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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#10 「戦いたくない」
126/200

#10-14 想像しろ


『司令部よりフレイム。burst upは可能でしょうか?』


「え、」


 いや、でもあの様子じゃもう焼却したようなもんだろ。いるか?burst upなんて


『こちら狛華。解析よりアースダンゴームの微細な再生を確認しました。確実に焼却するためにburst upをお願いいたします』


『より確実に焼却する。やれ、フレイム』


 まだあれでも再生してくるか。流石に特異生物。完全に焼却しなきゃならないらしい。

 うつ伏せから回復した右腕の肘を立てて、匍匐前進のような体勢で何とか頭を地面から上げる。両腕は無事。あとは利き足の右足さえなんとかすれば、


「……了解。ストーム、シリンジとってくださ、」


「優也」


 ストームの声には似ても似つかない高い声。シリンジを差し出されたのは真っ黒に焦げついた腕。視線を上げると鮫の頭部。


「スパーク」


「これ使うんだよね、mortal evolution」


「あぁ、あとは下がっ」「これこうだよね?」「え?」


 パキン、という音と共にburst up solutionが二つに分離し、針の付いていない方は左腕のミューテーターに差し込まれ、針のついた方はボロボロの手で握り込まれる。


「え、え、ちょ、海美?」


「いくよ!!」


「ウッ!?!?」


 針のついた方を右腕に刺し、スパークは後ろに下がる。


 ドクンドクンと心臓が大きく跳ねる。刺された部分からじわじわと体全体が熱を持っていき、次第に自分の体に触れている地面がマグマのように煮えたぎる。体は中心、特に心臓に向かって刺すような痛みが全身を襲う。熱い。痛い。熱い。熱い。


 両腕を支えに左足で立ち上がる。地面から這い上がるように体にこびりつくマグマで体を安定させ、まず顔にこびりつくマグマを右腕で乱暴に剥がす。視界が晴れたその先で


「──!」


 スパークではなく人間(海美)の姿。顔は真っ赤で下手すれば大火傷をしかねない距離にいる。けれどその大きな瞳は化け物のような姿に変身していく俺を捉えて離さない。海美は何も言わずにただこちらを見つめ、恐怖なんて感じないからやってやれ!と言わんばかりに笑っている。


「……下がってろ」


「うん」


 もう大丈夫なんだな。


 安心してようやく集中できる。左腕を左に振って腕に絡みつくマグマを振り落とした。足が動かなくたってやるしかない。



 Blow away the mutation!



「えっ」


「足が動かなくたって俺が何とかしてやる!いけフレイム!───ファイナルドラゴンブレス!!」


「うわっ?!?」


 背中に受ける暴風。それは渦を巻いた龍のように上へ上へと俺を吹き飛ばす。さらに視界の先にはアースダンゴーム。よく見ると背中からまた何か生やそうとしている!そうはさせるか!!


 右手でミューテーターのプランジャーを一気に押し込む!



「change my……feature!!」



 その瞬間俺の中で何かが爆ぜる。光と一瞬の発熱のうち視界が晴れた後、間髪入れずに腕に刺したほうのシリンジを再度腕を貫通するように押し込む。



 Burst up the mutation!



「クソクソクソクソクソ!!クソォォッ!!何でアタシが、アンタ達化け物なんかにぃぃぃいいい!!」



「──ファイナルタイガーバースト」




 熱の推力で一気に加速し、アースダンゴームへと突撃して、爆ぜた。




 *****


 はるか上空で大規模な爆発が連続して起こる。遠いところのはずなのに、花火なんて比じゃないぐらいの轟音が爆発の光に数秒遅れて耳をつんざく。慌てて耳を塞ぎ、目を腕で覆った。


 数秒経って熱を感じる。こんなに離れた場所でストームに覆われても感じるような届く熱量だ。きっと役目は果たしている。


『特異生物反応消失。焼却を確認しました。』


「まずい。思った以上に煙がすごい。海美ちゃんどこかに隠れてて。俺は優也を探しに行く」


「え!?」


 夜明けの赤と青の合間を縫うような黒煙を見上げながらストームは翼を大きく広げる。あ、あの中に行くってこと!?


「前にやったburst upの後優也は意識がなかった。あの高さから意識のないまま落ちたら助からない。簡単に見つけられると思ってたけど、想定以上の煙だ。直ぐに見つけられるか……!?」


「……っそうだ、私を連れてって!!私なら近づきすぎなくとも正確な場所わかるから!」


「そうか電気感覚!よし、行くよ海美ちゃん!!しっかり掴まって!!」


 ストームに強く強く抱えられながら太い首に両腕を回して抱きつく形になる。てか鱗硬い……ほっぺた痛い…そんなこと言ってられないけど。


 バサっと大きな翼が広がりストームが屈んで体勢を低くすると、バネのような跳躍で空へと飛び出す。


 す、すごい。すごい!上下に揺れる翼の振動を体全体で感じながら上へ上へと高度を上げていく。これがストームのいる世界、空の中!


 薄明るい夜明けの空の中に墨をこぼしてしまったかのような黒煙が目の前に広がっている。あんなの近くに行ったら何も見えないし、下手したら私たちの肺とか喉とかやられちゃう。ここからやるしかない。


 集中して……探し出すんだ!


「ストーム、煙の右下に行って!」


「オーケィ!」


 パチ、パチ、と体で静電気が跳ねる。感覚としてはおでこの下の方、鼻のちょっと上あたりから糸が伸びたような感じ。それで相手の位置が何となくわかって、近づけば近づくほど感じる電力が強くなる。


「もう少し、もう少し右」


「こっちかな?」


「そう!そこを真っ直ぐ真っ直ぐ下に行って!」


「りょーか……いた!」


 顔を限界まで後ろに逸らして見れば、ストームの視線のその先にいるのは頭から落ちていく人間の姿の優也。さらにその先に地面が見える。い、意外と近くない!?ストームの飛行速度もすごいけど、やば、ダメ!!


「ストーム私を投げて!!」


「はぁ!?」


「このままじゃ間に合わない!お願い!!」


「あーもー!どうにかなれ!!!」


 その言葉とともに背中が思いっきり押されてさらにスピードがつき、優也へぐんぐん近づいていく。手を伸ばして、その力なく落ちていく体を掴もうとする。届け、届け、届け!!


「ゆぅううううやぁぁぁあああああ!!」



 届け!!



「っ!」


 届いた!!


 ガシッと足首を掴んでそのまま自分の体へと引き寄せる。火傷しそうなほど熱い優也の体を抱いて、いつかの優也みたいに体空中で勢を整える。や、やば、やばい、どうしよう。私だけじゃこの高さは死ぬ!


「海美ちゃん!」


 後ろからストームの焦る声。それと共に横薙ぎに風が吹いて体が地面と水平に吹っ飛ぶ。下へ落ちる力が分散されてマシにはなったけど、なったけど!?ま、まだ高い!!


 私は高いところから着地できる力なんてない。優也みたいに衝撃を殺すことだってできないし、龍斗さんみたいに風を起こして勢いを弱めるのもできない。さっきの風の反作用でストームどっかいっちゃったし、優也は意識がない。私が何とかしないと!私に、私にできること!!


 地面が近づいてくる。空が遠くなっていく。


 耳がキンっと鳴る。頭が真っ白になっていく。




 私にできることって、なんだ?





『てかスパークちゃぁん、君、もっと強いでしょ?』


『へ?』


 研究室。龍斗さんと優也が席を外したタイミング。ちょっとした雑談に組み込まれたその言葉に頭を傾けた。


『今は放電するしか能がないみたいだけど、それを使えばきっともっとさらに強い。それはもうフレイムくんを超えるぐらい!』


『私が優也を超えるぐらい?そんなまさか!』


『んーん、誇張じゃないさ。フレイムくんは確かに特別かもしれない。でもそれでいうならスパークちゃんは《未知数》』


『未知数?』


 人差し指を立ててにやっと笑う的戸さん。


『そう。まだ見ぬ力を君はその体に秘めている。だって僕が見る限り、特異細胞への適応が最も速いのは君だよ?』


『えっ、そうなの?』


『そうだよ。だって初変身で戦って自分の力を応用できていたんだから。さ、想像して見るんだ、自分の力を』


『想像……』



『そう。想像。限界を超える想像さ。知りたくないかい?君の限界を超えたその先を』





「限界……の、その………先!!」



 想像しろ



 優也と私が助かっちゃうような奇跡を



 パチっ



 想像しろ。ありえないミラクルでもいい!


 優也は何度も何度も何度も私のこと助けてくれたんだ。返したいよその優しさに!こんなところで死んでたまるか!!こんな、こんなところで!!




「諦めてたまるかぁぁああああああああ!!!」




 パチッパチッバチバチバチッッ!



「うぁあああああああああっっっ!!!」


 体中に電撃が走る。走る電撃を落とすように地面に向けて腕を伸ばせば轟音を驚かせながら雷が落ちた。


 その雷撃に応えるように、電気で形取られた小さな魚が水面から飛び出るように地面から跳ねて飛び出す。それは一瞬にして数百匹を超え、さらにそれ以外にも電柱や駐車してあった車、信号なんかがポルターガイストのように地面から浮きあがった。


 地面に向かって手を伸ばす。するも小さな雷魚が集まって、さらにそこへ地面から浮いた建造物や瓦礫が巻き込まれ一つの塊となり、大きな大きな鮫の形を作り上げていく。


 大きな鮫は身を捻り、私の方へとその大きな口を開けて、


 バクンッッ!


 一気に私達を飲み込んだ。鮫の体の中は案の定瓦礫や金属が入り混じっていてまるで津波に飲み込まれてしまったみたい。ところどころにある硬く尖った何かで全身が削られていく。優也の頭を腕で抱えて叩きつけてくる瓦礫からなんとか庇う。


 鮫に飲み込まれた衝撃で落下のスピードはガクッと下がっていき、そのまま緩やかに地面へと落ちる。硬いコンクリートの上。腕の中で眠る優也は静かに寝息を立ててトクントクンと心臓の音が聞こえる。よ、よかった。助かった!



「海美ちゃん!」


「っ!?」




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