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元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~  作者: 出雲大吉
第3章

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第108話 目に入れても痛くないくらいに可愛い娘


 翌日、この日も朝風呂に入り、美味い朝食を食べた。

 そして、優雅に食後のコーヒーを楽しむ。


「休暇も良いもんだな」

「そうね。水筒作りの時は大変だったし、こういう休みも必要よ」


 アンジェラも優雅に微笑みながらコーヒーを飲んでいる。

 さすがに2日も経てば宿の格に対する気負いもなくなったようだ。


「さて、今日はギルドに行こう。せっかくだし、俺達も本部に行ってみるか?」

「本部以外にもあるの?」

「冒険者の数も多いからな。東門、西門、南門の近くにもあるぞ。とはいえ、中身は一緒だし、情報共有されているからどこに行っても同じだな。たとえば、西のギルドで仕事を受けて、東のギルドで依頼報告をして、南のギルドで依頼料をもらうことも可能だ」


 そんなことをする奴はいないと思うが。


「へー……便利ね」

「この町は広いからな。ギルド本部は東の通りの中央近くにある」

「そうね……せっかくだし、本部に行ってみましょう」

「じゃあ、行くか」


 俺達はコーヒーを飲み終えたので宿屋を出て、中央の広場を目指す。


「ねえ、エリックって10年前はここに住んでたんでしょ?」


 アンジェラが聞いてくる。


「そうだな。子供の頃はスラムにいて、15歳から軍に入った。16歳から戦場に出たが、そこからはノクスとここを行ったり来たりだな」

「どこに住んでたの?」

「今もあるかはわからんが、北西の方にある軍の寮だな。あそこは軍人なら無料なんだ。アーヴィンやローレンスもそこだったな」


 相部屋だったが、食事もついてくるし、それまでの生活と比べたら天と地だった。

 今はもう嫌だけど。


「へー……王都に知り合いとかいないの?」


 知り合い……


「軍の関係者ならそこそこ知っているが、友人と呼べる感じでもないし、10年以上経っているから微妙だな。親しいのはやはり同じ部隊にいた奴らだろう」


 それこそアーヴィンやローレンスだ。


「そうなんだ……」

「気になるか?」

「うーん……気になるは気になるけど、10年振りに王都に来たんだったら挨拶くらいしないのかなって思っただけ」


 逆に言うと、すごく遠くにいたわけでもないのに10年も戻らないでも良かった程度なんだよな。


「メアリーも言ってただろ。俺、あんまり友達がいないんだ。ただ、ローレンスに会えたらだが、隊長には会おうかなって思っている」


 そもそも隊長が王都にいるのかもわからないが。


「隊長さん……黒影団の隊長さんよね? 女性の方だっけ?」

「ああ。当時25歳で若い人だった」


 今は35歳か……


「そんな若い人でも隊長なのね……」

「暗部だからな。それに魔法使いは実力がものを言う世界だ」


 戦場ではなおさら。


「私も出世できたかな?」


 無理、かな?

 まず訓練に耐えられない。


「アンジェラは軍人には向いてないって」

「まあねー……」


 俺達は今日も騒がしい中央の広場を抜け、東の通りに入る。

 そして、そのまま進んでいくと5分程度でギルド本部の前までやってきた。


「ここだな」

「大きいわねー。何でもウチの町よりも大きいわ」


 ギルドは2階建てだが、広さはかなりある。


「俺はミルオンの町が好きだな」

「私に出会えたしね……」


 赤くなるなら言うなよな……


「そうだな。一応、聞くが、仕事をする気は?」

「今のところない。興味がないこともないけど、今は新婚旅行中」


 婚前だけどな。


「まあ、入ってみるか」


 俺達は中に入る。

 ギルドの中はかなり広く、受付が10もある。

 冒険者の姿も多く、話し合っているパーティーもいるし、依頼票が張ってある掲示板の前で集まっていたりした。


「冒険者も多い……それに魔法使いも多いわ」

「魔法使いは大きい町の方が儲かるからな」


 ミルオンの町はほぼいない。

 純正の魔法使いはアンジェラを含めた数人しかいない程度だ。

 まあ、だからこそ、ギルドが月一出勤のアンジェラでも厚遇しているのだ。


「私も儲かって上級かな?」

「お前は魔道具屋だろ」

「そうね」


 昨日からずっとご機嫌のアンジェラと共に空いている受付に向かった。

 茶髪の若い女性のところだ。


「こんにちは。冒険者の方ですか? それとも依頼受付でしょうか?」


 受付嬢が笑顔で聞いてくる。


「人探しだ。ローレンスというBランク冒険者と王都で会う約束をしている。冒険者ギルドに聞けって言われているんだが、知らないか? 俺はミルオンの町で魔道具屋をやっているエリック・ローウェルという者だ」

「エリック様ですね。少々、お待ちください」


 受付嬢が何かの書類を確認しだした。


「いるかしら?」

「さあ? なあ、昨日、メアリー・ローウェルという冒険者が来なかったか?」


 受付嬢に聞いてみる。


「メアリー……ああ、伝説の……」


 恥っず……


「あ、いや、なんでもないぞ」


 あいつがいつものテンション高めな感じが目に浮かぶようだ。

 そして、他人のふりをするカトリーナとシャーリー。


「『伝説の冒険者になるプリンセスメアリー見参!』って高らかに宣言してギルドに入ってきた人は初めてでしたね」


 そりゃ初めてだろうよ。

 他にいてたまるか。


「すまない……俺の娘だ」

「いや、あの歳でCランクなら伝説も夢ではないんですけどね。ただまあ……うん。元気な子でしたね……」


 人が俺に対して、メアリーを評する時はだいたいオブラートに包んだ『元気な子』だ。

 バカなんだよ。


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