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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#11 Before the storm
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#11-14 後には退けない


 それからまた数日。検査だなんだ継続する中で、心に巣食うモヤは未だ晴れないままだ。


 どうするべきなのか、なんて俺の考えることじゃないけど。考えたところで無駄なんだけどさ。



 数日後────都内某病院にて



「はぁ……」


 証言はしっかりしたはずだ。こってり絞りだされたはずだ。あれから追加で証言を求められることもなくなったのに、どうして俺は処分されないのか。それには理由がある。


「SCR、ねぇ」


 あの女から提案があったのだ。


 検査や検証を重ねた結果、わかったのは、俺になぜか特異細胞に対する耐性があったことだ。普通の人間では数時間で死に至るはずが、俺は数週間たった今でもピンピンしている。これは俺の耐性ってやつらしい。


 それに着目して、あの女は特異細胞を持つ生物、通称特異生物に対して有効な特殊部隊を作るといい始めたのだ。特異生物と人間が戦えば感染してその人間が死んでしまう。その代わりに俺が特異生物と戦う秘密組織らしい。


 始めに聞いた時はおとぎ話でも話しているのかと耳を疑った。だけどスピーカーの向こうの女は本気の様で、俺を怪物のヒーローにしたいらしい。


「さっさと殺してくれる約束だったはずなんだけどなぁ」


 どうにも、特異生物に対する唯一無二と言ってもいい対抗手段ってわけで、俺の事を殺せなくなったらしい。俺が首を横に振ってもお構いなしだ。だけど、まぁ結局俺が動かないと話にならないわけで。あっちも困っているみたい。話は平行線。……いや別に、


「戦いたくないってわけじゃないんだよなぁ」


 戦って光莉が戻ってくるならやるよ。でも別にそういうわけじゃないし。復讐って思いもない。全然。早く死んで貴女のところへ行きたいだけなんだ。


「はぁ」


 本日何度目になるかもわからないため息がこぼれた。どうしたもんかなぁ。


 部屋にかけられた時計がさす時間は夜8時。まだまだ寝るには早い。外でも軽く散歩しようか。

 ベッドの近くにある無線機を付けて声をかける。


「あのすみません、外出てもいいですか」


『大丈夫ですよ。どうされました?』


「いや、ちょっと散歩に行こうかなって」


『承知しました。……ご気分悪くないですか?』


「全然。心配させてすみません」


『いえ。もう3か月になりますから。大変ですよね、嵐巻さんも』


「あはは、いやいや。じゃ30分くらいで戻るんで」


『後で差し入れ持っていきますね。お姉さまからです』


「あー、ありがとうございます」


 ブツ、と無線が切れた。感染のリスクがちゃんと評価されたのか、念のため通常生活環境は隔離されているものの、普通の人の出入りはできるようになったみたいだ。


 いつの間にかブルーシートははがされて、日中じゃ廊下で人とすれ違うこともある。一応人間の見た目してるけど、化け物である認識は変わらないのか、少し怯えたような目で見られるけど。軽い会話をする知人もできたぐらいだし。


 部屋から出てシンとした廊下を歩く。誰もいないな。ま、夜だしね。中庭があるからそこまで歩いていこう。


 そう歩きはじめたところで、


「……ん?」


 いつもとは違う違和感。


「開いてる……?」


 その正体は簡単だった。


 俺の隣の部屋。いつもは厳重に閉められている扉が、少しだけ開いている。


 まぁ、察するにあの子供───孤虎の息子がいる部屋なんだろうけど、いいのか?

 ちょっとした好奇心に惹かれて、チラ、と扉の隙間を覗き込む。何も見えない。当然か。


 俺と同じ部屋なんだろうけど。俺と同じ管理はされていないことは何となくわかっていた。少し仲良くなった看護師さんに聞くと、あの子はまぁ、と苦笑いが返ってくるばかりだし。犯人の疑いが強い孤虎だもんな。俺のように自由は効かないんだろう。


「……」


 犯人の息子だから、洗脳されていていつか隙をついて人間に害をなすかもしれない。


 そう聞いたことがある。


「……ちょっとだけ」


 ちょっとだけ、様子見るぐらいなら。

 別に接触禁止とは言われてないし。


 バレないぐらいちょっとならいいだろ。何もしない。うん。


 そうやって扉にかけた手が止まることはなかった。普通の病室の引き戸だったから簡単にそこは開いた。


 足音を立てないようにゆっくり近づく。ベッドはカーテンで囲まれていた。中の様子をうかがうことはできない。気づかれていないのか、特に声をかけてくることも、動く気配すらなかった。


 寝てるのか?まだ8時だぞ?

 そっと近づく。


 カーテンに移りかけた自分の影を見て足を止める。これ以上はダメだ。影でバレちまう。

 でも、ここまで近づいてもノーコメントか?本当に寝ているのか。あるいは無視されているのか。


「……」


 影は、ついにカーテンに乗り出した。

 あぁ悲しいかなこんな時に高まる好奇心。ここで止まるなと背中を押してくる。


「……あのー、」


 カーテン越しに声をかける。返事はない。


「起きて、ます?」


 謎の緊張で変に敬語を使ってしまう。返事はない。


「……」


 ここまで返事がないなら寝ているんだろう。うん。邪魔しちゃ悪いな。

 そっと退こうと思ったところで、妙なアイデアが浮かんだ。


「ま、ちょっとだけ、顔見るくらいなら」


 カーテンの端をつまんだ。何か深い理由があるわけじゃない。もしかしたら寝ているんじゃなくて、ただいないだけなのかも。あぁそうだ。もしかしたら不在なのかもしれないし。そしたらこんなバカげた自分の行動も笑い話になる。


 つまんだカーテンの端をめくる。



「────は?」



 カーテンの中にいるのは、



「な、なんだよ……これ……!?」



 ベッドに拘束されている、小さな男の子の姿だった。



 四肢は手首足首に枷がはめられていてベッドの端につながれている。鎖の短さが不自由さを雄弁に語っていた。それにひどいのは、


「ヘッドホンに、目隠し……!?なんでこんなの!」


 小さな頭に不釣り合いな見たこともない大きなヘッドホンが取り付けられている。聴覚をふさぐだけじゃない。それに目隠しも鼻が圧迫されて擦れた跡が痛々しい。なんで、なんでこんな過剰な拘束、俺には何もされていないのに、こんな!




『子供は笑顔が一番だよ』




「────っ」




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