#12-15 あなたの居る場所
龍が吼える
「俺はお前みたいに優しくなれない!!」
右手の大きな鉤爪が優也の胸を狙って鈍く光る。何者にも遮られることもなく、それはまっすぐと吸い込まれるように伸び、
「……ぅ、ぐ、ゲボッ」
「え?」
「あ、ぅ゛………」
鮮やかな赤が花のように散る。遅れてぼたぼたと音を立てながら地面へと流れ出ていく。
「なんで」
「ゲホゲホゲホッ、はっ、ぁ……」
「なんで避けないんだよ!?」
鉤爪が優也の胸に突き刺さる。優也は避けることはおろか腕で防御もせず、ただ龍斗の鉤爪をその胸で受け止めていた。体がダメージに耐えきれず少しずつ人間の体へと戻っていく。
龍斗は慌てて止血しようと爪を引き抜こうとする。が、優也自身の手でそれを阻まれた。焦りと驚きで龍斗は固まる。
「おれ、ゲホッゲホゲホッ、は、」
「おい放せ!何やっ────!?」
「……優しくない、ゲホッ、です」
ぼたぼたと流れていく赤と反対に青くなっていく伏せた顔。眉を寄せヒューヒューと息を荒げながら胸に刺さる爪を優也はグッと掴む。
やっと捕まえた。何があっても離れてやらない。離してなんかやらないから、絶対に。
「俺は優しくなんてない。こんなに苦しむアンタのことを見逃してやれないぐらいに、自分勝手なんです。……ゲホッ……偉そうに言っといて多分俺も同じことをする。父さんを苦しめても周りを傷つけてでもきっと自分のエゴを通す」
「………」
「でももしそうなったら、その時は」
眉が下がって柔らかく細められた、優しい笑みが龍斗に向けられる。
「アンタが止めてくれるって信じてる」
「……俺が?」
「俺は信じる。アンタなら絶対そうするって。アンタなら絶対、俺の未来を変えてくれる。だから龍斗さんも俺を信じてください」
「信じるってなんだよ、何を信じろって」
「俺が絶対未来を変えるって。
俺は光莉さんにはなれないし、過去のアンタだけの居場所は無くなったのかもしれない……だけど!」
突然優也が掴んだ龍斗の爪に熱をかける。優しい笑みから一転し固い決意の表情。あなたの隣にずっとこの熱があっただろうと気づかせるように。光を失った真っ暗な彼の心に灯火を灯すように、熱を伝えていく。
爪はその熱に負けることなく温度を上げていき白く光った。
「過去は変えられなくたって、今ここで未来は変えられる!アンタが想像する最悪な未来なんて俺が変えてやるし、悪夢なんて何度だって焼き切ってやる!!」
もう片方の手で龍斗の首元を掴み、赤と青の瞳が交錯する。
「居場所が欲しいって言うなら俺が隣にいてやる、俺が龍斗さんの居場所になってやる!!だから!!」
手で掴んでいた爪を自身の胸から一気に引き抜き、解放されたその右手と優也の左手を合わせ、上からシリンジの針で貫通させる。
Burn up the mutation!
「俺を───未来を信じろ!!!」




