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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#12 あなたの居る場所
156/197

#12-2 虎と龍の戦闘訓練

「的戸さん、もう体は平気なの?」


「うんへーき。やっとベッドから離れられたよーん」



 10月下旬某日──SCR本部特殊戦闘部活訓練室(大)



 体育館のように大きく中はグレーのコンクリートが見える空間。分厚い壁に広く縁取られたガラス窓を隔てて見えるその空間に龍斗さんと優也が対峙している。ガラス窓のこちら側はあちら側のスペースを大きくするためか狭く、私の隣には車椅子に乗った的戸さんがいてニヤニヤと私を見る。


「てか聞いたよスパークちゃん。新しい力に目覚めたんだって?」


「新しい力ってほど大袈裟じゃないけど、でもなんかできたよ」


「大袈裟さ!だって電気を通した物質を自在に操ることができるなんて特異生物特有の特別な力じゃないか!」


「えへへ、そうかな」


「そうだよ。それだからフレイムくんも先越されちゃうと思って焦ってんじゃな〜い?この訓練もさ」


 クイっと顎で指す的戸さんにつられて視線が優也にずれる。


 アースダンゴームの焼却任務から2週間。SCRは未だザセルが生き残っていると判断し、前のちょっとピリッとした雰囲気が戻ってきている。あの爆発を至近距離で受けといてどうやって生き残ったのか、よくわからないけど。


 優也といえば『ザセルを焼却できなかった役立たず』と思われまた何かコソコソ言われるんじゃないかとこわくなっちゃって、しばらく司令部にすらあまり近づこうとしなかった。


 けど別に全然そんなことなかったんだよね。私と龍斗さんが拍子抜けするぐらい、みんな仕方がないって思ってくれて、ザセルを今度こそ焼却するぞって感じ。確かに昔だったら責められてたのかもだけど、人も考え方もアップデートされるからね。色々。


 この訓練はそんな優也が龍斗さんにお願いして、戦闘訓練をつけてもらうっていう目的。どうやら実戦形式でやるみたい。……でもちょっと疑問


「この訓練ってその……変じゃない?」


「変?どうして?」


「言っちゃ悪いけど、優也に龍斗さんが訓練つけるって変じゃない?戦闘っていうなら近接やってる優也の方が強そうじゃん。あと若いし」


 ダハハハハハハ!!と膝を叩いて笑う的戸さんに言いすぎちゃったかなと罪悪感がチクリと胸を刺す。あ〜それあとで龍斗に言ってやって!きっと喜ぶよ!と満足げに笑った後人差し指を立てた。


「それじゃ1つクイズだ。フレイムくんが幼い頃、誰が彼に戦闘訓練をしたと思う?」


「その道のプロ?柔道家とか!」


「ブッブー!答えはNo!」


「え?じゃあ誰?」


「答えの前にもう1つクイズ!スパークちゃんの師匠はフレイムくんだよね。でも彼は彼で色々やることがあるリーダーであり忙しいのに彼が抜擢された。なんで?」


「仲良くなるため?」


「ブッブー!」


「えぇなんで?勿体ぶらずに教えてよ〜!」


 不満の声をあげるとそれはね、と続く。


「これから始まる訓練見てれば分かるよ」


 目が細められ不思議なくらい楽しそうに2人を見つめる的戸さんに頭を傾げる。


「ルールは変身しないこと、相手を再起不能にしないこと。勝利条件は相手を行動不能まで追い詰めること、でいい?」


「はい。お願いします」


「よーし、じゃあやるぞ」


 ポキっと龍斗さんが手の骨を鳴らす。対する優也はミューシスのついた左腕をぎゅっと握った。


「カウントいる?」


「いりません」


「あぁそう。じゃあはい、スタート」


 パン、と手を叩いた乾いた音と共にヌルッと始まる。ヌルッと始まった割にはヒリついた空気。いつも笑顔の龍斗さんは無表情で優也を見つめ、優也も珍しく口をぎゅっと結んで緊張したような表情。普段の軽口を叩き合う2人とは思えない緊張感だ。


 ゆっくり優也が龍斗さんを中心にして円を描くように動き出す。肉食動物が獲物を狙い定めてるみたい。少しずつ腰を落として体の重心を落としてる。あれ優也の癖だよね。


 そんな優也を体の向きすら変えずに視線だけで追う龍斗さん。別に何か構えることもしない。だ、大丈夫なの?私なら身構えちゃ──


「っ!?」


「わっ!」「おぉ〜〜」


 その瞬間突然跳んだ優也の蹴りが龍斗さんの頭に伸び、後少しでヒットするかと思いきや龍斗さんが腕で防御する。優也は諦めることなくすぐに着地し足を払うように低い二撃目の蹴りを放つけど、瞬発的に後ろに跳んで避けられ、さらに龍斗さんが右腕を横に一薙すると突風で吹っ飛ばされてしまう。


 でも流石優也。突然吹っ飛ばされても受け身をとって、すぐに体勢を立て直して龍斗さんに殴りかっていく。


 てか、なんというか


「は、速い!?」


 一手一手がどっちも速い!


 今も目の前で優也が目に追えないぐらいのスピードの拳を放つし、それを龍斗さんがまるで未来が見えてるみたいに簡単に避けちゃうし。すごい!私と訓練してくれてるときの優也の速度の比じゃないのに!


 優也の拳を避けながら伸びてきた右腕を龍斗さんが掴み引き寄せ、優也の気が右腕に集中したところを見て足を払う。


 すると簡単に優也は体勢を崩して床に頭を打ってしまい、右腕は掴まれたまま左腕を龍斗さんの右足で踏みつけられ、胴体は上から体重をかけられて苦しそう。龍斗さんは空いた左手で優也の首を強く掴む。


「昔からの悪癖だな。まるで成長しない」


「クソっ」


「一点に集中しないこと。前から言ってるよね?」


「その言葉、そのまま返しますよ!!」


 すると龍斗さんは驚いて突然優也から飛び退いた。よーく見ると優也に直接触れていた部分が真っ赤になってる。熱だ。それもあんな一瞬であそこまで真っ赤になるほどの。


 龍斗さんの体勢が崩れたその一瞬、キラッと横一線に何かが輝く。


「っ!?」


「チッ」


 優也の舌打ちに龍斗さんが冷や汗をかきながらニヤッと笑う。やってくれたな。と今にも言いそうな感じ。ってあれ?


「龍斗さんほっぺたが!」


「横に綺麗ぱっくり切れてるねぇ。ほらあそこ」


 そう的戸さんが指を指す先には壁に切先が刺さった小ぶりのナイフ。


 え!あれ優也が投げたの!?しかもさっき龍斗さんが身を捻って避けてたから良かったものの、もし気づくのに遅れて避けてなかったら顔のど真ん中にブッ刺さってたよ!?


「絶対の信頼かぁ。なんだか妬けちゃうね」


「焼けちゃう?」


「ほらほらまた動くよ」


 的戸さんから2人に視線を戻すとまた優也が龍斗さんに対して攻め続けてる。文字通りの熱拳を振り続け、突風で吹っ飛ばされたと思いきや壁に着地しながら刺さったままのナイフを回収し、そのまま壁を蹴って跳んで切りかかる。


 龍斗さんは避けたり防御するばかりで攻撃っぽい攻撃は全然ない。どうするつもり?このままじゃジリ貧なんじゃないの?


 回転して勢いをつけながら優也が龍斗さんの腹を蹴る。腕で守りながらもその衝撃で後ろによろけた龍斗さんに機を見た優也が一気に近づき龍斗さんに渾身の一撃を放った。これが入れば勝てる!


「決まった!?」「決まったね」


 同じように勝利を確信したのか優也はもらった!と笑う。流石にこれは龍斗さんも焦るでしょ!


 放たれた拳はまっすぐと龍斗さんに向かって──え?




「バーカ」




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