第109話 どこにでもいる人達
「ローレンスの方はどうだ?」
メアリーのことを聞くんじゃなかったわ。
「確かにローレンスさんからエリックさんが来たら連絡してほしいという依頼がありますね」
「ローレンスはまだ王都にいるのか?」
「ええ。昨日も仕事をしておられます。今日はまだ来てませんが、まだ王都にいると思いますね」
ちゃんと残ってくれたか。
「連絡は取れるか?」
「ええ。ローレンスさんが宿泊している宿屋を聞いています。お時間をもらえましたら連絡しましょう」
連絡か……
「いや、それだと二度手間だし、そちらの面倒になる。場所を教えてくれたらこちらから訪ねよう」
「そうですか? ローレンスさんは【木の葉亭】ですね」
えーっと……
「すまん。どこだ?」
カウンターに地図を置き、受付嬢に聞く。
「【木の葉亭】はここですね」
受付嬢が南の方の辺りを指差す。
西の通りを少しだけ東に入った場所だ。
「歓楽街か?」
「ですね。この辺りは安い宿が多いところです。ただ、治安がちょっと悪いですね。まあ、この時間は大丈夫だと思います」
あいつ、金がないのかね?
Bランクなら持っているだろうに。
「わかった。もし、入れ違いになったら俺達は【蒼瑠璃の宿】に泊まっているということを伝えてくれ」
「かしこまりました」
受付嬢が一礼したのでギルドを出た。
そして、西の通りなので来た道を引き返していく。
「ローレンスさんがいそうで良かったわね」
まあ、いるだろうなとは思っていた。
「そうだな。アンジェラ、賭けをしないか?」
「んー? 何の?」
「ローレンスがすでに隊長に会ってるかどうか」
「会ってないんじゃない?」
賭けにならんか。
「絶対に会ってないぞ」
「そこまで知った人じゃないけど、話を聞いているとそんな気がする」
俺達は中央の広場を抜け、西の通りに入ると、【蒼瑠璃の宿】も通り過ぎる。
すると、徐々に町の雰囲気が変わりだした。
「なんか明らかに変わったわね」
アンジェラもわかったようだ。
「歓楽街だ。この辺はまだ飲み屋が多いが、奥に行けば行くほど怪しい感じになる。そして、その先がスラムだ。昼はまだ普通な方だな。夜になると、怪しい光が灯りだすぞ」
そこは何年経っても変わらないだろう。
「ふーん……メアリー達に近づくなって言った方が良いわね」
確かにな。
「帰ったら伝えておくか」
俺達は地図を眺めながら通りを歩いていくと、立ち止まる。
「ここを右?」
「っぽいな」
右には道があるのだが、2、3メートルの幅しかない。
しかも、建物と建物の間のため、ちょっと薄暗い。
「行きましょう」
「ああ」
俺達は右に曲がり、歩いていく。
すると、家の前の階段に腰かける2人の若者がいた。
別に人がいるのは珍しくないのだが、いかにもな悪ガキなうえにこちらをじーっと見ている。
というか、見ているのはアンジェラだ。
感じ悪いなと思いつつ、素通りする。
別に声をかけてくる様子もないが、通り過ぎた後も後ろからじーっと見ている気配がした。
そのまま地図を見ながら進んでいったのだが、前方にまたもや2人の若者が立っていた。
というか、さっきの悪ガキ2人だ。
どうやら先回りをしていたらしい。
これは来るなと思ったら2人の悪ガキが道を通せんぼしてきた。
「おい、ここを通りたかったら通行料を寄こしな」
「金がねーならそっちのねーちゃんでもいいぞ」
いるんだ……
こんなテンプレゼリフを吐くチンピラ……
「邪魔。失せなさい」
アンジェラが一蹴する。
「怖いねーちゃんだ。娼婦か?」
「俺達と遊ぼーぜ」
放っておいたらどんなセリフを吐くんだろうと気になったが、そういう状況でもない。
「ガキ共、遊びたいなら他所を当たれ」
しっし。
「あん?」
「痛い目を見ないとわかんねーか?」
わからないのはそっちだ。
仕方がないので転移を使う。
「あ? え? どこに……」
「き、消えた!?」
2人がきょろきょろしている。
「消えてない」
そう言って、2人の後ろから手を伸ばし、2人と肩を組む。
「え?」
「ま、魔法使い……」
「なあ、俺は知人を訪ねるためにここを通っただけなんだ。通行料は別にいいだろ」
そう言って、肩をぐっと掴む。
「な、何を……」
「は、離れないっ」
2人は俺を引きはがそうと力を込めるが、そんな貧弱な力では無理だ。
「魔法使いに手を出すなって言われなかったか? 軍人を見つけたら逃げろって教わらなかったか?」
もう軍人じゃないけどな。
「軍人……チッ! 何でもねーよ」
「ただのナンパだよ。別にいいだろ」
明らかに日和りだした。
金を出せと脅しておいて、ナンパで済むと思っているんだろうか?
「そうか。じゃあ、失せろ。俺が女連れで良かったな」
「くっ! 行こうぜ!」
「行くから離せよ」
離してやると、すぐに2人は逃げるように去っていった。
「確かに治安が悪いわね」
「ただの悪ガキだし、可愛いもんだ」
ジェイク坊やみたいなもん。
「さっさと行きましょう。この辺りは好きになれないわ」
「そうだな」
ローレンスもこんなところに泊まるなよなと思いながら歩いていくと、【木の葉亭】を見つけた。
「ここね。案外、良い宿じゃない?」
見た目はちょっと古いが、そこまでぼろいわけでもないし、むしろ綺麗にしていると思う。
「穴場的なところなのかもな。入って店員に聞いてみよう」
「そうね」
俺達は扉を開け、中に入った。
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