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第十一章 朝
目を覚ましたとき、貯蔵庫の中は静かすぎた。
フィンは何度も母を呼んだ。いつもの声が返ってくると、疑いもしなかった。
誰も、答えなかった。
扉を押し開け、外に出る。昨日まで家があり、食べ物の匂いがあり、子供たちの声があった場所を、フィンは一人で歩いた。
一つの扉を開け、また別の扉を開けた。誰かが「もう終わったよ」と言ってくれることを、まだどこかで期待していた。
家の前の地面に、見覚えのあるものが落ちていた。昨夜、母が握らせてくれたのと同じ木の欠片――いや、それは自分の手の中にまだあった。落ちていたのは、母がいつも髪をまとめていた小さな布だった。
その瞬間、フィンは初めて理解した。
昨夜、母がした約束を、もう誰も果たすことができないのだと。




