白の交渉人との出会い
午後9時。この料理屋"まねきや"の閉店時間だ。午後6時開店なのでたった3時間の営業時間だ。
この店が人気の理由は店主の料理の旨さにも勿論あるのだが、日曜日のラスト1時間のみレイナが料理を作るのだ。レイナは俺から見ても顔が可愛い。だがまだまだ見習いなので激マズでこそないが味もそこそこ、見た目は少々不格好な料理になるのだが、それを最初に食べてくれたハンターがその後、やけに幸運に恵まれた事を周りに話してそれが噂となり、このお店の渾名(幸運の招きや)にもなった。
そのレイナが今日の出来事を興奮して話す。
「あれが! 噂の黒の軍団の交渉人なんだよね! 白の軍団の交渉人は美人さんてだからレイナはそっちを見てみたかったな~」
「噂通りというかレンジも偽名だろうと言ってたし胡散臭かったよな。たしかに白の方にも会ってみたいな」
レイナが意味有りげに笑顔で顔を近づけて返事をする。
「美人さんってだからかな~?」
「ち、違う。黒を見たから白を見たいってだけだ」
「ふーん。まあ見てみたいのは本当だしいいんだけどね」
交渉人の話題が出たので店主も会話に加わる。
「ジョンが来たからその時はどうなるかと思ったけれど、大きな騒ぎにならなくて良かったね」
「ああ。たしかにね~」
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先行プレイヤーにあった出来事。つまりレイナから聞いた話になるが、サービス初日には黒と白の両軍団の交渉人が中立地帯にきたという。セブンス初出現ということで人集りができ(レイナは見れなかった)、その時点で運営からセブンスに関する情報は絶対者がレベル1以外公表されていなかったのだが、これをチャンスに思ったプレイヤー300人程がアンダース側に、200人程がアルヴィン側の絶対者の居る王城に攻めこんだ。結果としてはどちらの陣営も王城に辿り着く事はできたが、残り全てのプレイヤーが魔術師1人に全滅させられたのだ。
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《カランカラン》
閉店時間を過ぎた店内に客人の来店を告げる音が響く。驚きで3人とも入り口のドアを見る。店主としてユウキさんが冷静に声をかける。
「すまないがお客人。今日の料理はもうないんだ。また明日来てくれないかね?」
だが引き下がる様子ではなく、ユウキさんの様子もおかしい。そして客人の女性が返事をする。
「こんな時間に押しかけて申し訳ないとは思うが店主、私が用事があるのはこの店の看板娘なんだ。こちらの隠術師からとても気になる事を聞いて居ても立っても居られなくてね」
そう言いながら店内に踏み込んできた。そして満面の笑みでレイナの手をとりながら
「初めましてレイナちゃん」
コゲ茶のショートヘア、優しげだが眠たそうな瞳に少し広めの頬、大きめの口。スレンダーなスタイル。瑞々しい肌。所属を表す白のコート。そしてこの強気な交渉。
噂のアルヴィンの交渉人カグラその人だった。




