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令和ギャル、転生だかタイムリープだかして伯爵令嬢だか極妻だかになって大正時代を無双する……とかしないとか  作者: 真夜航洋
第四章 諸行無常

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第45話 「果たし状」



「桜田が大川襲撃に拳銃を持ち出したのは、示威行動だ」

「しいこーどー?」

「こっちは銃を用意してるんだぞ、っていう脅しだ。だが俺は、やつらは他にも隠し玉を持っていると思う」

「まだ何かあんのか?」

「まあ。ある程度の見当はつくがな」


 拳銃だけでも厄介なのにさらに秘密兵器があるとしたら、大吉一家単独の喧嘩は分が悪いのかもしれない。


 一同が考え込む。

 増田がまた口を開く。


「そこで俺からの提案だ。今度の喧嘩、この天童組二代目を軍師に据えてみちゃどうだい?」

「軍師?参謀ってことですか?」

「ああ。天童組が上原の描いた絵を暴いてみせたことや名古屋朔月会を東京から叩き出したことは、おめえらも聞いてんだろ?こいつは大学出だけあって、知識もあるし頭も回る、ヤクザらしからぬ極道なんだ」


(ん?天童星児って大学出てたのか?)


 星児の中の小百合が驚く。


(プロファイリング・データに追加しておくか)


 部外者どころか、敵対していた組の長の言いなりになることには抵抗がある。

 幹部の一人が妥協案を提示する。


「まず、天童が描く絵を見せてもらおうか。その絵に納得がいくんなら、軍師なり参謀なりに据えていいんじゃねえか?」


 大方の幹部が頷き、後藤が星児に目で促す。


「そうだな。第一に、今回の吉原の一件みてえな局地戦は避けたい。頭数で負けてるこっち側がジリ貧になるからな。できりゃあ、関ヶ原の戦いみてえな一大野戦に持ち込みたいな」

「野戦?総力戦ってことか?」

「その際、戦場をどこにするかがカギになる」

「ほう。なぜだ?」

「拳銃と、おそらくまだある相手の武器を封じるためだ」

「おい。もったいつけんな。おめえ、もう決めてあるんだろ?早く言え」

「……品川湊、だ」


 令和で言う、品川埠頭のことだ。

 戦後コンクリートで固められコンテナ埠頭になるのだが、この時点では埋め立てが始まったばかりの海に面した広大な空き地である。


「そこなら地の利をこっちが握れる。だが、相手は気づきもしねえはずだ」




 今日のよしこは、昼のお見合い稽古から閉店まで店にいた。

 ときどきコーヒーを淹れて手伝ってくれている。


「凛音さん。少しよろしいかしら」


 どうやら、凛音の仕事が終わるのを待っていたようだ。


「今度の日曜、わたくしのおうちにいらしてくださらない?」

「ん?それ言うために待ってたの?そんなん言う機会いくらでもあったでしょうに」

「いいえ。華族たるもの、お招きする方の様子をうかがってからお誘いするのが礼儀というものですわ」


 令和なら寝転んでポテチ食べながら「今度ウチ来て」と打てば済む話だが、時代なのか華族だからなのか面倒なことをするものだ。

 だがそこまでされたら無下に断ることはできないから、本来人間関係というのはこうやって築くべきなのかもしれない、とも思う。


「行くのはいいけど、何すんの?」

「アフタヌーンティーを頂きながら、凛音さんの経験談をご教示賜りたいのですわ」

(ああ。ヌン活かあ。そんでもって恋バナしよ、って話ね)

「だってあなたはヤクザさんとお付き合いなさって、結婚にまで辿り着かれた先駆者ですもの」

「え?よっちゃん、あのちっちゃいひとに本気なの?」

「もう。坂崎さまはそんなにちっちゃくありませんわよ!星児さんと並ぶからそう見えるだけで、わたくしや凛音さんよりはお背は高くてよ!ぷんぷん」

(あ、ムキになってる。こりゃ、ガチのやつだ)





 告  民同会


 先だっての吉原における我が会所属の大吉一家総長・大川辰吉に対する襲撃、及び貴会の振る舞いに遺憾の意を表する。


 この不義理、任侠道を歩む者として看過するわけにはいかない。


 ついては、八月六日正午、品川湊にて、この一件の決着をつけたく、ここに果たし状を叩きつける。


 応じぬ場合には、貴会の卑怯極まりない行為とその臆病ぶりを世間に公表する所存である。


 愛国会 副代表・後藤雄之助




 星児は上記の文面の果たし状を持って、民同会本部に赴いた。

 あえてスカイキッドに乗って行く。

 応対に当たった民同会の幹部・柏木は、内容を見て顔を青くした。


「ご、ご苦労様でございます。た、確かに承りました。この果たし状は必ずウチの桜田に渡します」

「ああ。頼んだぜ」

「あ、あのう。返事の方はどのようにすれば?」

「ああ?返事もくそもあるか。こっちは喧嘩するつってんだ。てめえらに拒否権なんざねえ」

「いや。しかし民同会の幹部会に諮らないと…」

「そこに書いてある時間と場所で俺たちは待っている。おめえらが来る来ないは自由だが、来なけりゃてめえらのメンツが泡と消える。民同会ってのはデモクラシーごっこの集まりで、口先だけのチンピラ団体だ、ってな」

「わ、わかりました。桜田に伝えておきます」


 馬に乗って去って行く口上人を、柏木はため息で見送る。


(桜田会長のこの間の言動で、すでに世間での民同会への風当たりは強い。行くも地獄、引くも地獄だな)


 大正12年8月6日、日曜日。

 愛国会と民同会の一大決戦は、奇しくも凛音とよしこがヌン活を行う同じ日と決まった。




つづく




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