#10-16 「戦いたくない」
「龍斗さん、お疲れ様です」
「狛坂、そっちも事後処理お疲れ様。大変だっただろ?」
同日午前10時頃───SCR本部司令部にて
優也と海美ちゃんはまだ治療中。ほとんど怪我のない俺はお先に司令部に戻って任務の報告をし終わったところで暇をもて遊び、例の如く狛坂にちょっかいをかけている。
「いえいえ。前回よりはマシですね」
「前回?あーあれか。初めてburst up使ったやつ」
「あの時は結構頭抱えましたけどね。どうすんのこれ……って」
「お世話になってるわ。まじで」
「それが仕事なんで気にしないでください」
今度何か奢ろうか。そんな話になってこの場所でどうやって奢るんですか、なんて笑い話になる。給料ってのが発生しない特殊戦闘部は基本的に司令部から必要な分だけお金をもらっては私用の買い物も済ませる。ほぼ上限のないお小遣い的な感じ?
ま、それは置いといて。
「そういや気になるといえば、記者達は?」
「彼らの記録媒体を全て回収し、他言無用の説得と誓約のもと帰すことが決まりましたよ。もちろん監視付きで」
「報道制限は?」
「かけません。かけてもいいんですけど、結局意味ないので」
「ほーん」
アイツらは外に野放しかぁ。監視がつくから今後の任務に差し支えるようなことはないんだろうけどなんだかなぁ。だってアイツらがまた特異生物がどうのこうのって都市伝説を増やしていくんだよな。
後頭部をかきながらため息をつく。そういえば昔も……
「昔もあったよな。優也が変身から戻るところを写真撮られたやつ」
「そうなんですか?」
「あーうん。狛坂が来る前だな。結構昔、8年前とかそれぐらい。変身できるようになって外で初めてオルガーと戦った時かも」
「そんな昔にも同じことが?」
「そうそう盛り上がりかけたのが一回。焦ったけどその記者は結局オカルト扱いされて事なきを得たんだよな」
「そうだったんですか。その記者、今でもマークしてるんですか?」
「いや、前のオペレーターからちらっと聞いたんだけど、どうもその後オルガーに殺されたらしい。多分取材とかなんかで近づきすぎたんじゃねぇの?俺は名前も顔も知らないけど」
「そうでしたか」
「都市伝説オカルト扱いは良いけどさ。こう、なんていうの?世界が敵な感じが嫌よな。俺達は世界の平和のためになることやってんのに」
「あーまぁ、確かに」
狛坂の絶妙な同意をもらって少し不満げに腕を組む。ああいう奴らは基本俺たちを敵視している。だからもし記事にするなら『恐怖!人間に擬態する特異生物!?』とかなんとか、面白可笑しくやってないことだってでっち上げられて悪者のように書かれてしまうんだろう。特異生物の認識は基本、『人間を襲うもの』だから。避難指示に従ってもらうっていう意味ではその恐怖が充分に伝わってて良いんだけどさ、なんかなぁ。
「でもあんまり優也くんと海美ちゃんが気にしている感じはしないですよね」
「あーまーー。うん。そう」
「2人は年齢に見合わない心の強さがありますよね」
「そうならざるを得なかったんだよ。特に優也は」
「ううん、少しは気にするような余裕とか、あったほうがいいんですかね?」
「わからんなぁ……」
でも、もしかしたら世界が敵になるなんて親や姉が敵に回った2人からしたら些細なことなのか?よくわからない。
じゃあもし俺の家族が敵になったら俺は気にしないのか?
もし
光莉が敵に回ったら? 俺は気にせず戦うことができるか?
俺は、
「戦いたくない」
「え?」
「………んーん、こっちの話」
雑談がほどほどに弾むと司令部の入り口の扉が開かれ優也と海美ちゃんが入ってくる。2人とも骨折はもう大丈夫そうだね。しっかり歩けてるし。
2人は長官に報告して解散する。横でその話の流れを聞き流し、都合の良さそうなタイミングでお疲れ様、と声をかけた




