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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#12 あなたの居る場所
163/197

#12-9 下の子トリオのお散歩

 

「狛坂も姉がいるんだっけ?」


「そうです。姉と妹がいます」



 同日───SCR本部内通路にて



 追い出されて中にも入れなそうなので(精神的にも)狛坂と外で散歩することにして10分ほど。話はお互いの家族の話だった。


「俺も姉からの圧力すごくて。でも妹も私に従えのわがまま大臣で大変でした」


「間っ子って何かと大変そうだな」


「もう本当に……龍斗さんのお姉さんも圧力強めな感じでしたね」


「なんか今日は暴力すごかったな。10年ぶりだからか?」


「連絡無視し続けたせいじゃないですか。稀に返したと思ったらそっけないことばかり」


「メール見るなよぉ変態〜」


「これが仕事なもんで」


 狛坂は俺たちが外部と関わる際の窓口だ。当然メールの内容の監査も入る。そんな状態で何を言えって言うんだ。まぁ見られていなかったとしても同じ未来だっただろうけど。


「今頃優也、泡吹いてないといいな」


「案外あり得る未来なのが嫌ですね」


「想像し得るのがもっと嫌だけどな」



「あ!龍斗さんいた!」



 明るい声に驚き振り返ると、そこにはぴょんと嬉しそうに跳ねて俺のところへ駆けてくる海美ちゃんがいた。あれ?優也と一緒にいなかったっけ?もしかして追い出されちゃったかな?


「海美ちゃん、どうしたの?」


「さっきまで優也くんといたよね?」


「あ、そ、外でてけって感じだった。用事あるだろって」


「なんかしちゃった?」


「してないよ」


「わかった。なんか言っちゃったんだ」


「い、い、い、……言ってないよ!?」


 狛坂が面白がるような調子で聞くとズバリ図星だったのか声が上擦り視線が全く合わなくなってしまう。わかりやすくて結構だね。


 となるとさらに優也のことが心配だ。あの人結構話が嫌な方向に上手いから、下手に乗せられないといいけど。帰りに医療部によって頭痛薬でももらってこようか。いやまて、胃薬の方がいいか?


「じゃあ追い出された者同士、散歩でもして待とうか。何かあるわけでもないし」


「賛成!狛坂さんも一緒にいこうよ」


「いいね。ぶらり散歩旅に同行させてもらいますよ」


 業務は?と聞くと今は狛華さんが常駐しているので、とのことだった。別に緊急案件もないなら問題ない。そう3人で適当に歩き始める。


「海美ちゃんもお姉さんいるし、姉いる3人組だね」


「下の子トリオってことだね!」


「うわ本当だ。すごい偶然」


「狛坂さんのお姉さんってどんな感じなの?知りたい!」


 腕を組み、うーんと狛坂は唸る。


「どんな感じかぁ。瑠璃華さんとは違って華があるわけじゃなくて、でも静かに圧をかけてくる、かな?」


「圧……?」


「昔あったのは間違えて妹が姉の上着着てったことがあって、それを家に俺しかいない時にぼそっと『あれ私のなんだけど、アイツ着ていきやがった』って。俺に聞こえるように。でも俺に言っていない風に」


「「うわぁ」」


「静かに家の内圧高めていってある時に爆発するんだよね。安寧の時間は2人でゲームしてる時とかショッピングに出かけた時とかだけだよ」


「すごい、間っ子極めてる」


「極めすぎて長男なのに次男って言われるからね」


「あぁ……下の子印象強い……」


「俺の姉はこんな感じ。龍斗さんは……」


 言葉が濁る。あはは、と海美ちゃんも苦笑いだ。……はい。


「ご存知の通りあんな感じ。我がとにかく強くてね。全てをあの豪快で雑な性格で乗り切るかと思ったら、案外頭が回るから細かな立ち回りもする。マジで敵う気がしない」


「でも、龍斗さんがここにいる間よく連絡してくれてたんでしょ?優しいお姉さんなんだね」


「心配症なんだよ。母親譲りの」


「龍斗さんもだしね」


 え、俺?そう驚くと狛坂はそりゃそうでしょうという顔で返す。


「優也くんのこと昔からよく気にしてるって聞きました。白夜長官から」


「あの人から!?……や、まぁ。子供だし、大人が守るもんだろ」


「えぇ?優也は子供じゃないよ。そりゃちょっと子供っぽいところはあっても大人でしょ?」


「いやいや20はまだ全然子供だよ」


 数字は増えてしまって体は大きくなって、けれど子供っぽい考え方に変わりはないだろう。そもそも19と20で何が変わったっていうんだ。まだ優也は子供だ。


「じゃあ龍斗さんは優也が大人になったら心配しないの?」


「それは別だよ。長い仲なんだし」


「それって優也くんが心配なのであって、こどもだから心配しているわけじゃないんじゃ?」


「いやいや、今はまだ子供だから心配なんだよ」


「あーもう!この際はっきりいうけど!」


 海美ちゃんが立ち止まって一歩先に進んだ俺をまっすぐに見つめる。


「龍斗さんは優也のこと舐めすぎ!子供子供っていうけど強いし周りのことだって気にすることできる大人なんだよ!もうちょっと信じてあげて!」


「いや別に、俺は信じてないわけじゃ」


「確かに。信用してても信頼はしないって感じするよね。信じてお互いの力を用いても、信じて背中を頼ることはないような」


「……」


 何を返すか言葉に詰まったのが最も雄弁な答えだった。背中合わせに戦ったことだってあるし信じていないわけじゃ全くない。けれど無茶をしがちで前も見ずに走っていくアイツがどうにも心配で、後ろからちゃんと見てやらないといけないと思ってしまって。だから、


「もう優也くんも思っているほど子供じゃないし」


「信じてあげてよ。対等な大人として」


「………うぅん」


 返答に困ってしまった。体は大きくなったけど心に正面切ってちゃんと向き合えていなくて、ずっと子供だと思っているから。てか、10年ずっと側で見てきたのは俺だし、俺以上に優也のことわかってないでしょ。


 そんな外には出せないちょっとした意地もあって、二つ返事にわかったと明るい返事は出来なかった。


「うぅん、だって狛坂さん」


「龍斗さん、往生際が悪いです。さっさと認めて楽になりましょう」


「俺犯罪者かなんか??」


「証拠は上がってんだ!観念しろぉ!」


「お昼にカツ丼食べようか」


 また3人で歩き出す。雑多な話に笑ったり突っ込んだり。しばらく歩いていると狛坂がインカムに手を当てて眉を寄せている。


「こちら狛坂。はい、はい……え?優也くんから?はい繋いでください。………あ、はーい。今行きます」


 トントン、と2回押すとインカムの小さなランプが消灯する。優也からの連絡だろう。時間を見ると1時間したぐらいだ。そろそろ解放されたのか?


「優也くんからのSOS信号でした。かなり切羽詰まってたので急ぎます」


「切羽詰まってた?やっぱアイツ碌なことしないな」


「会話苦手男が根を上げただけじゃなくて?」


 かもしれないね、そう笑って狛坂は軽い駆け足でブレイクアウトルームの方へと走っていく。時間はお昼だし、今日は3人揃って食堂でも行こうか。なら優也を拾っていくから俺たちも小休憩室つにいこう。きっと青ざめて痛む頭か腹かを抑えている優也を拝めるし。


「……いつか、心配させたくないって言ってたなぁ」


「え?」


「10年ずっと一緒だったんでしょ。優也も大きくなったんだから、ちゃんと認めてあげてよね。────として!」


「え、今なんて────」




『至急至急!特殊戦闘部は司令部に急行せよ!!』





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