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第十章 夜
ガラスの割れる音で、フィンは目を覚ました。
最初は、いつもの大人の喧嘩だと思った。だがすぐに、煙の匂いに気づく。
廊下に出ると、母がフィンの両肩を強く掴んだ。
「フィン、聞いて。今すぐ、古い地下貯蔵庫に入るのよ」
その顔に浮かんだ表情を、フィンは初めて見た。恐怖だった。反論する気は、一瞬で消え失せた。
貯蔵庫の扉が閉まる直前、母はフィンの手に何かを握らせた。木の欠片だった。祖母の箱の中にあったもの。
「必ず迎えに来るから」
母はそう言った。
フィンは、ただそれを信じた。
数分後、頭上から――子供が決して聞いてはいけない音が、響き始めた。




