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令和ギャル、転生だかタイムリープだかして伯爵令嬢だか極妻だかになって大正時代を無双する……とかしないとか  作者: 真夜航洋
第四章 諸行無常

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第48話 「阻止、反撃」



(祝言は3か月前。急に甘いものが好きになった。吐き気。これは…)


 トイレの前で、よしこは推測する。


「うげえ。ごめんね。なんか久しぶりに甘いものドカ食いしたら…」

「凛音さん。おめでとう!」


 出てくるなり、手を握られた。


「ちょ、よっちゃん。まだ手洗ってないんだけ…おめでとう?」

「ご懐妊なのでしょう?」

「ご、かい、に、ん?」

「おめでとう!男の子かしら。女の子かしら。いずれにしろ凛音さんと星児さんのお子さんですもの、玉のように美しい赤ちゃんになりますわよ」

「……ええ?ええええ?」


(いや。あーし前世でもこっちでも、ヤッてないんですけどお!)





 品川湊の決戦。


 一台のフォード車のフロント部分が、櫓の柱にぶつかりかけている。

 と。


 ブスン!

 ズドン!


 間の抜けた破裂音を響かせながら、車が横転する。

 フロントタイヤがバーストしたのだ。


「へ?」


 あきらめかけた村橋が、口をあんぐり開ける。


「た、助かった?」


 ブスン!

 ズドン!

 ズダダン!


 同じ現象があちこちで起きていた。


「お、おい。参謀。ど、どうなってんだ?」

「最前線の兵隊は、ただ逃げたんじゃねえんだよ。こいつをばら撒きながら両翼に陣を組み替えたんだ」


 そう言って、星児はある物を櫓の上に放り投げた。

 反射的に村橋が、それを手で受け取る。


「痛!」

 

 取りこぼしたそれは…。


「蒔き菱?」


 忍者が地面にばら撒いて、追撃を阻止する小さな金属の棘。


「この時代のタイヤは厚みが足りねえ。ゴム自体も柔らけえから、こんなもんでも簡単にバーストしちまうんだよ」


(この時代?星児は、いったいいつと較べてるんだ?)


 増田がいぶかる。

 いずれにしろ、地面に散らばった数百個の蒔き菱が車の進撃を阻止した。


 ここまでは計算通り。


「さあ。次はチャカの攻撃だ。こいつも阻止するぞ!」


そう言って星児が櫓から飛び降りる。

 横転した車の中から、何人かが這い出てきた。


「くっそお。舐めた真似しやがって」


 多少の打撲はあるが、大した怪我ではない。

 命じられた任務を遂行するために、懐にしまっってあった拳銃を取り出す。

 狙いは、櫓の上の総大将。


「あの首さえ獲っちまえば、こっちのもんだ」


「ひ。ひい!」


 一難去ってまた一難。

 村橋が小沢の背後に隠れる。


「あ。てめえ!」

「国会議員は国の代表なんだ。こんなとこで死ぬわけにはいかんのだ。あんたはどうせ社会の厄介者なんだから、私の盾になれ!」


 醜い争い。

 だが小沢も村橋を押しのけたいが、それができない。

 さっきの車の突撃を目の当たりにして、腰が抜けてしまったからだ。


「おらあ。これで、終いだあ!」 


 引き金を絞る。

 カチ。

 カチ。

 カチカチ。


「ち。どうなってやがる?」


 銃口を覗く。

 と…。


 パーン!


「あ。あああ」


 暴発だ。

 銃弾は男の眉間を撃ち抜いた。

 もんどりうって男が倒れる。


「ひ。ひ。ひいい!」


 村橋と小沢は、助かった喜びより次の恐怖が先に立つ。

 別の者が数人、こちらに拳銃を向けているからだ。

 だが。


 何度引き金を引いても弾が出ない。

 構える前から暴発する。

 あるいは引き金すら引くことができない。


 突風が吹いた。


「うわ!」


 海風が砂塵を巻き上げる。


「チャカを構えてる連中。そいつはここじゃ使えねえ。もう、諦めろ!」


 星児の言葉に耳を傾ける。


「いいか。南部式乙拳銃は、外国の銃を参考にして、部品から構造から精密に作り上げた芸術的な拳銃だ」

「…」

「だが、精巧に作り過ぎた。その拳銃は細工が細かすぎて、衝撃に弱い。おめえらの車はここに来るまでのでこぼこ道と横転したことで強い衝撃を受けた。複座バネがいかれちまったんだ。それに拳銃を外にさらしたことで、銃身内部が砂利で目詰まりを起こしている。無理に引き金を引くと…暴発する」


 さきほど銃に眉間を撃たれた男の遺体を、星児が目で示す。


「陸軍じゃなあ、その銃のことを『自殺銃』って呼んでんだよ!」

「ひ!」


 何人かが拳銃を放り投げた。

 自殺銃だから、陸軍はこの拳銃を携帯したがらない。

 アメリカ製のコルトかリボルバーを携帯している。

 陸軍が桜田たちに南部式を渡したのは、不良品だったからなのだ。


「ダンビラ隊。もうこいつらは怖くねえ。切り刻め!」


 後方に待機していた、日本刀を構えた者たちがトキを上げる。


「おお!」

「ま、待ってくれ!」


 柏木が叫ぶ。


「俺は、民同会先鋒部隊隊長を任されてる柏木だ。降参する。ここにいる全員、捕虜にしてくれていい」

「ほう?」

「正直に言う。俺たちは、あの桜田って野郎に駒みてえに動かされるのはごめんなんだ。こんな卑怯な真似、はなからやりたくなかったんだ。おい、もういい。みんな。武器を捨てて、両手を上げろ」


 全員が拳銃や短刀を放り投げて、降参を示すもろ手を挙げた。


「おい。こいつらを拘束して、後ろに下げとけ」


 ダンビラ隊が刀を戻して、捕虜たちを後ろ手に縛っていく。


「さて。われわれ愛国会は、これより反撃に転じる。増っさん、弓隊に伝達だ。太鼓、鳴らせ!」





(し、失敗した。車も、拳銃使った攻撃も)


 桜田は呆然としていた。

 もう秘密兵器はない。

 ここからは力と力のぶつかり合い。

 相手は名うての暴力組織、こちらは桜田組以外ほぼ喧嘩の素人。

 後方部隊の幹部が訊いてくる。


「桜田さん。次はどうしますか?」

「次?」

「数ではこちらの方が圧倒的に有利です。一斉に突撃をかけてしまえばいいんじゃないですか?」

「あ。ああ、そうだな」

「どの部隊を出しますか?」


 桜田は民同会の兵を先鋒隊、本隊、親衛隊に分けていた。


「先鋒がつぶれたんだ。親衛隊を残して、本隊を総出撃させる」

「わかりました。おおい。本隊の連中、よく聞け!これより……」


 ドン、ドンドドドン。

 ドン、ドンドドドン。


 敵側から太鼓の音が聴こえる。

 さっきとは違うリズム。

 

 ヒュン。

 ヒュン、ヒュン。

 今度は、風を切る音。


「…なんだ?何の音だ?」


 ヒュ、ドス!


 桜田の足元に一本の矢が刺さった。

 その矢は、煙を放っている。

 矢先には棒状のものがくくりつけてある。

 そこかしこに、同じ矢が次々と刺さっていく。

 よく見れば、それはどうやら…。


「だ、ダイナマイトだああ!」




 つづく



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