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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#11 Before the storm
136/200

#11-5 蠢く影


 ボドンッ!



「きゃあっ!?」「〜〜っ!!」


 マジかよ!!


 上に向かう階段から"何か"の触手が降ってくる。まずい、これじゃ上にはいけない。下がるしかない!


 踏み出した足を反対に向けて階段を駆け降りる。この建物の地下は3階まで。さっきいたのが地下1階だから、降りたら地下2階になる。ここで隠れるなりして時間を稼いで、どうにか上へ上がらないと!


 一階分の階段を降りて廊下に繋がる扉を蹴り開く。この階にあるのは大型の研究資材置き場とゼミ室だ。どこかに隠れてやり過ごせれば西階段から上がれるのに……!


「龍斗、腕、大丈夫?」


「え?」


「私歩くから。龍斗の体力が」


 心配そうに俺の顔を見つめている。……もしかしてキツそうな顔しちゃったかな。あちゃー、ダメだなぁ、俺。最愛の人を不安にさせてちゃ。


 よっと、と改めて抱え直す。


「へーき。光莉軽いし」


「いやそういう問題じゃ」


「いいから、俺のこと応援してて。それだけで100万倍頑張れる」


「っ、」


「行こう。あの化け物をどうにかやり過ごさないと」


 ゼミ室の扉が並ぶ廊下を駆け足で進む。中に隠れられればよかったけど、あいにく俺たちのもつ研修生証じゃドアは開けられない。勝手に使われないように常日頃から鍵がかけられているからだ。


 廊下を進む。いつあの怪物たちが追いついてくるかわかったものじゃない。でも、


「この階じゃ隠れられるところないな……」


「ぜ、ゼミ室の中は?大きな机の下なら案外見つからないとかないかな」


「ゼミ室は俺たちのカードじゃ開けられな……」


 あ、


「先輩のカードあるじゃん!借りたやつ!」


「確かに!」


 そうだ、俺先輩にカードキー借りてるんだった!!


 胸ポケットに入れていたそれは光莉の手中へと移動する。それを電子錠にかざせばピッと高い音とともにシャーっと滑るようにして扉が自動で開いた。


「中に隠れよう」


「あぁ、そうし……」



 チャパッ



「え、」


 薄い水の跳ねる音。同時に冷感。


 足元を見ると水が地面を侵食している。なんで、いやそんなことより、



 眼前で蠢く影はなんだ。



「龍斗、上!!」


「なっ!?」


 反射的に後ろに飛び退く。同時に俺のいた地面が抉れた。その蠢く影から伸びる腕によって。


 それは質感と色から凡そ人間の手だということはわかる。が、俺の知っている人間の手じゃない。指が10本ある。両手じゃない。片手に10本の指がある。手のひらにも手の甲にも生えて、うねうねと動いている。


 扉とは反対側の壁に背をつく。


「なんだよ、なんなんだよ……!?」


「ひっ、あっ、ろ、ろうか、」


「え、」


「ほ、他の部屋にもいる!!」



 ドン、ドン、ドン!!!



 何かが扉を強く強く叩く音。扉と床の隙間から漏れ出す何かの液体。眼前の蠢く影に目はない。けれど俺たちを確かに見ている。強い敵意を込めた視線にその場に縫い止められる。


 怖い。なんだよ、この化け物!


「龍斗、逃げなきゃ!!」


「くっ……!」


 光莉の声で現実逃避し始めていた意識が戻される。そうだ。逃げなきゃ。光莉を守らなきゃ!


 足が絡まりそうになりながら逃げる。来た階段とは反対側の東階段。そこから上に上がれるはずだ。


 恐怖を煽る打撃音のなか駆けていく。あった、エレベーター!その隣に扉。ここから階段で上に、


「うっ……!?」


「……っ、」


 向き込む風に乗ってくるのはむせかえる錆びた鉄の匂い。階段の上からダラダラと立て続けに流れてくる赤。それは、


「血……!?」


「しかもこの量、上で何が……」


 何か嫌な予感がする。こんな血が出ることってなんだ。何か別の化け物が上にいるのか?そうしたら、東階段からは上がれない。西からじゃないと。


 でも来た道を戻れるほどの勇気も時間もない。俺たちが選べるのは


「……下、行こう」


「っ……」


「地下3階で隠れながら西階段、あるいはエレベーターへ向かう」


「でも地下3階って動物舎しかないよね。先輩のカードがあれば入れることには入れるけど、私たちが隠れられるところなんて」


「……なら、駆け抜ける。地下3階に降りて、西階段に向けて突っ走る。東階段の上は……嫌な予感しかない」


 光莉を再度しっかりと抱え直して下へ向かう。地上へ行こうってのに、さっきから下へ向かうばかりだ。まるで実験ケージの端に追い詰められたネズミみたいに、どんどん逃げ場がなくなっていく。


 地下3階の廊下に出る扉の前まで降りて、服をうまいこと引っ掛けてドアを開ける。手の震えは光莉に伝わってしまっているだろうか。


 この先に待つのは、死か、それとも。


 ガチャ、と扉を開いた。


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