#10-11 粋な挨拶
「至急至急!特異生物アースダンゴーム発見!特殊戦闘部、出動せよ!!」
翌日午前6時前───都内某所
「朝っぱらから元気だねぇ。もっとゆっくり寝させてくれてもいいのに」
「もう起きてた人に言われたくないでしょうね」
ガタガタと揺れる車内で朝イチのため息が出た。勘弁してほしいのは俺のほうだよ。昨日はまだ寝れたほうだからいいけど、もし眠れなかった日にこんな朝っぱらからの呼び出しだったら寝ぼけながら戦う羽目になったかもしれない。
「朝活好きなんだよね。優也もこれを期に朝活どう?スッキリするぞ」
「遠慮させてもらいますよ。俺は1秒でも長くグッスリ寝たいんです」
「優也って夜型なの?」
「海美ちゃん知らないっけ。優也は朝激弱だよ」
「へぇ〜〜今度朝早くに優也のとこ行こうかな」
「俺は朝の不機嫌で人を殺せるぞ」
「どんな脅し方?」
ガタン、とまた大きく車体がゆれる。今回アースダンゴームが発見された現場は本部からそれなりに遠い。仮眠でもしようかと思ったがさっきから龍斗さんと海美の賑やかな声に目が冴えてしまったから仕方なく話に付き合っているところだ。
ピ、とインカムが音を鳴らす。
『もうあと8分ほどで到着です。人間の反応なし、問題の記者達も支部で留置中なので問題ありません』
「了解。作戦通り俺と龍斗さんが出て、俺はすぐにmortal evolutionを使う。龍斗さんは変身の衝撃と攻撃の余波に備えてください。海美はこの車の中で待機。万が一の時から撤退の時のみ助けに入ってくれ。変身はしなくていい」
「了解」
「了解。ま、よゆーでしょ。前回も記者の邪魔が入らなかったら勝ててたし」
「油断禁物です。早急かつ確実に焼却しますよ」
「りょーかいりょーかい。海美ちゃんはほんと、無理しないでね。海美ちゃんのためにも俺たちのためにも」
「うん……大丈夫」
ガタンガタンと車がまた大きく揺れる。……いや、揺れすぎじゃね?ここ都内だよな?遠いって言っても都内だろ?なんでこんな揺れるんだ。こんなにボコボコな地面あるもんか?
視界は目隠しのせいで何も見えない。仕方なく運転手に声をかける。
「あの……運転手の方、どこ走ってます?」
「はっ、ポイントまでの道を走っております」
「あぁいやその、道って舗装されてないんですか?さっきからガタガタ異常にゆれません?」
「舗装はされています。ただ確かに凹凸がひどい道ですね。時間を遅らせれば回り道もできますが、いかがいたしますか?」
優也乗り物酔いとかするんだ。へぇ〜そうなんだ初めて知ったかも?猫って車嫌がるよね〜と耳につく会話を全てスルーする。凹凸が酷いか。別に揺れるの自体はいいんだけど、何か引っかかる。
「狛坂さん、この道は工事予定なんですか?」
『特に予定にありません。この先の道路を確認しましたが、特に凹凸はないので問題ないかと?』
……おかしい。都内でこんな酷い道に工事の予定もない?でもこの先にないなら気にすることでもないのか?
「地面の凹凸かぁ。モグラのせいだったりして!」
「モグラ……?」
「前に一緒にやったゲームあるじゃん。モグラが通った道が凸凹してるやつ」
「あぁ……」
大分前にやったモグラのレーシングゲームか。モグラの通った跡には凹凸がつくけど。
「っまずい!!車を止めろ!!」
「龍斗さん!?」「えっ!?」
すると突然俺と海美の会話を静かに聞いていた龍斗さんが叫ぶ。運転手がそれに反応してキキッと高いブレーキ音がなり、車体が一際大きく前方方向に揺れて止まった。
「狛坂!ここをポイント指定して脱出させろ!!」
『っ了解!特殊戦闘部3体は目隠しを外し索敵を開始してください!』
焦る龍斗さんの声に目隠しを外し耳栓をとる。海美を先に降ろしすぐに後に続く。龍斗さんも降りたと思うと、運転席に回り込んで運転手を引っ張り出し背中を少し乱暴に背中を押して逃がしているようだ。
「狛坂迎えよこせ!!どこでもいいから白川さんを回収しろ!」
『えっ!?あ、はい!直ぐに手配します!』
「ど、どういうこと?龍斗さんどうしちゃったの!?」
「わからない……けど何も意図がないのにあんな騒ぐ人じゃ───」
ボコッ、ボコボコボゴッ
「──え?」
ボゴボゴボゴッッボゴボゴボゴッッ!!
「どうしたの…?」
耳栓を外し外に出てやっと聞こえる。この音。地面にしゃがみ地面に耳をつけて音の出どころを探り当てる。地面の中。40 mあるかないかぐらいかな。そこから勢いよく何かが地面へと這い上がってくるように聞こえてくる。でも何の音?
──地面の凹凸が、今この瞬間に誰かに造られたものなら?
「~~っ!車から離れろ!!!」
「えっ……!?」
海美の肩を引っ張り、盾になるように車に背を向け海美を車から離すように突き飛ばす。
その瞬間
ボゴォォォオオッッ!!
ドガァァアアンっ!!!
「きゃあああああああああっ!?」
背中に感じる巨大な熱。それから必死に海美を庇う。俺ならどうなったって何とかできるから。海美だけは!
数瞬の熱と衝撃の後、辺りは黒煙が立ち込める。口を肘で抑えながら海美を安全なところまで引っ張り座らせた。煙は酷いし遠くもないけど目につく場所じゃないし、ここなら大丈夫だ。
「ここで待ってろ。直ぐ終わらせるから」
海美を置いてすぐにその場を離れる。元の場所に戻ると黒煙が少しずつ晴れてきて、そこには見覚えのある姿がいた。




