26.しょく (日夏過去編)
「これは......きんぴらごぼう!?」
ゲームの合間によく和食が好きなのと雑談で聞いてはいたが、おやつに出すくらいのあれなんだ。
イメージとあわねえな......いや、これが噂のギャップ萌ってやつ!?
「これね、いつもはこんな遅い時間に食べないんだけど、今日は特別サービス」
「これも真白さんが作ったのか?」
「そだよ、自信あるんだ〜きんぴらごぼう。 さ、食べて食べて」
「あ、ああ、いただきます......」
「アタシもいただきま〜す!」
......はむっ
「――ッ!!?」
なんじゃこりゃあ!!素材の風味と胡麻の香り、全てがバランス良く合わさっている、更には何かはわからないが真白のアレンジがされており、今までのきんぴらごぼうに対するイメージが覆る......要するにめちゃくちゃ美味い!!
「すっげえ美味い!! ......真白さん、めちゃくちゃ料理上手なんだな。 これは飯が欲しくなる」
「わかる! 今度ごはん用意しておくね! えへへ」
俺も料理はするが、多分真白の方が上手いなこれ。漬物ときんぴらごぼうでわかるレベルの実力差。ちょっと悔しいけど美味しい物をいただいた感動の方が上回っている。
「まあ、しかし今度はなさそうだけどな」
「え、どゆこと?」
「いや、ほら......真白さんはもう一人でもやっていけるレベルになっただろ。 俺もそろそろレイドとかの準備があるし、こうつきっきりと言うわけにもいかなくなる」
「で、でも、まだ教えてほしいんだけど。 アタシ、ハルくんの邪魔はしないから......お願い!」
ずいずいっとよってきた真白。
「まてまて、別に教えないとは言ってないから。 ただ、こうして真白さんの部屋に来ることはやめようと思う」
「え、なん、で」
「流石にこう入り浸るように異性の家に出入りするのはよろしくないだろ。 俺ら高校生だぞ」
「そりゃ......まあ、そうだけどさぁ」
基本的に元気の塊みたいな彼女のテンションが枯れゆくひまわりのように俯き落ちていく。
まあ、気持ちはわからんでもない。真白の成長するスピードの早さや、ストーリーを共に追うことで共有できる感動は、何にも代えがたい時間だった。
そしてそれとは少し違うかもしれないが、俺はちょっとした娘の人生を辿っているかのようで楽しかった。
もしかして、娘を一人暮らしさせる父親ってこんな気持ちになるのかな?だとしたらちょっと......いや、結構辛いかも。
「大丈夫、別に一緒に......遊ばなくなる訳じゃない、グスっ」
「うん、そうだね......え!?」
悲しげな顔が一気に驚愕の表情にかわる日夏。
「え、あ」
自分の目元に伝う涙に、遅れて俺も気がついた。
「だ、大丈夫?」
「ああ。 あれ、なんだこれ......すまん、急に」
真白はポケットに手をいれ、おもむろにハンカチを取り出した。
「はい、ちょいと失礼」
「え」
くいっと俺の顎をあげ、そのハンカチで俺の涙がを拭き始めた。あっけにとられた俺はなすがまま、直立不動で動けずにいた。
やがて拭き終わると、彼女は優しく微笑む。そしていつかのように俺の頭をなでた。
「アタシも同じ」
「え......」
「寂しい」
いや、俺はそんなんじゃ。と思いかけたが、行き着く答えは同じことと気がついた。
そうか、俺は寂しいのか。
この数ヶ月に渡る彼女との冒険の日々が終わることに、残念という気持ちを覚えるとは思わなかった。
「ふ、寂しくて泣くとか気持ち悪過ぎて笑えるな、ふふっ」
「そんな事ない! アタシだって寂しくて泣きそうだし!」
真っ直ぐと此方を射抜く、碧い瞳。




