#13-9 生物の時間、気になる転校生
時は少しすすんで、午前中最後、お昼前の授業。
「今日から少しの間この学校でお世話になる嵐巻龍斗です。担当科目は生物。よろしくね。そこの優也は弟なんだけど、人見知りだからいろいろちょっかいかけてやってくれると嬉しいな」
「イケメン……」
「イケメンお兄ちゃんキタコレ」
「顔良!?背高!?足長!?」
「女子ウルセェ」
「はい!先生は恋人いますか!?」
「婚約者がいるよ」
「「「「キャアアアアアアア!?!?」」」」
生物室で生物の授業、なんだけど。
なるほど確かにイケメンだ。すごい美形。だけど授業で騒ぐのはちょっと違くない??
「喜ぶんだ……はい。じゃあ自己紹介はこんなところで、早速授業に入ろうか!」
ジャケットなしのスーツに上から白衣を着た嵐巻先生が黒板に書いていく。
「じゃあ教科書の63ページ開いて〜今日は遺伝子についてやるよ」
内容は前回の続きだ。遺伝についてなんか色々用語とかあるけど、苦手なんだよね。何がどう違うのか区別がつかないって言うか……
一部教科書の内容もノートにメモを取っておくと、ふと隣で少しも動かない影が視界に入る。少し視線を上げてみれば、隣には嵐巻くんがいた。クルクルと手持ち無沙汰にペンを回しながら、嵐巻先生をぼーっと見つめている。
もしかして、教科書とか忘れちゃったのかな。なら、
「……ねぇ」
「え」
「はいこれ。一緒に見よ?」
「あ、えと、あ、ありがとうございます」
教科書を自分と嵐巻くんの間に置く。……ていうか、何で敬語?同い年だよね?
嵐巻くんって呼び方もあれかな。嵐巻先生もいるんだし。
「いいのいいの。まだ初日じゃ何かと大変でしょ?困ったことあったら頼ってね」
「ありがとうございます」
「敬語じゃなくていいよタメだしさ。ね、優也って呼んでもいいかな。嵐巻先生と苗字一緒だし、なんだか呼びづらくて」
「大丈夫。いろいろ配慮してくれてありがとう鮫島さん」
「海美でいいよ。苗字で呼ばれるの好きじゃないし。泳ぐ海に美しいを付けて海美ね。よろしく」
教科書に視線を戻す。前までいてくれた生物の先生は大学生が習うような内容も扱ってたから、教科書にないことも多いんだよなぁ。ついていけてるかな、優也。
ちら、と優也の顔を覗き見ると、私たちと向かい合うように座っている前にいる男子を見てはうげぇと言いたげな顔をしている。ん?なんかあった?
「...…てことで、じゃあこの部分を答えてもらおうかな〜この人に!」
ふと前から聞こえてくる楽しげな声に前を見れば、嵐巻先生が適当な箱の中に手を突っ込みクジを引いている。あれで答える人決めるんだ。なんだか面白そう!
「じゃん!今日はこの人出席番号42番!……って優也じゃん!」
「...…は?」
「いや〜馴染めてる?ちゃんとついて来れてるかチェックだ。さぁこの部分、何が入る?」
兄弟勝負だ!と面白がる声が一気に上がる。兄弟勝負……っていうけど、兄弟……?
あんまり似ていないような気がするんだけど。私だけ?
あっ、ていうかこの問題、前回の授業聞いてないとわからないかも!
先生にバレないように優也の背中をトントンと叩く。
「優也大丈夫?これ前回の内容も入ってるし…私が代わりに答えようか?」
「いや、大丈夫。……タンパク質の検出、ウエスタンブロッティング」
「お、正解!やるな〜」
え、すごい!正解だ!教科書載ってないし、大学でやる内容なのに!
ニコニコと褒めるように嵐巻先生が手を叩く。がやがや騒ぐ周りがほどほどに落ち着くと、そのまま授業が続いていった。
「よくわかったね...…あれ結構意地悪な質問だったのに」
「まぁ、うん。なんか知ってた」
なんか知ってる……ことある??
「すごいね。もしかして元々いた高校って頭いいの?」
「そこそこだよ……そこそこ」
そこそこ……なのかなぁ??
キーンコーンカーンコーン




