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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#13 Before the spark
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#13-4 シャークガールの約束と非常事態


「なんなの一体……このパーティは……」


「おねえちゃん、ゆうやは?」


「えぇ?うぅん……なんか怒っちゃったね。とりあえず、会が始まるまで適当に食べよっか」


 私も良くわからないことばっかりで、なんだか変な頭の使い方をしてしまったような気がして、なんだかおなかがすいてしまった。周囲には話しかけてきそうな大人たちがちらほらいるような気がするけど、立食パーティだし、少しつまんだっていいでしょ。


 並べられた料理を皿に取り、海美の苦手な野菜だけ抜いて渡す。いつもなら食べさせるけど、このパーティ会場で騒がれたら困っちゃうし。


「やった、ミニハンバーグだ!」


「余ったらお姉ちゃんに頂戴ね。あ、フライドポテトもあるんだ。食べる?」


「食べる!でも少しだけ。他のご飯も食べたい!」


「はいはい」


 食事をとって、たまに二人のもとへ来る大人への対応をして。

 そうして30分は経ったころ。ふいに海美が愛海の服の袖をクイっと引っ張る。


「お姉ちゃん、トイレ行きたい」


「ん?あぁ、わかった。じゃあ一回会場の外に出よっか」


 本来であればこの時間は孤虎教授の受賞記念演説なるものがあるらしいが、なぜかその受賞者本人が不在のため、パーティ会場には皆そろっているというのに待ちぼうけを食らっている状態だった。少し席を外すくらい問題ないだろう。そう二人は連れ添って会場を後にし、会場近くにあった女性用トイレに入る。


「ねぇお姉ちゃん、今日帰ったらまたお話してよ!」


「お話?」


「シャークガールのお話!」


 あぁ、あれか。愛海は合点がいく。


 少し前に海美の寝つきが悪い時があった。眠れないことに不安になってさらに眠れなくなる悪循環で半泣きになっていた海美に読み聞かせた話。それも、愛海オリジナルの話が聞きたいというわがままが返ってきたのだ。


 そこで作ったのが『シャーク・ガール』という話。初めは何も知らない可哀想で何もできない主人公の女の子が、仲間と出会い戦いを通して成長していく、というストーリーだった。


 強くて、優しくて、何があっても折れない少女。


 本当はそうありたい。シャークガールに自分を重ねているのは、愛海だけの秘密だった。


「でも帰るの多分22時とかになるよ?眠たいよ、きっと」


「んん……じゃあ明日、明日聞く!」


「うん。いいよ。その代わり今日は後もう少しだけ、頑張ろうね」


「うん!えへへ、お姉ちゃん好き!」


「……うん。私も海美が好きだよ」


 本心の裏に潜む気持ちの悪い何かは綺麗に隠して、愛海はそう笑って返した。

 数分して海美がトイレから出てくる。手を洗うときは?マルパンマンのマーチ歌う!という明るいやり取りののち、


「ちゃんと洗ったよ!」


「うん。じゃあ会場にもど────」



 ヴーーーーーッ!!

 ヴーーーーーッ!!

 ヴーーーーーッ!!!



「きゃあっ!?」「ひゃぁあっ!!?」



 突然鳴り響くのは聞いたことの無いサイレン。それはトイレを出た廊下の天井にあるスピーカーからだった。突如として耳をつんざく音量で鳴り響き、二人の心臓をぎゅっと掴み取る。


「ひっ、な、なに、怖い!!怖いよおねえちゃん!!」


「なっ……避難訓練?でもこんなブザー知らない……!!」


『バイオハザード発生。バイオハザード発生。レベル不明。至急施設から脱出してください。バイオハザード発生、バイオハザード発生、──』


「バイオハザード……って何、ゲームの話!?ゾンビ……!?」


「ゾンビって、あの怖いドロドロ!?」


「どろ……ドロかは知らないけど……でも何事なの、どうすれば……」


 その場で慌てふためくばかりで、二人はの場から動けない。愛海の脳に走ったのは、有名なゲームの影響もあり、ゾンビからっか売れなければいけないという事だった。咄嗟に出てきたトイレの中に戻り、外の様子をうかがうように頭だけ外にのぞかせている。


 サイレンは鳴り続けている。きっと訓練じゃない。本当に何かがあったのかも。

 なら子供だけでここにいるのは危険なんじゃない?


「海美、会場に戻って大人に何すればいいか聞こう」


「えぇっ!?や、やだ。ここから動くの!?」


「でもここにいたら何が起こるかわからないし」


「ううぅっ、怖い、廊下暗い!」


「~~~~っ、わかった。わかったよ。じゃあお姉ちゃんが抱っこして連れて行ってあげる。海美は目をつぶってるだけでいいから!」


「……わかった」


 ぎゅうっという音が聞こえてきそうなほど強く目をつむった海美を愛海は抱き上げる。あぁ、昔と違って重くなったなぁ、なんて場違いな冷静さが脳裏によぎった。


 そのまま会場の方へ駆け足で戻る。何故か暗くなった廊下は愛海の恐怖心を煽りたてた。怖い。さっきまでそんなに暗くなかったのに、サイレンの赤い警報を際立たせるためなのか?それとも停電?サイレンは鳴ってるのに?とにかく怖い、怖い、怖い。恐怖のせいで考えはまとまらないままだ。でもとにかく前に進まないと!



「うわぁあああああああああっ!?」



「!!」


「きゃあっ!なに、どうしたのお姉ちゃん!?」


「シッ、静かに!!」


 海美を抱えたまま、悲鳴が聞こえてきた会場の方をみやる。嫌な予感がする。何か、すごく嫌な予感が。その不可解な感覚が閉じた扉を開く手を止めてしまう。


 かといって、ここでできることなんてない。今できることといえば扉を慎重に開くしか。


 扉の取手に手をかける。ゆっくりと音を立てないように、少しずつ少しずつ開いた。


 その隙間から中を覗き込む。


「っ!!」


 その中は、


「だっ誰が助けてくれ!!誰かああぁああ゛あ゛あ゛アアァアアアアアァアアァア!?!?」


「いやぁああああああああだ!!がらだが、からだが溶けててってぇっ……すけ、たす……………」


「何なんだよ!やめろ、近づくな、来るなっ!来るな来るな来るなぁァァアアアアアアァアアァッッ!?」


 化け物と、化け物に襲われる人間。


 まるで地獄を顕現したような有様で。



「ふっ、ふふふふ、あははははははは!」



 その中心で1人、舞台を間違えた女性が悲鳴の合唱をその身に受けながら高らかに笑う。


 黒のレースドレスがくるくるとその場で回る葛花の動きに合わせて可憐に揺れた。ピッタリと体を覆うドレスは植物の蔦を思わせ、顔の半分は毒毒しい紫の花に覆われている。


 けれどその声は確かに聞き覚えがあった。


「くずはな、さん……?」


「さぁ人類よ、今こそ進化の時です!地球のために、その身を捧げなさい!!」


 葛花の声に呼応するかのように化け物たちは雄叫びをあげ、逃げ惑う生き残りの人間にさらに襲いかかった。血飛沫が舞い、肉が飛ぶ。


 扉の隙間から見える地獄に、咄嗟に海美を下ろし、その場に吐き出した。


「うぇええっ!!」


「ひゃっ!?お、お姉ちゃん大丈夫!?」


「はーっ、はーっ、はーっ、あぁ、ぐっ、ゲホゲホッ!!」


「お、おねえちゃ、大丈夫?大丈夫!?」



 ガチャ、と扉が開く音と共に差し込む光が愛海と海美を照らす。



「あら、ここにいらっしゃったのですね」




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