第12話「1992」
赤旗の中断が解除され、セーフティーカー先導のもと、レースが再開する。
全車、セーフティーカーのあとを長い列をなして進んでいく。
『スタートダッシュ肝心だからな!ミスるなよ!』
「わかってるって!」
24台の隊列がホームストレートに戻ってくる。
『グリーン!グリーン!GO!GO!』
監督の合図で一気に加速する。
1コーナーを1番に通過したのは76号車。
その後を永野が追う。
「よし、1コーナー、抑えた。あとは制限時間まで抑えきるだけ…」
サーキットのフェンス、バリアの修復に時間を要した結果、時間制となり、残るは30分となった。
30分後、チェッカーフラッグが振られる。
そこで勝者が決まる。
飛花がミラーを見ると、後ろには真っ赤なフェラーリのF1マシン。
「永野さんのマシンか…」
「ヒロくんは後ろの方にいるから気にしなくて良いのはありがたい。あとは前のあいつを絶対ぶち抜いてみせる。」
『飛花、残りは18分、18分だ。抑えるんだ!』
「わかってる!」
時間の経過を待つ間、2位の永野はぐんぐんと追い上げてくる。
「まずい。どこかで隙を見せたらすぐに抜かれる。でも、逆にとればミスに繋げられるかもしれない…」
気づけば3秒ほどあったタイム差も0.2秒にまで縮まった。
もうフェラーリの永野と2人は接触寸前。
ファンたちも2台がそのままぶつかってリタイアしてしまうことを恐れていた。
『残りは1分、この周で最後だ!抑えるんだ!飛花!』
「了解!」
真っ赤なマシンに乗る永野と、真っ黒なマシンに乗る田邊。
2台はまるで1992年のセナ、マンセルの対決のような接戦を繰り広げていた。
「昔、テレビで言ってたっけ?〝ここはモナコ・モンテカルロ、絶対に抜けない!〟って。なら、その言葉を体現してみせる!」
何度も2位の永野がオーバーテイクの機会を伺う。
が、なにかが足りず。
飛花がモナコGPのチェッカーフラッグを1番に受ける。
「やったぁ!勝った、勝った、勝った!」
『おめでとう飛花!優勝だ!』
バトルを制し、そのままF1初優勝を決めた。
1のボードの前に76号車が止まる。
「やっったぁ!」
最高の笑顔でメカニックたちに応える。
その時、6位でレースを終えた松下が来た。
「飛花、ついにF1初優勝だな。しかも、モナコって、最高じゃないか。」
「はい!本当に最高ですよ!」
「さ、そろそろ、表彰式があるから行ってきな」
「はーい」
1位の場所に飛花が立つ。
その瞬間、大きな歓声が上がる。
表彰台に立つ3人がトロフィーを受け取る。
飛花がトロフィーを高く掲げる。
表彰式後。
「おめでとう。」
「ありがとうございます!」
「これなら来週も平気だな!」
「いや〜、今回はセーフティーカーと赤旗のおかげって感じですよ。まだまだですよ…」
「本当に謙虚だな。でも、レーサーとしてはその精神はいいものかもな。」
そして、飛花はモナコGPから3連続で表彰台を獲得した。
F1は2週間ほどの夏休みに入る。




