#12.5-4 相棒がいい
「優也、平気か?」
「だいじょぅ……れす……」
「呂律も怪しいな?ったく、まだ3杯だろ。相変わらず弱いな」
ま、それを狙ったんだけどさ。
ほくそ笑む龍斗さん。
ねらったんだ?って、どういうこと?
回らない頭で考える。わからない。なんで?
「最近優也が夜寝れてなさそうだって聞いたからさ、柏木先生から。いやぁ、スーパードクターには隠し事できねえなぁ優也?」
「……?」
「全部片しとくから寝てろ。最近特に寝不足なんだろ」
よっこらしょ、とおっさんくさい掛け声で立ち上がり俺の脇の下に腕を通して無理やり立ち上がらせられる。うわ、やばいめちゃくちゃふわっとする。気持ち悪いとかはないけど、目を瞑ったら今にも眠れそうだ。
肩を組むような形で引きづられていくと洗面台。シャーと水が勢いよく出されてコップに水が溜まっていく。それを口元にグイ、と当てられた。
「んぇ?」
「口すすいで。飲むなよ」
「のまねぇ、よ」
水を口に含んで、すすいで、吐き出す。3回ほど繰り返すと水道は止められて、今度は歯ブラシが突っ込まれた。習慣的な流れで歯ブラシを掴んで歯を磨き、濯ぎ終わったらまた肩を組んで部屋へと戻される。けれど戻る先は座っていた床のクッションではなく部屋の端にあるベッドだった。
掛け布団を適当に剥がしたところへ乱暴にボフッと落とされる。変に投げられた。うまく着地できなかった。
「痛ぇ」
「いいからほら横になれって」
「仕事……」
「いいからもう寝とけって」
もうそんな時間かと部屋にかけられた時計が示すのは22時すぎ。早い。早すぎる。まだ寝ちゃいけない。起きないと。そう思っても体は鉛のように重く全く動かない。体がベッドに沈んで掛け布団がかけられて、程よい温かさに包まれもう視界がグラグラして危うい。
龍斗さんはそんな俺を覗き込み苦笑いを浮かべた。
「全く手のかかる。大丈夫か〜?しっかりしろリーダー」
「リーダー……」
「なんだよ変な顔して、我らがSCR特殊戦闘部のリーダー様?間違えじゃないだろ?」
龍斗さんは困ったような顔をした。俺の言葉の続きを待っている。
確かに、何も間違えじゃない。
俺はリーダーだし。
そうだけど、でもちがくて
「……ぉう、」
「ん?」
ずっと前にありきたりなドラマで聞いたその言葉。
どっちが上とか下とか、前とか後ろとかじゃなくて
隣に並び立つ、ずっと憧れだったその存在。
「相棒……が、いい」
「え?」
「相棒がいい。隣にいるから」
少し酒で焼けた小さな声。眠気を引きずって重く間延びした言葉だけど伝わったかな。
歪む視界の中で見えた。
驚いたように一瞬大きく目を見開いた後、貴方はくしゃっと笑う。
「………っくくく…ふふ……ふふふ」
「なぁにがおかしいんだよ」
「いや全然?……ふふふ、そうだな。相棒。じゃあ一つ仕事頼んでいい?」
仕事……確かに、仕事しないと。
あれ?でもおれ、何するんだっけ……?
「りゅーとさん、おれ、」
「体調管理も立派な仕事だ。今日は寝て休むのが仕事。な?」
「りゅ、……ぅ、」
ああそっか。俺は今寝ないといけないんだ。
目を瞑れば視界はあっという間に暗闇に変わり、意識が起きているのか起きていないのか境界が曖昧になっていく。
「おやすみ、相棒」
嬉しそうな、すこしだけ楽しそうな?
そんな龍斗さんの声。
いつもはこの状態で2時間は眠れないのに、今だけは不思議とテレビの電源が落ちたようにストンと眠りについた。




