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令和ギャル、転生だかタイムリープだかして伯爵令嬢だか極妻だかになって大正時代を無双する……とかしないとか  作者: 真夜航洋
第五章 因果応報

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第53話 「坤寧宮」

 


 秩父の山奥へ続く山道。

 4WDクルーザーの中で、4人は終始無言だった。


「…なんかさあ。お話でもしようよ。これだとデートって感じがしないし」

「デートじゃないからな」

「またあ。デートじゃなきゃ何?久しぶりに会ったってのにい。イジワル」

「俺の足が万全なら、おめえなんか呼んじゃいねえ。黙って運転しろ、タコ」

「わ。それそれ!言葉責めもバイオレンスう。さすが、小百合ちゃん」


 助手席から警棒が飛ぶ。


「二度と、ちゃん付けすんじゃねえぞ!この税金泥棒が!」

「わあ。たまんない。もっと、ちょうだい」

「黙れと言ったはずだ。チビデブ!」


 また警棒が炸裂する。

 ただスポンジ製なので、運転に支障をきたすことはない。

 獲物と奴隷は生かさず殺さず―鬼束小百合のポリシーである。


(どS刑事とどⅯ官僚……これも、イチャイチャなのか?)


 ヘラヘラ笑う警察官僚を、撫子が後ろから窺う。

 以前話に出た、小百合の見合い相手だ。

 低身長、小太り、薄めの毛量。似合わない縁無しメガネ。

 だがビジュ以上に、言動がキモい。

 

(東大出以外の長所はこれっぽっちも見当たらんけど。小百合ちゃん、やっぱちっちゃい男に縁があるのかな?)


 坂崎のことを思い出す。

 このどMに比べれば、はるかにいい男だった気もする。


(よっちゃん、実は見る目あったのかもね)


 後部座席には撫子と亜紀母子。

 母親は、深夜のバイトで疲れ切って寝ている。


(もう退院したんだから、バイト辞めればいいのに)


 娘は母の寝顔に見入った。




 一週間前。

 洗いざらいを亜紀に話した。

 大正時代の伯爵令嬢に転生したこと、天童組二代目と結婚していたこと、カフェのこと、そこで生きがいを見つけたこと等々。


 母親は笑いもせず、真剣に聞いてくれた。

 そして、ため息をついた。


「…だいたいわかった」

「え?わかったの?何しょうもない夢見てんだよ、じゃないの?」

「鬼束さん。刑事さんの話も聞かせてください」


 小百合もすべてを話した。


「刑事さん。重ね重ね申し訳ありません!」

「え?いや、ですから職務上の…」

「たぶん鬼束さんは、このバカギャルのカルマに巻き込まれたんだと思います」

「「カルマ?」」


「私が口で説明しても理解できないと思います。それに歩けるようになるまで、時間も必要だし…一週間後。刑事さんも一緒にウチの実家について来てもらえませんか?」

「…そこに行けば、転生の謎が解けるんですね?」

「はい……あ、いえ。あいつの気分次第ですが…」

「「…あいつ?」」


 それ以上は話してくれなかった。




 そして今。

 鉄柱と鎖で行く手を阻む車両禁止区域。

 車を停める。


「ここからは歩きになります。それと、男性はここまでです」

「え?」

「ここからは、女しか入れない聖域なんで」


 亜紀の説明に、どМが口をとがらせる。


「あ、ズルい!禁断のオンナの園で、きっと百合っぽい遊びするんでしょ?」

「黙れ、チンカス」

「小百合ちゃん。チンカスは言い過ぎでは?」

「こいつの名前だ。チン野カス男だ」

「途中にあった喫茶店でお茶でも飲んで、三時間後に迎えに来てください。チン野さん」

「カス男くん、よろぴくねえ」

「そんな名前、あるわけないっしょ!僕の名は…」

「行こう」


 名前も知らない、知ろうとも思わない男を放って三人は坂道を登り始めた。

 




 一週間のリハビリも済んで、撫子は歩けるし小百合も杖をつけば動けるようになっていた。

 だが30分の道のりはきつかった。

 大木がなくなって、ようやく視界が開けてくる。


「あそこよ」


 亜紀が指さす先にあるのは、古びた神社のような建物だった。


(ポツンと一軒神社?テレビが取材しそう)


 鳥居があり、看板が掲げられていた。


 「大和坤寧宮」とある。


(坤寧宮は、清朝の紫禁城にあった祭祀を司る場だ。その日本版ってことか?)


 雅と話した後、小百合が推理した「西太后の血」説だ。


 一般的な神社ではなかった。

 まず、参詣する拝殿がない。

 社務所のような建物と本殿だけのようだ。

 そしてその本殿も、屋根と柱だけのオープン会場のようになっている。

 能や狂言を演じる舞台のような造りだ。


「母さん。どこ、いるの?」


 亜紀が大声で叫ぶ。


「母さん?てことは、きみのおばあちゃんか?」

「まあ、だとは思ったけど。宮司さんに嫁いだ大和美和っていうばあばなんだけど、あーしもちっちゃい頃会ったきりだから」


 口ぶりからすると、この神社のこともこれから起きることも薄々気づいているようだ。


「おう。ここだ、ここだ。さっさと上がって来い」


 今まで本殿の中央に寝そべっていた老女が、上半身を起こして手を振っている。


「ああ、くそ。あのババア、また朝から飲んでやがる」


 亜紀がしかめ面で本殿に向かう。

 見ると、巫女服を着た老女の傍らには一升瓶が転がっている。


「ふうん。なかなかヤンチャなおばあちゃんのようだな」

「ママちんは『ヤクザ巫女』って呼んでるけどね」

「ほう。なら、俺と相性がよさそうだな」

「警棒で殴んないでよ」

「俺は女性には優しい、って知ってるだろ?」

「そんな小百合ちゃんでも、殴りたくなるひとらしいよ」




つづく

 

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