#10-15 敵わないな
「海美ちゃん!」
「っ!」
龍斗さんの声が一際大きく聞こえたと思ったその瞬間、優也を強く抱えたまま体は宙に浮き、数十m横に風に乗せられた先で止まり優也と2人仰向けに寝かされる。
何だ何だと顔の向きを変えとさっき私達が転がっていた地面、その直上に私達が飲み込まれた鮫が空を泳いでいる。次第に動きが遅く鈍くなって行き、ガシャンガシャンと音を立てて少しずつ体が崩れ落ちていく。ついに鮫の体を保てなくなったのか一気に鉄屑が降り注いでけたたましい騒音が辺りに鳴り響いた。
ふりそそぐ瓦礫は山をつくり、カランカランと鉄屑が落ちた寂しい音を最後に、瓦礫の山と化した鮫だったものはついにピクリと動かなくなってしまった。
私を助けてくれた大きな鮫さん。
「……ありがとう、ね」
そう鮫の最後に気を取られていると横から物音。
グラリと大きく揺れた視界には徐々に明るい空色に変化してきた空と心配そうに私を覗き込む龍斗さんの姿。あ、変身解いたんだ。
「ごめん!!大丈夫海美ちゃん!?」
「う、うん。へーきへーき」
「もうほんと、無茶するんだから……ちょっとチクっとするからね」
呆れ半分でそういうと腕に針を押し付けられる。い、痛い……これセルヒールってやつ?慣れないなぁ。
体をよく見ると身体中に切り傷とかがある。骨折も至る所でしているのか少し体を動かそうとするだけでめちゃくちゃ痛い。それにおでこに横一本入った深いであろう切り傷がじくじく痛む。うぅ、さっきまで我慢できてたというか、こんなの感じなかったのに。無敵モードもおわりかぁ。
「でもお手柄だね。優也も無事に帰って来た。がんばったね」
「うん……まぁ、守られてるだけがシャークガールじゃないからね!」
「……前から気になってたんだけど、シャークガールって何?」
「ん?……んふふ、それはね」
笑って見せようとすると口角と頬がズキッと痛む。それでも私が私であるために。
夜は空の端へと追いやられ、太陽が登って私と龍斗さんを暖かく照らす。その暖かな光とともに決意が心に漲るような、息を深く吸えば何だか胸がいっぱいになるような、そんな気分だ。
「強くて、かっこかわいくて、何があっても折れない。最強の女の子のこと!」
ブイ!とピースを龍斗さんの鼻先に指し示す。龍斗さんは一瞬驚いた顔をした後、
「敵わないなぁ、シャークガール」
またそう言って、眉を下げ困ったように笑っていた。




