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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#12 あなたの居る場所
158/197

#12-4 突拍子もない作戦

 


「龍斗!!」



「──え?」


 突然廊下に響く凛とした女性の大きな声。その声にほぼ自分の意思とは無関係と思えるような速度で背筋をピンと伸ばす龍斗さん。


 声の方向に顔を向けると、ブレイクスペースの隣の司令室の入り口のドアの前。女性とその後ろに狛坂さんが控えている。


「アンタ!どこ行ってたのよ!!」


「え………え?なんでここに!?」


「ちょっと用があって狛坂さんに連れてきてもらったのよ。それにしてもどこにいたのよ探したじゃない!」


 カツカツとハイヒールを鳴らして龍斗さんに詰め寄る女性。スタイル抜群で身長は170ぐらいはありそうだ。それにすごく整った顔立ちに艶々の長い黒髪はウェーブがかっていて、ふわふわとした白のトップスに折れそうなぐらい細い脚にぴたりと合うジーンズのスキニー。可愛いとかじゃなくて美しいが似合う女性。


 ん?あれ?なんかちょっと待って?もしかして……


「あの………」


「何かしら?」


 チラッとこっちに顔を向けてくれる。切れ長いハッキリとした瞳、スッと通った鼻筋に触れたくなるようなふっくらした唇、そのどれもを殺さず光らせるメイク。それになりよりバランスが完璧なこの顔立ちの良さ!!まさか!?


「人違いだったら失礼なんですけど……スーパーモデルのLuriさんですか?」


「えぇ。もしかしてファンの子かしら?」


「嘘!?あっ、は、はい!!雑誌でお見かけしてからファッションショーとか見たこともあって!大好きなんです!!」


 わぁあああ!!やった!やっぱりLuriさんだ!!こんなところでお会いできるなんて夢にも思ってなかった!


 ぴょんぴょんとその場で跳ねて盛り上がる私をLuriさんはクスッと笑い、私が前で拝むように合わせていた手をぎゅっと握る


「プライベートなんだけど……そこまで嬉しそうにされちゃ無視できないわね。ありがとう。これからも応援よろしくね」


「はい!はい!!もちろん!!」


「ふふ、かわいい。こんな可愛い子に応援されるなんて私もまだまだイケるわね」


 ふわりとはにかむLuriさんはまるで天使のようだ。ランウェイでは基本カッコいいが勝るけど、雑誌とかに載るときの笑顔が『地上に舞い降りた天使』って比喩されるだけはあるよこれ!!生でみちゃったよ天使!!


 うわ〜!と興奮していると龍斗さんがため息をつく。


「で?何でここにいるわけ?避難施設に誘導されたんじゃなかった?」


「アンタがいるって聞いて会えると思って」


「はぁ。なんで?」


「10年もろくな連絡一つ寄越さないアホな息子をお母さんが心配してんのよ」


 Luriさんがフン、と打って変わって呆れた表情を向けると龍斗さんがめんどくさかったんだよ。忙しくて。と返す。避難施設?10年連絡しなかったアホな息子?10年って……コトラ事件の話?事件から龍斗さんはご両親に連絡してなかったってこと?でも何でLuriさんがそんな話を?


 そう困惑していると、Luriさんが龍斗さんの頬を片手でむにゅっと掴む



「こっちがどれだけ心配してるか分かっているのかしら?このバカな弟は!!」



「……え?おとうと……?」


「姉貴こそちゃんと連絡してんのかよ。海外飛び回ってるくせに」


「アンタと同じにしないでもらっていいかしら。こまめに連絡してるに決まってるでしょ?お母さん心配症なんだから」


 バチバチと2人の間に軽く火花が散る。え、え、えぇ!?ちょっと待ってよ!


「Luriさんが龍斗さんのお姉さん!?!?」


「あら、この子龍斗の知り合いだったの?」


「ちょっと龍斗さん言ってよ!!」


「いやぁ聞かれてなかったし」


 口を窄めてすっとボケる龍斗さん。確信犯だな!?てかお姉ちゃんがいること自体初耳だし!!それも女子なら誰もが一度は憧れるあのスーパーモデルのLuriさんがお姉さんってすごすぎるでしょ!!


 でもよく考えたら龍斗さんも初めて見た時驚いちゃうぐらいの超美人だし、こう言うところに遺伝子のつながりがあるのか。遺伝子強いなぁ……血は争えないってやつなのかなぁ……


「龍斗、この子は?」


「この子は海美ちゃん。俺の同僚」


「同僚?若いのにすごいわね。初めまして。私、龍斗の姉の嵐巻アラマキ 瑠璃華ルリカ。瑠璃華でいいよ、よろしくね」


「あ、あわ、私は鮫島 海美です!う、海美って呼んでくれると嬉しいです!!」


 ニコッと手を出され握手する。嘘でしょ!?瑠璃華さんと握手しちゃったけど!?指が細くて長くて白くて恐れ多すぎるこの手洗えないよ!そう私が1人興奮していると瑠璃華さんが狛坂さんを手招く。


「狛坂さん、例の書類ができるまで時間あるわよね?」


「はい。お待たせしてしまってすみません」


「例の書類って?」


「何?アンタ知らないの?」


 眉を顰めるその表情ですら美し……


「私達嵐巻家がなぜか特異生物から狙われてるって話があって私もアンタもお母さんも警察に保護されたんでしょ?だけど仕事だってあるからその証明書を書いてもらってるのよ。短いとは言えこの期間にどれだけの収入が取られると思ってんのよ。その補償」


「...…あ〜そうそう。そうだった。俺は元々こかの研究室で働いてるから出さなくていいんだ」


「はぁ?あぁそう。楽できていいわね研究者様は」


 フィッと瑠璃華さんが目を逸らした好きにパチっとアイコンタクトを受ける。保護?施設?研究者?瑠璃華さん、ここがどこだか知らない感じがする。どういうこと……?


 そこまで考えて、あ、そうか。と突然腑に落ちる。


 私のお姉ちゃんも優也のお父さんも、私たちの家族だから利用された。それを危惧して、龍斗さんの家族、ザセルに利用されてしまいそうな人を保護しているんだ。それも警察の名目で。それなら疑われにくいし。


 龍斗さんにウインクを返す。ホッとしたような様子の龍斗さんに対して瑠璃華さんはねぇ、と明るく声をかけた


「今時間ある?海美ちゃん」


「何だよ。海美ちゃんは忙バッッ」


「ちょっとしたティータイムでもいかがかしら」


「え、えぇと、ありますけど………」


 瑠璃華さんがノールックで龍斗さんの顔に平手打ちをかまして龍斗さんが頬を抑える。そう言えばさっきの切り傷治ってるな。治ってるけど痛いんだろうな……とりあえず何故か向いた矛先を沈めるように私が瑠璃華さんと話せばいいかな。


 瑠璃華さんは手を合わせてあざとくお願いするように微笑む。


「それと光莉さんもご一緒にできないかしら」


「えっ!?」


「橘光莉さん。同じ研究部なのよね、龍斗と。婚約の話は聞いているからぜひお話ししたくて。軽い雑談したいだけなんだけど」


「えっと……」


「急に来られても光莉が困るし緊張するだろ。やめろ」


 声が低い。視線は伏せられている。

 そっか。言ってないんだね。わかった。


 気を逸らさせるように笑顔を瑠璃華さんに向ける。


「私だけでもよければお話しさせてください!私、瑠璃華さんとお話したいです!」


「あら……でも確かに。急に婚約者の姉が来て話そうなんて怖いよね。ごめんなさい。そうしたら書類ができるまで海美ちゃんと女子会にしようかし───」



「何やってんですか?」



 龍斗さんの後ろから聞こえる声。あ、優也だ。


 手に小さなビニール袋を提げて龍斗さんの隣に立つ。すると龍斗さんの影で見えていなかったのか、瑠璃華さんをみると驚いた。そうなるよね。


「えっと…………どなたですか?」


「あら、こちらも龍斗の同僚さん?こんにちは。私、龍斗の姉の嵐巻瑠璃華です。弟がお世話になってます」


「えっ、姉って……弟!?龍斗さんお姉さんいたんですか!?」


「聞かれてなかったしね」


 数分前の自分と同じリアクション。優也も聞いてなかったんだ。こんな感じで見えてたのかな?と思うとちょっぴり恥ずかしい。


「それでそちらは?」


「あ、初めまして。俺はあらま……………」



 き、の声は微妙に潰れて続かなかった。え?アラマキ?アラマキって嵐巻?それって龍斗さんの苗字じゃ……



嵐巻優也アラマキユウヤです。地方の高校から転校してきました。今日赴任してきた嵐巻龍斗先生とは兄弟ですが、特に触れないでもらえると助かります』



 そういえば高校で自己紹介する時も苗字を偽ってた。……そっか、孤虎って言えないから。言ってしまえば何が起こるかなんて見えているから。だから外で名乗る時は龍斗さんの苗字を借りてたんだよね。


 とはいえ、この状況ちょっとまずいんじゃ?


 優也は口を閉じたけど、アラマ、までは言っちゃったし。なにしてんの本当の嵐巻家の人には兄弟設定は効かないよ!バカ!


 あそうだ、同じ苗字なんですよ〜偶然ですね〜って笑って誤魔化せばセーフか。頑張れ人見知り会話苦手男!!


「……アラマキ?」


「えっ、と……その」


 やばい瑠璃華さんがなんで?って顔してる!?負けるな優也がんば───



「俺から紹介するよ」



 すると突然、龍斗さんが優也の肩をガシッと掴む




「この子が嵐巻光莉。俺の婚約者だ。言ってなかったけどもう橘から苗字変わったんだよ」




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