第一章・かのじょのおさないたましいのゆくえ
「右の左の旦那様~哀れな乞食におめぐみを~」
一人の男の声が、雑踏の中に消えていく。
――しょうわ64ねん――
ここは千葉県の柏市という大きな都市で、急豪デパートの裏の路地。
表通りはマッポがすっ飛んでくる危険地帯。
それを知っているのだろう乞食男は、裏路地だがデパート内部を突っ切らずに進める迂回路ゆえに人が通る、
ある意味物乞いの一等地を確保。
他のライバルも見当たらない場所で、この男は懸命に物乞いをしていた。
男は茣蓙を敷いて目の前に日本産白桃の空き缶を置き、
どこかのゴミ箱からでも拾ってきたかのようなボロのフードつきコート浅黄色の長い裾を茣蓙にたらし、裂けたジーンズ(裾を何重かに巻いている)長すぎを履き、死刑囚のような青と白が交互の横ライン長袖。髪はぼさぼさ唇まで前髪伸ばし、後ろ髪に至っては腰に届くかという長さ。
そのまま体育すわりでか細く力の抜けた、いや、もはや無いのでは? と、疑えるだけの声量で、
まさに蚊の鳴く声で……
漁協の魚市場で白発泡スチロールの箱からこぼれた、あまりに小さな魚の皆誰もが注視しないゴミとして、のたうつこともとっくに忘れた死んだ魚の目のように。誰も海面に投げ込みすらされない死体の濁った眼で、
大勢の道行く人々に視線を固定したまま呟いていた。
この世知辛い世の中で人々は彼に無関心。
誰も見ない。
きかない。
忙しい、金が溢れて仕方がないから。
住宅地には毎日黒リムジンが止まり、重役が出てくるまで運転手がフロントガラスを専用の鳥の羽で出来たモップで埃落とし。
小学生は元気に走り回ろうとして、道端のモンジャに顔色を変えて硬直する。
幼女の怜悧な眼光と無表情の目は、将来女王様が決定してる顔だった。
そんな時代なのに。
「あんた! からっぽじゃない! その空き缶、聖徳太子で一杯にしたくない?」
「は?」
「あ、あんたには万札は似合わないか。
なら500円札がいい?
それとも500円だまにする?
あんたの希望を、このマジカル洋子様が叶えてあげるわ」
「え?」
「喜びなさい。
どうせまともに食事もしてないから、そんな情けないスズムシにも負けるこえしかでないのよ。
でも大丈夫。
喜びなさい。
貴方は今、天使の目の前にいるの!
つまり、
この一ノ瀬洋子が、
――一個だけあんたの願いをかなえてあげるっていってんの!
喜びなさい」
きゃんきゃんきゃんきゃん。
まさに喚いたのは、
通行人の存在何か知らん、とばかりに(実際みんな忙しいので無視して通過しているが)堂々と胸をそらして、
全然無い胸をそらして。
ローポジション三つ編みの黒髪ロングヘア―、ピンクの夏用薄手ブラウス型から腕はもろだし。膝下まで丈のある純白のフリルが縦に幾つも入ったスカートと、真っ赤な靴と白の靴下。
そんないでたちの、不思議娘が不遜顔で小さな美頭と鼻孔に、ぷくりとした唇を横たわる三日月八分の一ムーン状態でご満悦。
ふんす、ふんす、と両脚広げた女子が立っていた。
「いや、君……どうみても小学三年生でしょ。
しかもまだ新品同然の赤ランドセルに、横に給食当番の割烹着入れまでぶらさげて……」
「ふん、それがなに?
わたしが凄い能力持ってて、あんたを真の漢にできる存在が前にいるの。伏して感謝の意を述べ、私の足から靴下を脱がして、足裏を舐めさせてあげる権利もあげちゃうわ。
どう、すごくない?」
「右の左の旦那様~~、あわ――」
「シカトすんなよ!」
ばしこん!
と、よれよれの、おそらく水にぬれて強度と重さを増したダウンページの角で、彼の脳天を直撃!
「いぎいぃぃやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
その激痛に右に左に彼は転がり回る。
「うん、良かった。ようやく話を聞く気になったわね。
私は何でもお見通し。
お金が欲しい。
すぐにわかっちゃった。
ほら、いいなさい。
てか言え。
はやく!」
「おま、おま、とんでもない凶器なんだぞそれ。
というか何、お願いって、訳解らないんですけど!
お見通しも何も、なに、超常現象のゴールデンタイム放送でも見たの?
んな超能力者みたいなこと――」
「正親町麗華――」
「――!」
ビクっと肩があがる。
「縦笛、机、角――」
「やめ、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
絶叫した乞食は、その小学生三年生に躍りかかって、
【――自分から背後へ横転――】
乞食男はその上に覆いかぶさる形。
つまり、襲ったように――他人からはみれるのだ。
それを――
「おま、おまえぇ……」
――しっている。その意味を知っている。
乞食が小学生を襲い倒した。
はい。事案である。
「もー、おにいちゃんったら、あせりすぎー!
そんなにあせらなくても、かていかのクッキーちゃんとのこってるから――あとで、たべようね♪」
無邪気な、ころころとした、大衆心理を逆手に取る、確固たる兄と妹の戯れ――が、これを見た通行人らの心に刻まれたのだ。
なので通行人は、興味なし。
もしくは微笑ましい兄妹なんだ
でもなんで兄貴は乞食?
プレイ?
となる。
ゆえに、彼女は、彼の顔に己の顔を近づけ、
にまぁ~っと。
心の底から、嬉しそうに、そして周囲の認知も、この関係も、自分次第でいつでも壊せる。壊せたら乞食君は、速攻はろーポリスメン。
の、餌食になる。
つまり、対話の中での主導権どころか、従属させるものとされるものの関係性を一発でつくりだしたのだ。
それを気づかな乞食ではないから、
言葉もまともにでしない。
しかも耳元で。
「わかってるよね。この状況。完全に私の話を受け入れないと、あんたの人生、社会的にも生命体としても……終わるよ?
人生永久について回るよ、ロリ女児襲い倒した変態野郎……て」
「はい。何でも言って下さい。従い……従い……従い……」
涙が、溢れてくる。
それを飲み込み、なんでこうなった。
なんでこうなった。
と心で慟哭しながら……
「従います」
彼は、女児三年生に、負けたのである。
*****
「でさ~、私としては思う訳よ」
朗らかに女児三年生が笑顔で笑う。
となりで乞食はありのままを受け入れようと正座で、同じ茣蓙の上に座る。
ゆいつ違うのは、彼女はあぐら。
際どすぎる布面積の少ないダーク紫のふりるつきパンティーが覗いている。
だけどそれどころではない。
彼は、正座だ。
「こんなとこで乞食してないで私様を神と崇めて契約すれば、生涯腹は減らないし、あり得ない幸福が天寿全うまであんたを襲う。
こんなに幸せいらないよ~って泣き叫ぶれべる」
「はぁ……」
「でさ、あんた名前は?」
ロリ餓鬼、やメスガキが桁桁笑いながら自分の膝をバシバシ。
もう冬のまっただな中なのに薄着の元気娘は名前を聞く。
さっき彼女を襲い倒した要因。
その話を回避しつつ、ふれさせないよう、蒸し返さないよう細心の注意の会話の中で。
「えと、僕は、北毒田見院覇王丸です」
「うん。知ってた」
「は?」
「その糞ダサい名前を自分で言える生命体か、調べてみたかった。
ワロス、ワロス、まさにいい名前じゃん覇王丸。
あ、覇王丸でいいよね?
北毒田見院君って、マジ呼びにくいの自覚してるよね?
一般社会に迷惑かけるよね?
将来就職に際して人事課の人が下噛むようね。
毒田見院覇王丸。
というか、二つ漢字名字と、二つ漢字名前しか記入欄なかったら、
どうすればいいんだろうね?」
「政府の中に高貴?とか自称する輩がいるだろうから、そこらはいずれ改変されていくと思います。なので、もう、僕を赦して放っておいてくれませんか?」
「私と契約したら、赦してあげる。縦笛の件も隠匿する」
「!?」
「!?――じゃねえよ。バラされたくなければ契約しろ。
いやなら速攻――正親町麗華の家に言って、当時何があったか、黒魔貳肆学院初等科4年2組で何があったか、
現初等科5年2組北毒田見院覇王丸。
彼と何があったのか、私は知ってるけど、彼女の口から録音機持って行って、保存して初等科中等科全校放送で御昼の時間の糞つまらんクラシックよりも、アホのオタクアニメ声優――いや、娼婦のような声――BYずぶり叔父早咲パヤオより。
のアニメОPやEDを流すより、よほど皆が聞きたがる状態が出来上がると思うのですが。覇王丸。
どう思いますか」
「何の話か分かりませんが、僕率先した美幼女一ノ瀬様と契約したいです!」
乞食こと――大道芸ができるか知らないが覇王丸はそう言った。
そこで結構可愛すぎる女児三年生は、また、にやぁ~と、この年頃の子がやってはいけない服従者を手に入れた雌の王の顔を疲労。
「洋子でいいよ」
「は、洋子様!」
「うむ、くるしゅうない。だから、ほれ、契約しろ。
したいと言え。
雌の縦笛嘗め回して机角オナやって、彼女の使ったばかりの5時間目の体育の体操着とブルマを甘噛みして臭い堪能してたこの、
……へんたい……」
――!!!!!!!!
瞬間、物乞いこと――北毒田見院覇王丸――は、背筋に見知らぬ電流が流れて、
「……あ、っへぇぇぁ……」
と、全身を震わせお目目は白目で。
一瞬あっちの世界。
凄まじい電流現象に訳も解らず膝から崩れた。
「ふん、初めての性癖開花に、あやうく悶絶死……ってところかしらね、10歳児。9歳であんな大犯罪やって、私がされてたら即通報しに職員室へダッシュ。まぁ、夕日の教室、みな下校時刻完了時に、もう誰もいないと教室で、いたしちゃった、あんたと、それを職員室に学級日誌を提出して帰ってきてしまった学校中で高根の花、目撃した正親町麗華の硬直と、持ってた今度クラスに配るわら半紙、40枚がどさばさばさ、って落ちたよね。
『あ、あ、あ、あ、ご、ごめんなさいーーーーーーー!』これがあんたの学院在籍最後の遺言状」
「ぎいいいやああああああ、いうなああああああ!というか何で知ってるうううううううううう!そして、声真似うますぎるから麗華たん、いや違う、麗華さんの声真似するのやめてええええええええ!」
「あんた、あいつを麗華たんってよんでるって……マジ……ひくわぁ。
このド変態」
ぞく……
「へんたい、どへんたい、雑魚!女にもてない……くそざこぉ……」
ぞくぞく――
「あ、」
「は、こりゃ完全にドMに目覚めたわね。
ほら契約。
もっと罵って罵倒して、罵詈雑言――小声で、耳元で――こんなかわいい女児が、あんたを甚振ってあげるって言ってんの。
さぁ、左手を頭頂部に、右手を、後ろに曲げた左足小指を掴んで、
この魔法陣で全裸で誓いなさい。
大丈夫、誰にも見えない秘術つかってあげるから。
さぁ!」
洋子の言葉に、もうただ、見知らぬ感覚だけを頼り。
覇王丸は――クロス・アウッツ!!――全裸に!
皆の前で全裸に!
もうこの時点で視られようが社会的に破滅しようがどうでもよかった。
彼女の言葉は、魅惑すぎて、もう何も考えたくなかったのである。
足元にいつの間に引いたのか紫闇に輝く五芒星の魔法陣。
その上で言われるままのポーズになって北毒田見院覇王丸は――
「宣誓、いや、契約、僕は一ノ瀬洋子様のしもべ、下僕、奴隷、なんでもいいから虐めてくれる存在になる事を認め誓い、僕のご主人様になってください! そして一番欲しいのは、麗華たんです!
あの子を下さい!
なんでも捧げますから!」
自分でも意図しない言葉がずらずらでた。
しかも、麗華を、欲しい。
そう言ったのだ。
「 正親町麗華が欲しいなら、まず私に供物として捧げる誓をたてなさい。それから使い捨てとしてお前にやるわ。
しかも美品新品穢れの無い彼女を――」
「正親町麗華たんの魂も肉体も思念も精神も心も、ぜーんぶ、洋子様にさしあげまっす!
だから、もうがまんできない!
ののしってくだざいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
と、半泣きで叫ぶ覇王丸の声はどこにも届かない。
いや、一ノ瀬洋子にだけ届くよう、細工が大気内にされているのだ。
「うふ、全部受諾してあげるわ。これにて聖ワルプルガ……ゲーテの戯曲のせいで悪しき淫乱な性行為を行う夜会ではない、真の5月1日までにすべてを奪い、お前の欲しい全てを手に入れられる契約離された。
これより我、一ノ瀬洋子はお前の御主人様となる。
つまり主だ。
そして、
お前は私の、奴隷、使い魔――
ここに魔王の名において、
我一ノ瀬洋子とすレイプサーヴァント北毒田見院覇王丸との契約は――成立!」
なんかわからないが、身体に凄まじい力がみなぎってくる。
こか◎もみなぎってきて、
彼女がフンス!と、【ソレ】を握った。
「あひん」
覇王丸の声が響く。
雑踏の音が聞こえた。
そう、今まで皆動いていないわ音が無いわの世界だった。
だが、急に時は動き出した。
そしてそのことすら失念するほど、彼女へ恍惚にされてしまったことを理解した。
「貴様との契約は成った。
これより貴様に、一ノ瀬洋子の名において――正親町麗華をくれてやる。
喜ぶがいい!
この現在において、あの雌は完全にお前の物だ!
というか、もうお前の所有物だ。
何故なら彼女はもう――」
これにより、奴隷使い魔北毒田見院覇王丸の人生が、ドマゾという性癖を看破され速攻開花。
悶絶しながら彼は10歳にして、女児三年生に人生の全てを掌握されて、でも心の奥では昂りが押さえられず……
危険なロリっ子の雄奴隷として、本格始動するのであった。
練習用なので、続きはまたそのうち。
ああ、そうそう。いきなりドMですまんな。
真にドMだよ俺は!
と、豪語できる方がいらっしゃれば、ブクマでも入れておいてください。
追加した時、わかるとかききました。
ここのシステムはよくわからなくなってて――




