ゲーセン=ギャンブル
「はぁ……それで、聞きたいことが山ほどあるんですが……」
俺がそう、ゲーセンのパチンコを打っている冬先輩に語りかけた。だが冬先輩は聞いていない。パチンコの台がぎゅんぎゅん音を建てている。そして冬先輩は瞳孔をカッと見開き、お祈りのポーズを取っている。
「あの……」
冬先輩はまるで聞こえていないようだ。いや、音がうるさすぎて聞こえていないのだろう。パチンコの数字が2画で書けるのになって、両端に浮いている。
「えーと……」
「うるさい! 黙って!」
俺は冬先輩にビシッと指を刺された。俺の声より、パチンコが。パチンコより、冬先輩の声が何倍もうるさかった。それなのに周りは気にしていない様子だった。みんな、パチンコに夢中だ。
「頼む!」
冬先輩が再びパチンコに向き合い、お祈りのポーズ。俺の存在など、最初からなかったようだ。ここだけ、周りの温度より高い気がする。
「ぁ゙ー……」
「冬先輩……」
俺と冬先輩はフードコートに居た。その理由は単純で、冬先輩が完全燃焼してしまったからだ。あの時、パチンコの数字は揃わず、結局何事もなかった。そして、冬先輩は、負けた。
「どぅ゙じでだょ゙ぅ゙……」
「それで……いくら負けたんですか」
冬先輩は机に突っ伏して、顔すらも見えない。だけど、見える背中から雰囲気は感じる。俺は冬先輩と対面する形で座っている。
「3万」
俺の耳にはそう聞こえた。ぐぐもった声があっさりと大金を口にする。まぁ予想は付いていた。だって、ボクシング漫画なら白くなっていそうだからだ。
「まぁまぁ……」
その時、一つの機械がブブッと鳴る。どうやら、注文した料理ができたみたいだ。
「ほーら……行きますよ……。まったく、後輩に奢らす先輩が何処にいるんですか……」
「ここにいるよ!」
「ほんと……誰ですか」
道草を食いながら、俺と冬先輩は取りに行った。その足取りはパチンコにいた時よりは全然軽い。もはやこのためにここに来た、という感じだ。
「いただき!」
冬先輩はガツガツと行った感じで食べ進めている。「喉詰まらせますよ」と水を差し出しても、「大丈夫! 大丈夫!」と言って全く言うことを聞いてくれない。困ったものだ。
「それ、美味しいですか。うどん」
「最高だね! 特に厚揚げさん!」
冬先輩が頼んだのはきつねうどんだった。なんでも「店によって意外と味違うから、毎日でも飽きない!」らしい。いまだガツガツと食べ進めている冬先輩を見ると、つい口を滑らせてしまった。
「ほんと、飽きないね」




