16.ひな(日夏過去編)
――あれはそう、冬が春に急かされるかのように、桜並木に蕾が付き始めた時期。
真白日夏との出会いは唐突に、そしてちょっとした恐怖を伴ったものだった。
残った雪も日毎に姿を消し、かわりに息吹く青い草。始まった高校生活に何もかもが手探り。だがしかし期待と不安の入り交じる初々しい4月をこえ、5月の中旬。
「左っ手デバイス♪ 左っ手デバイス♪ 届いたかな〜♪ FDオリジナルの左っ手デバイス〜♪」
スキップで帰路を駆け回る式村春一(高1)
高校生になりたて、同年代の学生達が新しい交友関係を築くべくいそしんでいる中、ゲーマーの心を忘れずそれだけに生きていた俺はやはりというべきか、ボッチ一直線だった。
「たっだいま〜っと」
帰宅後、手洗いうがいを済ませたあとすぐにPCを起動させる。その合間に制服をハンガーにかけ......ないで、ベッドにぶん投げる。
「オラァッ!!」
そこをファヴリース(殺菌消臭)でシュッシュッ!と狙撃。
「......よし、オッケ」
何もよくない、よくはないが......時間短縮のためには仕方のない犠牲である。
しかしなぜこのような蛮行か許されるのか、その理由は親が仕事で多忙のため、基本的に家にいないからである。
なんの仕事かも定かではなく、特別に興味もないので聞いたこともないが、帰ってきたとしても1日もせずにまた出かける様子から、とてつもなく忙しい仕事なんだろうなと感じていた。
だから、基本家には俺しかいないし、こうして制服ぶん投げたりしても文句を言うやつはいないのだ。
ただ自炊と洗濯などの家事が面倒だとは思うが。料理は好きだからまあ、いいとして......溜め込んだ洗濯物を処理するのが億劫過ぎて辛い。
まあここまでなんやかんや言ったけど、要するに一人暮らしネトゲ生活最高っつーこと。
いやまあ、受験シーズンを苦しみ抜いたご褒美っつーことでね?
少しの間くらいは許されるはず。多分。
その時――
――ピンポーン
「はっ、来たか!!」
予約注文から数ヶ月。まだかまだかと発売を心待ちにし、何度も何度も公式の商品ページを眺め思いを馳せた。まさかの発売延期を聞き涙をながした事もある。
そして、そんな欲しくてやまなかったFD専用左手デバイスがついに届いたのだ!
「はーい、ちょっと待ってくださーい!」
ガチャ
「お荷物お持ちしました、こちらにハンコかサインいただけますか」
「あ、サインします」
配達証の受け取り印部分へウキウキでサインを書く。
(わー、すげえ! 箱もFD専用なんだ......ロゴかっけえな!)
ペンと配達証を渡し、かわりに左手デバイスの入っている箱を受け取る。
そして俺はその時気がついた。
配達員の向こう側から物凄い形相でこちらを見ている女子に。
(......)
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