96、洗脳道具を破壊する魔道具
俺は、さらに話を続けた。
「シードルは、洗脳道具を使っている。革命軍の奴らには、左耳に仕込んでいるようだ。それを破壊すれば洗脳は解ける。破壊するための魔道具を作る。それを各地にばら撒け」
「はっ!!」
「監視用の道具だが、シードルは光の柱だけでなく、魔物も使っている」
「魔物? 知能が低いのにですか」
「いや、光の柱と同じく、ただの道具として使っている。頭に仕掛けがあるようだ。魔物を作り出す場合もあるかもしれんが、俺が見つけたものは、頭の左側に魔道具を仕込んであったようだ。魔物を倒したら、頭が吹き飛んだ」
「えっ? 勝手に吹き飛んだのですか」
「うむ、証拠を残さぬためだろう」
「なんてことだ」
「おそらくサーチでの発見はできない。魔物を油断させると、見つけられたがな。そのために生きた魔物を使っているのだ」
「腐っていますな……神は」
「あぁ、狂っている。各地の情報を集めよ。不自然にヌシが変わったり、生態系が変わっていたら、そこにはシードルの監視用の魔物がいる。すべて排除せよ」
「はっ!!」
配下達は、それぞれ打ち合わせを始めた。優秀な奴らだ。短期間で、キチンと成果をあげるだろう。
ここからは、スピードが必要だ。戦後復興が完了したという告知は、まだしない。だが、そろそろ完了するということは、わかっているだろう。
きっと、シードルは、革命軍を使って魔族の排除を始める。さらに、洗脳した勇者を使って、魔王軍を滅ぼそうとするだろう。そのために光の剣を量産しているはずだ。
勇者であっても、光の剣を持たせると、魔王軍に対する攻撃力は、数百倍になるだろう。魔王城を勇者に攻め込ませるわけにはいかない。
シードルが最終行動を起こす前に、終わらせたい。
(だが、上手くいくのか……)
俺に神の記憶が伝えられたことで、俺は神シードルのチカラを知った。いま、アイツは本当にリセットする魔力はないのだろうか?
俺から回収できなかったことで、次の一手を考えているのではないか。いや、もうすでに策を講じているかもしれん。
あの光の柱は、ただの監視道具なのか?
(ふっ、考えていても仕方ないな)
さて、俺は、洗脳道具を破壊する道具を作るか。
俺は、ペンダント型のアイテムボックスから、あの呪具を出した。
『…………』
うん? 無言だな。逆に気味が悪い。兵器製造の呪具は、あちこちをキョロキョロと見回している。
あー、なるほどな。ここには主要な配下が揃っているからか。いま、どこにいるかの状況把握をしているらしい。
「おい、何をキョロキョロしている? 今回は、兵器製造だぞ」
『あのぉ〜、マルル様は〜?』
「さぁ? 部屋で寝てるんじゃないか」
『ここは、あのぉ〜』
「温泉街の宿屋だ」
『あら〜ん、なんだ、びっくりしちゃったわぁ〜。コワイおじさまだらけなんだものぉ』
「おまえなー……」
『いや〜ん、怒らないでぇ〜』
兵器製造の呪具は、いつもの調子に戻っていた。
だが、配下のひとりは、コイツの気持ち悪い声が聞こえたらしい。打ち合わせを抜け出して、こちらにやってきた。
「カルバドス様、この呪具、またおかしな話し方をしていますね。直しましょうか」
「直せるか?」
「はい、数日いただければ」
『いや〜ん、絶対いやぁ。痛いことしないでぇ〜。スカタンだわぁ〜』
そう言って俺の足元にすり寄ってきた。あー、うざい。俺は蹴り飛ばしたが、また懲りずにすり寄ってくる。
『やだやだやだやだぁ〜』
野太い声で、やだやだと言われる方が嫌だとわからぬか?
「あー、悪化してますね」
「とりあえず今は、シードルの洗脳道具を破壊する武器作りが先だ。コイツの教育はそのあとでいい」
「ハッ! かしこまりました」
『いや〜、痛いことするなら、作らないわぁ』
「そうか、それなら、いま、叩き壊すだけだ」
『あ〜ん、嘘よ嘘、ちゃんと作るわぁ。だから、壊すなんて言わないでー、痛いことしないでぇ』
あーうざい。まとわりついてくるなよ。
コイツ、わざと俺を怒らせようとしているのではないか? まとわりついて、ぎゃあぎゃあ騒ぎたいだけのような気もする。
俺は、呪具をむんずと掴み、作るべき武器のイメージを流した。武器だとわからないもの、そして、左耳付近に付けるもの、洗脳道具を無力化し、逆に洗脳道具を付けていない者には無害なもの。
見た目はこだわらないが、強制的につけさせるものより、自発的につけるものがよい。
『うーん、音が出る物でもいいかしらぁ?』
「うるさい音でなければ、別に構わぬ」
『じゃあ、マルル様のオルゴールロボを、小型化して耳に装着できる兵器にしてもいいかしらぁ?』
「音楽の道具か」
『どんな洗脳道具かはわからないけど、こっちが乗っ取ってしまえばいいだけだわぁ。でも、素材が足りないわぁ』
俺は、配下の顔を見た。
「山に、廃材置き場があります。マルル様が、カシャンコの素材だとおっしゃるので、保管してあります」
「では、案内してくれるか」
「ハッ、かしこまりました」
俺が、呪具の頭をつかむと、なぜか楽しそうにバタバタしている。コイツは、構われるのが好きなのか?
配下は、ワープを使った。
俺達は、街のすぐ近くの山の中へと移動した。この山は風が強く寒い。俺は自分と配下にゆるいバリアを張った。
「えっ? あ、ありがとうございます」
「うむ、人間のガキの姿では、少しこの寒さは辛いからな。俺は今まで、そんなことは想像したこともなかった。おまえ達には、随分と無茶な命令もしたな」
「い、いえ、とんでもございません」
だが、俺には言葉の裏の言葉も聞こえてしまうのだ。やはり、何度も辛いことがあったようだな。そして、俺の配慮に戸惑っているようだ。
ふっ、人間のガキの姿に化けなければ、気づかなかったことだ。俺も、まだまだのようだな。
「こちらです」
「すごい量だな」
俺は、呪具をゴミの山に放り投げた。
『いや〜ん、痛〜い。やーん、やー』
「さっさと、素材を集めろ」
俺がそう言っても、壺状のケツをふりふりしていたが、突然、素材回収を始めた。
ふっ、配下がすごい顔で睨んでいる。俺よりも、こいつの方が怖いらしいな。
『何個作りますかぁ?』
見た目が5倍ほどに膨れた呪具がすり寄ってきた。なるほど、限界まで素材を回収したか。このサイズだとペンダント型のアイテムボックスには入らない。やはり、自由にさせるとこうなるのだな。
「そうだな。数百万個は必要だろう」
『そんなにたくさんなのぉ? あらま、どぉしましょ』
俺は、呪具の言葉の裏まで、わかるようになっているようだ。魔力が足りぬか。そういえば、全く魔力の補充はしていなかったな。
俺は、魔力を右手に集めた。呪具は、俺を怒らせたのかと焦っている。ふっ、ビビらしてやるか。
そのまま、何も言わずに魔力を放った。焦って逃げようとした呪具が、パタリと倒れた。完全に怖れ、震えているようだ。おどかしすぎたか?
だが、今までの不快なストレスを発散できて、俺はスッキリとした気分だった。
「何を転がっている? さっさと作れ」
『えっ? あっ、ふぁっ? びっくりしたわぁ〜。魔力が満タンよぉ〜』
呪具は、ザラザラと作った武器を吐き出し始めた。いつもなら、オェーと、不快な声を出すが、さっきのことでビビっているためか、妙におとなしい。
その一つを手に取り、サーチ魔法を使った。だが、ただのオルゴールの表示だ。作動させて、耳に当ててみると、音楽が聞こえた。だが、時折、人間には聞こえない音域の音が混じっている。ふむ、この音か。
シードルの神具が作った魔道具よりも、呪具が作り出した魔道具の方が、呪術に関しては圧倒的に能力は高いだろう。この音域の音が、神具を破壊するようだな。
「おまえ、魔法袋はあるか?」
「ハッ! ございます」
「この魔道具を収納してくれ。コイツは、まだまだ作るつもりのようだからな」
「かしこまりました」
「これをどう使うかだが……」
配下も、俺と同じように、サーチをして自分の耳に当てていた。彼は、呪術士だ。俺よりも、この魔道具の性能はわかるだろう。
「ただのオルゴールに聞こえるでしょう。注意をしていなければ、高い音域の音には気づきません。高い音域の音は、破滅の曲ですね」
「破滅の曲? 聴き続けると死ぬのか?」
「いえ、威力を抑えてあるので、この魔道具のすぐ側のものにしか効かないでしょう。人間の脳までは届きません」
「人間には無害か?」
「洗脳の道具が仕込まれているなら、その道具を破壊するだけですね。逆に仕込まれていない人間が使うと……」
「害が出るか」
「害というほどではないですが、耳がかゆくなるでしょうね」
「ふっ、それならよい。これでシードルの洗脳道具は破壊できるか?」
念のためにそう尋ねると、彼は少し意外そうな顔をした。ふむ、俺はいつも、こんな言い方はしなかったな。彼は、頼られたと感じたらしい。
「はい、十分すぎる効果があると思います。誤って、曲を流している間に他の魔道具の上に置くと、それも破壊してしまいそうですね」
「ふむ、では、耳から離れたら、曲が止まるようにする必要があるな」
その話を聞いて、兵器製造の呪具は慌てていた。そして、作った魔道具に手を伸ばしている。壺状の身体から、細い無数の糸がわちゃわちゃと出てきて、かなり不気味だ。だが、作り替えているのだろう。
しばらくすると、機嫌よく壺状のケツを振り始めた。調整も上手くできたらしいな。
「これで完成だな」
「すごい数ですね」
「ゴミの山が減ったな。何度か補充しながら作ったからな」
「マルル様が、カシャンコの素材が減ったと騒がれそうですが……」
「やかましいだろうな、はぁ」
配下は、ニヤッと笑っていた。そして、大量の小型オルゴールを魔法袋へと収納した。




