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33.旅の始まり (白雪過去編)



「春一くん、私達はもう中学生でしょう。 ゲームなんてしてないで勉強やスポーツに励むべき......違う?」


「ん?ああ、だな......」


素っ気なく返事をする彼。中学生になると同時に何故か私は春一くんに苛立ちを覚えるようになっていた。

それは今思えばゲームが嫌いだからというわけでは無かったように思える。


男の子同士のように遊んでいた二人が、思春期に突入したために起こる心のバグ。いや、正常だからこその......そう、あれは嫉妬だったのだと、時を重ねた今なら素直に認められる。


春一くんがネトゲを初めて知り合った中には女性がいた。だから、私は彼をそこから引き離そうとあれやこれやそれっぽい理由をつけ、引き離そうと一生懸命だったのだ。


けれど離れていくのは、私と春一くんの心の距離だけだった。


好きなものを貶された時の彼の表情に、私は目を背けつつ学生だからという最もらしい理由を使いなんとかしようと足掻いた日々。やがて二人の接点は薄れ、自分の気持ちを誤魔化すように私は部活動へと打ち込んだ。


そして、それから......どうしても春一くんが諦められない私は、振り向いて欲しい一心で自分を磨いた。


髪を伸ばし、肌をケアし、化粧も覚えた。彼の気を引きたくて、私とまた居てほしくて。


だが、結果から言えば......それは逆効果だった。


私が変われば変わるほど、周囲の反応は変わり、春一くんは離れていった。


そして自覚する。


私の気持ちも、あの頃とは違うということに。


そうだ、私はもう春一くんの事を単なる友達とは思えなくなっていた。私は、彼のことが――


自分の心を呪う。自分の性を呪う。私が私であるために、崩れた関係に。


(......だから、この感情は消さなきゃ)


頬に触れた小さな雪。


再びあの頃のように戻れはしない。


でも、あの頃のようにはいかないだろうけど、彼の心を理解するくらいは......普通の友達に戻ることは出来るかもしれない。


(......ゲーム、やってみようかな)


ほうっ、と空に消えた吐息。迷いが抜けたかのように少しだけ心が軽くなったように思えた。けれど、それと同時に何かを失ってしまったかのような気も。


――それから、私は悪戦苦闘しついにネトゲができる環境を整えることができた。


【Final Dragon】


春一くんが言っていたネトゲ。とても人気のゲームで、つい最近まで新規で始める事が出来なかったらしい。凄いな。


(......とりあえず、そうだ。ゲームを少しでも進めて、春一くんとの話題をつくらなきゃ)


そう思いコントローラーを握ったその時、私の中に重い気持ちが芽生えた。


春一くんとの話題......私、このゲーム楽しめるのかな。


それは当初の目的ではあったが、いざ始めるとなると自身がいやしく思え嫌悪感が芽生えた。だって、私はゲームが好きでやるのではなく、春一くんとの仲直りが目的だから。


今、私はゲームを楽しもうとしてはいない。ただ、ひとつ......友達を取り戻したくてこのゲームを利用しようとしているだけだ。


(......だめだな、私は)


机の端に置いた、淹れた紅茶が冷めていく。


......でも、孤独は嫌だ。


汚くても良い。いやしくても、良い。春一くんに嫌われたままのほうが、怖い。


(やろう。とりあえず、少しでも......それで駄目なら、その時に考えよう)


薄っすらと感じていた。「これで駄目ならその時に考えよう」それが無理な事。彼との接点はここでしか、この場所にしか作れない。


今は、もう。


――私は不安から逃げるようにNew Gameの文字を選択した。


(キャラクター製作......これは、どうすれば)


身長、肌の色、筋肉量、様々な項目があらわれ私の頭はパンクした。

これって、何が正解なんだろう。......わからない。


始まった瞬間にさっそく難関に直面してしまった。これがテストなどの問題文なら意図を理解し、正解を導くこともできるが脈絡もなく、さあ選択しろと言われてしまうと困ってしまう。


間違えたらどうなるんだろう。もうやり直しはできなさそうな......そんな雰囲気の音楽が流れている。気のせいかもしれないけど。


その時、ふと目に入る小さな妖精のキャラクター。吹き出しにアドバイスという文字が書かれており、そこには「困った時に!ビギナーでも!簡単キャラクター製作!」とあった。


(.......なんかある!)


これだ、と思った。これこそが私のような素人が使うべきシステム。妖精さんありがとう。


その妖精をクリックして進めていく。すると、二つの選択肢が出てきた。ああっ、いやだ......選択肢は嫌だ。

一つ前で無数の選択肢に頭を悩ませていた私はもはや二つの選択肢ですら若干の拒否反応が出てしまうレベルになってしまっていた。嫌なレベルアップだ。ゲームだけに。


けれどよく見てみるとその二つの選択肢はこう書かれていた。


『直感型クリエイト』【私の質問に答えていって、理想のキャラクターになる?例えば、カッコいいのが好き→YES/NOみたいな。全てで10ある質問に答えていけば、きっと理想のキャラクターになれるよ!】


『現実型クリエイト』【あなたの世界の自身の姿をもとにしてキャラクターを作れるよ!写真を取り込んでそれを元にキャラクターが出来上がる!補正もされるし、調整も出来るよ!】


こ、これは!私はノータイムで下を選んだ。10も質問されたくない。脳みそが沸騰してしまう......うん、もう考えるのは嫌だ。


(......えっと、撮影してください?このゲームに付属していたカメラで撮るんだよね......?)


カシャ、と無事に顔を写すことが出来た。横、上、正面。そして体全体。これでよし。


処理中、と画面に文字が出る。妖精さんがふわふわと空を飛んでいてそこには63%の文字とバーが出ている。待てばいいんだよね、これ。にしてもこの妖精さん可愛い。


やがてそのバーが点滅し、パーセンテージも100になった。


暗転し、現れた私の分身。キャラクターが出来上がった。これが、私か。なんか耳が尖っている。あ、エルフっていう種族だからか。オススメってあったし種族は決めなきゃ駄目だから選んだんだった。


......。


ふと、私は思った。春一くんはいつもこんなに大変な事をしているんだと。ゲーム開始直後でこの大変さなんだ。ゲームを進めていけばおそらくはこれ以上の面ど、大変な事がたくさんある。それをこなしている春一くんは凄い。


勉強はあんまり得意ではない彼だけど、こういう事が出来る人のほうが凄いと思う。クリエイト、創造......答えのない答えを見つけ、形にする。


私は勉強はできるほうだと思うけど、こういった物とは違ってあれは答えがちゃんとある。それに、時間をかけてしっかりと学べば多くの人が身につく物だ。


だから、凄いと思う。


(......私は絵も描く。けど、得意なのは描き写すことだけ......)


――ロードが終わり、物語が始まる。


暗い世界。多くの命が失われ、朽ちた。その元凶となったのは眼の前にいる、巨大な黒いドラゴン。


名をルティーヤー。禍々しい瘴気を纏い、赤い雷光を宿す。世界を終焉に導く、災禍。


しかし、そのルティーヤーも私達冒険者パーティーによりあと一撃で倒せるところまで追い詰めることができていた。


失われた命は戻ることは無い。消し飛んだ大地や自然も、ルティーヤーの瘴気により焦土と化した街も何もかも戻ってはこない。


けれど、まだ......命はまだこの世界にある。


――失わせは、しない。


あと一撃で災禍を退けられる。が、しかし......問題があった。


やつを殺せばその呪いを殺した者が宿す事となる。そして、やがてその宿主はルティーヤーとなる。


『なあ、yuki......あとは、頼んだ!』


後は頼んだ。直感的に理解する。『ルティーヤーを宿した俺を殺してくれ』と。


そうしてパーティーメンバーリーダーのエステニーはルティーヤーを射ち、世界に一時的な平和が戻った。


――そして、3年後。どうしても殺すことの出来なかった仲間、エステニーが消え......世界に再び魔物が蔓延り始めた。



そのプロローグと共に私、yukiというプレイヤーの世界が始まった。







【とても重要なお願い】


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