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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#10 「戦いたくない」
118/200

#10-6 キシヤの追跡

 カシャッッ!!



「……え?」


 シャッター音。近い。俺の耳でも捉えられるぐらい。優也も動きを止める。俺より優秀な耳だ。その正確な出どころもわかるだろう。すぐに優也の視線は動いて右斜め上に向く。


「なんだ……アイツ……?」


「あれは」


 カメラで顔が隠れている。誰だ。


 カシャッッカシャッッ!!


 連続でシャッターが切られていき慌てて優也を庇うように前に立つ。


「あら?彼、アタシの美貌に惚れたのかしら?」


「彼?」


「ええ。彼はただの人間ながらアタシと交渉して、アナタ達とアタシを会わせてもらうことを条件に、取材がしたいってね」


「俺たちの……!?」


「ふふ、まぁ惚れてしまうわよね。アタシのこのパーフェクトボディーをみ・た・ら?」


 特異生物と手を組む記者!?誰だ、そんなやついるはずが……ていうかまだいたのか!?


 ピッとインカムが音を鳴らす。


『フレイム、ストーム!撤退だ!狛坂の誘導に従って逃げろ!』


「長官!でもアースダンゴームがまだ!!」


『構うな撤退しろ!辺りにどれだけ人間が隠れているか分からない上に、人間がいる以上burst upは使いたくない。SCRの存在が外に大きく漏れてみろ、今後の任務に大きく差し支える!!』


「〜クソ!!!」


 優也はシリンジをしまって指で俺に合図を出す。オッケー了解!


 逃がさないと言わんばかりにアースダンゴームが立ちはだかるが高く跳び超えてスルーする。あのでかい体だ。転がってこない限りはそうそう追いつけるはずもない。幸い深追いをやめたようでそのまま距離を離し、ビル街を走り抜けて近くの商店街に入る。ここは避難区域だ。誰もいない。


 細かい路地に入って息を整える。結構なスピードで走ってきたんだし、到底普通の人たちが追ってこれるわけ──


「ストーム。来てます」


「え?」


「遠いですけどまだ複数の足音がします。しかもこっちに向けて」


「キリねぇな!?」


「回収ポイントはこの近くですから、なるべく離れたくないんですけどね……」


 どうする。ずっと逃げ回ってばっかじゃ本部に帰れないけど!?こう、うまくタイミングを合わせて車でサクッと拾ってもらうか?そんなうまく行くかね!?


「……そうだ」


「優也?」


「龍斗さん」


 優也はキリッと真剣な顔で俺を見上げる。どうした。何か閃いたのか?


「歯食いしばってください」


「……えっ?」


 *****


 走る。走る。走る。


 構えたカメラだけは大事に抱えながら全速力で走る。絶対に逃さない。僕の真実だ。


 あらかじめリークしておいた記者仲間達がすぐ後を追っている。見た目が派手なテレビ記者たちはただの囮。本命は僕たちだ。


 ビル街を抜けて商店街の方へ入る。そこでは記者仲間達が手分けして特異生物たちをさがしていた。キョロキョロと周りを見渡しながら声をかける。


「いました?」


「岸谷さん!いえ、どこにも……」


「こっちの方に逃げて来たのは確かなんですよね?」


「ええ。ドラゴンのような特異生物は確かにこっちに来たはずです」


「またか……!!」


 また撒かれた。クソ!まただ!また姿を消されたのか!!


 苛立ちで地団駄を踏み出しそうになるのを耐えて、なけなしの思いで商店街をぐるぐると見渡す。どこだ、どこだ!どこへ行った!!


 その場を離れて大きく息を吐いた。頭に上っていた血がゆっくりと落ちる。ゆっくり息を大きく吸って、ゆっくり吐き切る。落ち着かないと。せっかく命懸けで特異生物を誘導して目当てが出て来たはいいものの、取り逃した魚はあまりに大きい。それを捕まえるには冷静でいないと。でもせめて、


「あのドラゴン……!」


 掠れた声が漏れる。兄さんを殺したあのドラゴンに復讐さえできればそれでいい。


 近くにいた仲間に見つかったか?と声をかける。しかし良い表情は返ってこなかった。


「いや、こっちは何も……逃げ遅れた男の人がいたぐらいだよ」


「逃げ遅れた?」


「あぁ背の高い男がいたんだ。顔を殴られたのか頬が真っ赤で、腹に引っ掻き傷があってフラフラだったんだよ。どうした?って聞くと走って来た特異生物にやられたんだと」


「そりゃ運のない」


「それで指差した方向に今さっき逃げたところだから追ってくれって言われてな。俺たち全員で追ったんだがなぁ……」


 あれ、まてよ?


 頭に違和感、妙な感覚。

 だってここは避難区域なのに、どうして一般人が残っているんだ?


「……その男は今どこに?」


「近くに医者のつてがあるって言ってどっか行っちまったよ。俺たちも何かできるわけじゃ無いし、そのまま放置しちまった。特異生物を追った後一応戻ったんだが居なくなってたよ」


「〜〜っ!!」


 慌てて商店街を出てビル街の方に戻る。いない。誰もいない。騙された……人間の姿に化けて騙されたのか……!


「クソっ……どこだ!どこにいる!」


 思わず叫んだ声は誰もいない静かなビル街に吸い込まれ、誰に聞かれること無くそのまま消えていった。


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