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#9-16 solution


「僕ちんなら君に見せてあげられるよ、君の理想通りのフレイムくんをね!」


「貴方、優也くんの力をご存知なのですか?」


「ふふ、あのねぇ、孤虎利人の膨大なデータを引き継ぎながら僕ちんはフレイムくんでずっと実験しているんだよ?髪の毛一本、爪の先まで知らないことなんてないよ」


「………」


「よしかんせーい!名付けてmortal solutionだー!」


 あまりの気色悪さにザセルかが引いてる。いつものことだから気にしてないけど結構きもいよな、コイツ。


 俺たちの怪訝な目を気にすることなく、的戸は完成したというシリンジを掲げて大喜びだ。そのシリンジは通常のシリンジとは違ってハザードマークが描かれており一目で危険な物だとわかる。


「それは?」


「これはフレイムくんの力を最大限引き出してくれるsolutionさ。ザセル、君の求めるものはこれだろう?君はフレイムくんの本当の熱を焦がれていたはずだ。熱だけにね」


「………」


「さて、フレイムくん。休憩はできたかい?」


「………ええ。おかげさまで」


 優也がゆっくりと立ち上がる。何本かセルヒールをうったおかげで体表面の傷はほとんど塞がって血も止まっているようだけど、本当に大丈夫なのか?


 止めようと声を上げようとして、数ヶ月前の無謀な自分を思い出してしまって出かけた言葉が喉に引っかかる。あの時と同じで、現状出せる最善の答えは、あのシリンジにあるのかもしれないから。


「じゃあ君の答えを聞こうか。どうする?フレイムくん」


 悪魔のような微笑みで、マッドサイエンティストはシリンジを手に乗せる。


「これを使えば、君はどうなるかわからない。前に似たようなことがストームの時にもあったねぇ。でもアレなんて比じゃないよ?もしかしたら2度と人間の姿に戻れないかも!?」


「なっ!?」


「死んじゃうかもねぇ。ねぇねぇ、どうする?フレイムくん」


 面白おかしく煽る的戸。それとは対照的に、優也は凪いた表情だった。焦りもせず、怒りも憂いも悲しみもない、迷いなき瞳でシリンジを見つめる


「これで……この力でザセルを倒せるのなら、鬼でも悪魔でも、どんな化け物になったっていい」



 そして、シリンジを攫った。



「俺が全部ここで終わらせてやる」



 覚悟を決めた揺らがない深紅の瞳。修羅をまとうその姿はもう誰も止められない



「フフフフフフ……くっ、アッハッハッハッハッ!!良い!!流石、流石はフレイムくん!僕ちんの最高傑作!!その返事を待っていたよ!!」


 空を仰ぎ、濁点がつく勢いで高らかに大きく笑う的戸の目の焦点はまるで合っていない。優也の強い意志を宿した瞳にザセルが何か警戒したのかネピアとセリーの後ろに下がる。


「さぁフレイムくん!!仕上げの実験を始めよう!!」


「……えぇ」


 優也が受け取ったシリンジの真ん中に細くくびれた部分がある。そこに力をかけるとパキンと割れて、元あったシリンジは2つに分かれた。そのうちの一つをミューシスのソケットに入れると、



 Burst flame, Ready for injection!



 という音声が鳴る。


 もう一方のシリンジは左腕に思いっきり刺す。すると


「っ熱!?」


 熱い熱い熱い!慌てて立ち上がり海美ちゃんを抱えて空へ跳躍した。近くの太い鉄骨の上に乗って振り返ると、優也を中心にマグマのようなものが湧き立っている。遠くにいた俺たちですらこの熱さだ。温泉じゃあるまいし、何が起こってる!?


「……ふふ、ふふふ。的戸さん、と言いましたか」


「ん?そうだよ」


「貴方、素晴らしい研究者ですね。その頭脳が欲しくなってきました」


「ご生憎様、僕ちんは君みたいな研究者、あまり好きじゃなくてね」


「私が?」


「あぁ。体の話じゃないよ、君の本性ってやつ。僕ちん何でもわかるんだよねぇ」


「なにを───」



「ぅうあああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」



「「!?」」


 優也が吠える。とても痛々しい、苦しげな咆哮。立つこともままならず、膝をついて苦しむ優也の体を地面のマグマが這い上がり、完全に優也を覆い尽くす。頭は目と口と思われる部分がの光で形取られ、マグマの悪魔なような姿をしたいる。


 的戸も近くの建物の外階段を登って優也から距離を取る。ザセルは微動だにしないが、ネピアとセリーは慌てた様子だ。


「な、何でしょうかあれは」


「せ、セリー!盾になりなさいよ!アンタ耐熱細胞移植したんだから!」


「それはネピア様も同じむぐむぐぐぐ」


「いいから私とザセル様を守りなさい!!」


 セリーがドンっと突き飛ばされ優也に対峙する。アイツ、よく見ると体のところどころに頭の角みたいなのが小さく隠れてる。しかも足の裏にも。あれを地面の中で伸ばして俺たちを攻撃していたのか。


 俺たちよりも優也に近い的戸は顔を真っ赤にし、ダラダラと汗をかいて部分的に火傷を負いながらも、逃げようとしない。優也から一切目を離さず、その口角は楽しそうに釣り上がっている。


「あああああぁぁぁあああああっっ!?」


「さぁ見せてくれフレイムくん、君の真の力──」


 優也の体にまとわりついていた黒く炭化したマグマがボロっと少しずつ取れて転がっていく。マグマが剥げた部分には眩しい白の光のマグマがダラリと垂れた。顔にこびりついたマグマの塊も剥がれ、苦痛に顔を歪めながらも前を見据える優也の表情が見て取れる。


「ぐっ、……ぅぅうう、あ」



「───Mortal evolution」



 優也の体にどんどん歪な、まるで子供がメチャクチャに粘土を積み重ね形作ったかのようなマグマが這い上がってこびりついていく。それに負けじと立ち上がり、震える腕で顔あたりのマグマを剥ぎ取る。左腕を左に振ってマグマを振り落とし、右足を反時計回りに回して後ろに置いた右足を軸に左足を蹴り上げ、そのまま体を大きく前に傾けながらドンッ!と左足を下ろして強く地面につく。


 マグマを払い除けるための動きだ。けれど、どこかそれはスーパーヒーローの変身シーンのようで。


 体を前に倒したまま、腹に抱え込んでいた左腕を前に突き出して、叫ぶ。



「change my……feature!!」


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