第20話「パス」
飛花は1位を目指して全力で走行し続ける。
松下の20号車に追いつく。
「このままDRS使って追い抜ける。」
その時、松下が突然進路を譲る。
ピットのメンバーたちも驚く。
「行けっ!飛花っ!」
飛花の姿をミラーで見ながら叫ぶ。
オーバーテイクする瞬間、飛花に人差し指で前を指差す。
時速300km/hでのやりとりだが、飛花は気付いた。
『勝つんだ飛花!』
「了解!」
松下の意図に気づいた亮も無線で叫ぶ。
現在は2位。
残り周回数は5。
前方の1位とのタイム差は2秒後半。
その時だった。
突然、ステアリングのインジケーターが黄色く光る。
そしてモニターに表示されたのは「VSC」の文字。
「うそ、このタイミングで?」
『飛花、VSC、VSCだ。ペースを落とせ』
聞こえてきたのは兄の声。
「何が原因なの?」
『後続でパーツを落としたクルマが出て、止まった。それが原因だ』
「タイヤの消耗が減るのはいいけど…VSCじゃ、差は詰まらない…」
VSC、バーチャル・セーフティカーはF1でのレース中セーフティーカーの出動が必要ないほどの事案が起きた場合、規定のタイムのペースに制限し、事案の解消をする、というものだ。
規定のタイムで走行するため、セーフティーカーのように差は詰まらないのだ。
しかし、私の願いが通じたのだろう。
モニターに表示されたのは「SC」の文字。
『飛花、セーフティーカー、セーフティーカーだ!』
「来た…思いが通じたみたい。」
なんと、VSCの原因になったマシンの他にストップしたマシンが出た。
『…松下、松下のパワーユニットが燃えた。あいつはリタイアになる。』
「…!?」




