34.主人公 (白雪過去編)
――主人公である私、白雪ことyukiは消えたエステニーを追うことを目的としている。
世界破壊者、災禍、厄災、ルティーヤーを討伐した者。エステニー。
彼に宿るルティーヤーの呪いは、その現場を目撃した我々冒険者パーティーの四人しか知り得ない秘密である。
世界の人々は我々の誰がその呪いを受けたかもわからない。故に誰を処していいかも分からない。
冒険者パーティー、リーダーの竜騎士エステニー。黒魔道士ヴィネッタ、聖騎士アルタラテ、そして私、白魔道士のyukiだ。
ちなみにプレイヤーの選んだ職業によってパーティー内のジョブが入れ替わる。例えば、私が黒魔道士などの魔法職になればヒーラーが居ないので白魔道士ポポナリアがヴィネッタの代わりにパーティーに加わっていたり。
......まあ、私がそのシステムを知る事になるのはまだ先の事だけど。
そういうところでもシナリオが変わってくるのもこのネトゲの面白い所だと彼は言っていた。
「英雄である四人だが、すぐに呪われた者を殺さなかったため大罪人としても存在する......」
その設定はちょっと面白いなと思った。ゲームといえば王様にいわれて魔王を倒しに旅をする、なんてものを思い浮かべていたのだから、こうした始まりは先が見えなくて少しわくわくしたりする。
(これって、私達がエステニーを探し出して殺さなきゃいけないんだよね?でも......出来るのかな。大切な仲間だったエステニーを)
この物語が始まる前、ゲームを起動した時に冒険者パーティーの道のりがダイジェストみたいにムービーで流れていた。そこでは苦難に見舞われながら、道を切り開き、時には涙し笑い、ようやくの思いでルティーヤーにたどり着き追い詰める様までが映し出されていた。
それを思うと、まだ初めて一時間程度のゲームだが、どうしてか涙が出た。
どうするんだろう。私の手で、やるしかないのかな。
――ふらふらと里の中を彷徨う。次に進められるヒントを得るために。
(こっちもお店か......ふんふん。そっか。あっちにも物が購入できるお店があったけど、場所で買えるものが違うんだ)
歩いていくと様々な事がわかった。ここは私の生まれ故郷。多くの白魔道士を排出してきたヒーラーの隠れ里であること。
周囲は木々に囲まれ外界から隔離されている秘境のような場所。さっき部屋の地図で確認したところ、ここは遥か北の地にあり山々に囲まれた場所に位置するようだ。
(......とりあえず、外に出ないとか)
何をどうすれとは言われてない。けれど、話を聞ける里の人々は口々に呪われし者を殺さなければと言う。つまりはエステニーを倒しにいかなければならないという事......だと思う。
そういえば、春一くんはたしか、このゲームは多くの選択肢をどう選ぶかでエンディングが変わってくるのが面白い所なんだ、とも言っていた。
エステニーを殺さない結末はあるのだろうか。私は――
ゲーム開始前の映像が頭をよぎる。仲のいい仲間達との日々。時間にして5分に満たないオープニングムービー。けれど、私達の関係を理解するには十分に濃密な思い出だった。
「......あ」
そんな考え事をしながら歩いていると、いつの間にか里の出口に来ていた。二本の細い樹木に鎖が掛かっている。
(なんだろうこの鎖は......横の木には御札がはってある)
「里の外に出たいのか?」
横を見れば槍を持った男の人がいた。声が低いから男だろう。
まるで魔女のような赤い帽子を被り、素顔は見えない。
手が包帯でぐるぐる巻になっていて、ちらり見える首元などもどうように包帯が。
カラスのように漆黒のポンチョを羽織り、槍は180くらいありそうな背丈を遥かにこえた長い物を持っている。
「でられるんですか?なら、出てみたいです」
現れたYES/NO。私はいちど外を見ておきたくてYESと選択する。
「そうか。だが、旅立つ前に確認しておきたい。命を捨てる気ではないよな?」
どうしたのだろう唐突に。もしかして私が呪い持ちかも知れないと思われているということ......?
だから里を出たら自ら命を絶つかもしれない、そういうこと?
とりあえず外を見たいだけなんだ。だから大丈夫です。
「YESっと」
選択すると彼が木に貼られていた御札を剥がした。その瞬間、巻かれていた鎖が音もなく消えてしまう。
(消えた......?)
「さあ、行くがいい。必ず戻ってこいよ」
ちなみにこの門番の台詞は有名で、プレイヤー間ではことあるごとに使われていたりする。
プレイヤーは最初、選んだジョブによってスタートの場所が違う。例えば私は白魔道士だからこの里スタートだけれど、聖騎士なら王都だったり、黒魔道士なら魔界の森。しかし、そのどの場所にもこの門番が存在しており、全く同じ台詞を旅立つプレイヤーに向けて言ってくる。
まあ、これもあの人が言っていた豆知識なんだけど。
――里の外へ足を踏み出したその瞬間。
フッ、と世界が暗転する。
「!?」
ゲームが壊れたのかと思った。そして、その暗い画面が明ければそこは――
『始まりの町【ドラナーデ】』
そう画面にでかでかとテキストが現れていた。
......どこ?ここ。
プレイヤー達は最初に生まれた場所で一通りの操作を学ぶ。そしてそれが十分になった段階で、外エリアへと出る流れになっている。そして外へと出たプレイヤーは謎の力で飛ばされ、始まりの町【ドラナーデ】にて本当の冒険が始まる。
がやがやと道行く旅人や冒険者の姿が多くある。
(......すごい)
――町の風景がいくつか映され、その最後にプレイヤーの手の甲のカットが映される。そこには紋章があり、その紋章は。
厄災、災禍、凶竜、ルティーヤーの力を宿すものに現れる印であった。
一瞬、ルティーヤーを倒した時のカットが挿し込まれた。
エステニーがルティーヤーの心臓に剣をさしこんだその時、プレイヤーであるyukiもその柄を握り共にドラゴンを屠った。
つまり、呪われたのは二人。私とエステニー。
――【Final Dragon】とタイトルが現れた。
◆◇◆◇◆
それから私は物語の行く末が気になり始めた。
結末が知りたい。仲間達の行方は、なぜ平和になった世界で魔物があらわれはじめたのか、ふたつに分かたれた呪いは二人共消えなければ消せないのか。
だが、私はそこで思い出す。
(......違う。私は春一くんの見せたかったものを見るために)
私は思い出す。彼の言っていたダンジョンの事を。
確か、ダンジョンの名前は......『ベイル』
思い当たった私は宿屋へと駆け込む。そこには誰でも自由に閲覧できる世界地図が掛かっていて、閲覧に料金もかからない。私はそれを利用した。
(......ベイル、ベイル......ダンジョン、すごくたくさんある)
この町の周辺エリアだけに括っても三十以上はあるのでは、と思うほど無数にダンジョンのアイコンが点在していた。
それを一つづつカーソルを合わせ確認していく。
これもまた後に知ったのだが、地図の上に検索窓があり、そこに行きたい場所を打ち込み検索をかけると、地図上にある目的地の名前が赤く光りわかるようになっているらしい。
それを知らない私はひとつひとつと地道に探していた。はたから見れば地図を熟読してる辺な女に見られていたんじゃないかと思う。
(......――あ、あった)
そうして、ようやく見つけたダンジョン『ベイル』
見つけられてホッとしたのもつかの間、問題がひとつ浮かび上がってきた。
......このダンジョンの場所、けっこう遠いな。
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