからないけど、なんだか、鮫島の名前につられるような悪い人には見えないし。
声をかけようとすると、優也はキョロキョロと周りを見渡して不思議そうな顔をしている。どうしたんだろう?
「給食係とか決めてるの?」
「給食……?やだなぁ優也、小学校じゃないんだから。購買行って買ってくるか、食堂で食べるかだよ」
「……そういえばそうだった。じゃ、行ってくる」
「あちょ、待って!」
足早に教室を後にしようとする優也を止める。
「せっかくだし、案内も兼ねて一緒に購買いこうよ。友達が昼休み部活に行っちゃって1人じゃ寂しいんだ」
「あぁ、別にいいけど」
「待ってて。お財布持ってくる」
「え、あ、購買ってそうか。財布が必要か…」
え?さ、財布無しで購買いこうとしてたの?
疑問が頭を掠める。そんなことある?ま、まぁ聞き間違えかな……?
「お待たせー!じゃいこう!」
「あ、購買っていくらくらい?」
「え?うーん何食べるかによるけど、千円あれば大抵は?」
「あ、そんなもんか。わかった。ありがと」
「……ふふ」
何だか、ちょっともたついてて可笑しいな。優也って何でもスマートにこなしちゃいそうな雰囲気あったから、意外で。
「な、なに?」
「なんか優也、学校初心者!って感じ。何か初々しい感じして可愛いなって」
「……………」
なんとも言い難い表情になった優也に、教室を外へ出るよう促す。
休み時間で次第に騒がしくなる教室から廊下に出た。ちょうどいい温度の風がふわりと窓から入った。んー、いい風。さわさわ聞こえる木々の揺れる音が心地よくて、春っていい季節だなぁ。
隣で優也がため息をつく。あれ、なんか嫌なことあったかな。もしかしてさっきのイジリよくなかった?だとしたら申し訳ないな……とにかく空気変えないと。
「ねぇねぇ聞いてもいいかな。嵐巻先生って婚約者さんいるって話だったけど、優也は会ったことある?」
「ん〜……まぁあるんだけど、昔の話だからちゃんとは覚えてないな」
「え!そんな昔からの仲なの?」
「あーいや、俺は昔小さいころ遊んでもらったことがあるだけでほとんど覚えてない」
「なるほどね。どう?お兄さんが結婚するの」
「………なんとも」
ふぅん、と呟きながらじっと優也の顔を見つめる。んん……やっぱり近づいてもあんまり似てないように見えるけどなぁ。そういうもの?
「な、何?」
「んーなんか、嵐巻先生とはそんな似てないよなぁって。兄弟なのに」
「あの人はその、母似なんだよ。俺は父似」
「そんな変わる……?ま、いっか!」
「よ!優也に鮫島ちゃん!元気にやってる?」
「あ」「噂をすればだね」
話していると、前から歩いて来た嵐巻先生に会う。ちら、とその後ろを見ると遠巻きだが何人もの女子生徒が見ていてキャーキャーと楽しそうだ。初日でこれか。確かにすごいかっこいい人だけど、婚約者いるって話じゃなかったっけ??顔が良ければいいの??
「今から昼ご飯?いってらっしゃい」
「嵐巻先生はご飯食べないんですか?」
「いやー来て初日はやること多くてさ。時間あるかねぇ。あ、そうだ優也」
そういうと嵐巻先生は優也の制服の胸ポケットにペンを挿す。
「忘れもんだぞ。生物室に落ちてた。気をつけろ〜」
「……はい。ありがとうございます」
「敬語なの?まぁ、ここじゃお兄ちゃんじゃなくて先生だもんね」
「そうそう。ここじゃね。じゃ、俺は仕事あるから、ごゆっくり〜」
ワシワシと一瞬俺の頭を撫でてからヒラヒラと手を振って後にする龍斗さん。その後を追うようにゾロゾロと女子生徒がついていく。なんだか大名行列みたい。
向かう先は嵐巻先生とは反対方向。横に並んで止まっていた足を前へ進める。
「いいなぁお兄ちゃんが先生とか。もしかしてテストのこと聞けたり?」
「しないな。あの人ああ見えて、勉強見るの厳しいんだよね。元研究者だし」
「ふーん。嵐巻先生って元研究者なんだ」
「……海美は1人っ子?」




